第006話 貞操の危機が危ない

「小娘!適当な事を申すでないわ!」


「そうですわ、そうですわ。何の根拠があってシロウが『男色』だって言いますの!?」


エリスとリリスは、両手を腰にあて前かがみでサーシャの眼前で凄みのある威嚇をした。

二人の様子を背後から眺めれば、さぞ素晴らしい景色が広がっていたであろうが、残念なことにここは女風呂であり、男は居ない。

そんな事はともかく、流石のサーシャも二人の圧に屈服せざるを得なかった。


「いや、私は男色とは言ってないけど……そんな事より、座った方がいいよ。色々とヤバいから」


サーシャの言葉に、二人は自分達が『バックからどんと来い』的な格好になっていることに気付き、背後に誰かいないか確認した後、静かに湯舟に浸かって座った。


「で…その『女に興味がない』という根拠は何じゃ」


「そうですわ。理由を言いなさい」


サーシャはこほんと咳ばらいをした後、口を開いた。


「まず第一に、このオフィーリアさんの、この超エロい身体を見ても何の反応もしない」

「普通なら『ぐへへ、少しは触らせろや』とか言うもんでしょ」


『確かに』


二人はオフィーリアの身体をまじまじと眺める。


「もう、ボク上がっても良いかな……」


そんな彼女のつぶやきをサーシャはスルーして続ける。


「第二に、貧しい体とは言え、二人のぴっちぴちのエロ衣装を前後左右上下のあらゆる角度から目に入って来てるのに何の反応もしない」


『確かに………って、誰が貧しい体じゃ(ですって)!!!』


二人のツッコミをスルーしてサーシャは続ける。


「最後に、昨日、私が風呂上がりにシロウさんの前でバスタオルをはだけさせたのに何の反応もしなかった」


『なるほど………って、ちょっと待てい(ちなさい)!!!』


「何よ」


「何よ、じゃないわい。なんで、お主がバスタオル姿でシロウの前におったんじゃ」


「いや、だって。シロウさんが服を洗濯して乾かしてたから、その間バスタオル姿でいただけだけど」


『あー……なるほどー……』


二人も経験があるのか、あっさりと納得してしまう。


「というわけで、シロウさんは間違いなく女の人に興味がありません」


そして、女風呂は少しばかりの沈黙に包まれた後、エリスがそれを破った。


「そうじゃとするとだな。小僧マコトのやつシロウに食われるかもの」


「それはそれで、見たい気もしますわね。伯母上」


『えっ!?』


エリスは冗談のつもりで言っただけであったが、何と釣れたのは自身の姪だけだったのであった。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。


ところ変わって、男風呂。


当然の如く、男女の風呂は繋がっており、彼女達の声は丸聞こえであった。


「すみません。サーシャが変なことを言って………」


苦笑いするマコト。


「いやぁ、結構よく間違われるんだよ、俺。なんでかなぁ」

「それにしても助かるよ。信じてくれて」


「いえいえ。路頭に迷っていたところを拾って頂いて感謝しておりますし、僕はシロウさんの事を信じていますので」


「おっ!?嬉しいこと言ってくれるじゃないの………って!あれ!?」

「どうしていきなり、そんなに距離を取るんだい!?ねぇ!マコト君!?」


※この後、程なく誤解は完全に解かれました。

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