第003話 使えない

次の日、パーティ一行は冒険者になりたてのマコトとサーシャの訓練も兼ねて、近隣の草原へと来ていた。


「ぷよぷより~ん、ぷよぷより~ん」


そんな声を発してはいないが、発しそうなほどのゆるキャラゼリー状モンスター『プヨリン』がそこら中にたむろしている。

プヨリンは自分達から攻撃してくることは無く、相手から攻撃があった時のみ反撃するため、初心者の冒険者は必ずプヨリンから始まるというくらいポピュラーなモンスターである。


「てぇーい、やーっ!!!」


銀髪ポニーテールの女戦士アマゾネス、サーシャのロングソードがプヨリンの頭上に落ちた。

しかし、剣の入りが悪く、プヨリンの柔らかい体によって弾かれる。


「ぷぅーーーーよぉーーーーっ!!!!」


攻撃されたプヨリンは当然の如く激高し、サーシャに体当たりをした。

サーシャは避けようとしたが失敗し、腕にダメージを受ける。


「あいたっ!…こんのぉおおおっ!!!」


負けず嫌いのサーシャは、すぐさまプヨリンに反撃。


ズシャッ。


今度は上手く剣が入り、プヨリンは真っ二つになった。


「ぷよぷよぉーーーん………」


そんな断末魔と共にプヨリンは消え去り、そこにはプヨリンの落とした琥珀のように綺麗な宝石が残された。


「ふぅ…やった!」

「ねぇ、マコト見てた?」


サーシャは、マコトの方へ振り向く。


「流石、サーシャ。上手い上手い」


マコトは、パチパチパチと手を叩きながらサーシャを褒めたたえた。


「ふふーん。まぁ、こんなもんよ」


そう言って、サーシャは得意顔ドヤがおを決めた。


「あっ!サーシャ怪我してるよ!」


先程のプヨリンの体当たりが効いたのだろう、サーシャの腕からは血が流れていた。


「あ、ホントだ」

「ねぇ、エリスさんかリリスさん。治療してー」


「無理じゃ」


「無理ですわ」


そんなサーシャの頼みに対し、エリスとリリスは速攻で無慈悲な返答をしたのだった。


「ちょっ!?いくら私の事が嫌いだからって、それは無いでしょ!」


そう非難するサーシャに対し、思わぬ答えが返って来た。


「いや、だから回復は出来ないんじゃ」


「伯母上の言われるとおりですわ。わたくし達、回復の呪文を『覚えていません』もの」


そう言って二人は肩をすくませた。


「はぁ!?冗談でしょ?」

「ねぇ、シロウさ~ん、聞いてました?二人エリスとリリスがあんなこと言って意地悪するんですよぉ」


サーシャがシロウに駆け寄って泣きを入れる。


「あ……いや…本当にエリスとリリスは回復が使えないんだよ」


シロウの思わぬ回答に、サーシャは目を丸くした後、心の底から驚きの声を上げたのだった。

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