ごちゃまぜ☆ぱぁてぃ

福田牛涎

第001話 未完成パーティ

ギルドに併設されている食堂の一角。

二人のエルフの女僧侶プリーステスの前で、ボサボサ髪の性格属性が中立である盗賊シーフの男が土下座を敢行していた。


「頼むっ!どうか、パーティに戦士を入れさせて下さいっ!」


「嫌じゃ」


「伯母上の言われるとおり、わたくしも嫌ですわ」


無情にも、男の懇願は速攻で却下されてしまう。

いつもであれば、男も速攻で諦めてしまうのであるが、今回は違った。

男はすぐさま立ち上がると、身振り手振り心底困った表情を浮かべながら言った。


「いや、本当に頼むよ。エリス、リリス」

「今週、俺が何回『死んだ』か分かってるだろ?」


「何回じゃったっけ?リリス」


「3回ですわ。伯母上」


何てことも無い、みたいに淡々と二人は会話を交わした。


「なら、いつも通りではないか、シロウ」


エリスと呼ばれた、子供のように小柄ではあるが顔立ちが非常に整い、『腰』まで伸びた金色の髪をしたエルフの女性が、シロウの目の前で椅子にちょこんと座り腕を組みながら言った。なお、足は地に付いていない。

彼女は、その小さな体に密着した側面にスリットのある『漆黒』に染め上げた絹の衣装を身に纏い、胸にある二つの突起物がほんの僅かに感じ取ることが出来る、その手の趣味の人にはたまらない一品であった。

だが、シロウにはそのような趣味は無いため、意味は無いのだが。


「そうですわ。それに………」

「どうせ貴方、あの小娘幼なじみをパーティに入れるつもりなんでしょ?」


今度は、リリスと呼ばれた、細身ではあるが女性としてはそこそこの長身で、顔立ちも伯母であるエリス同様に非常に整っており、『肩』まで伸びた金色の髪をしたエルフの女性は、苦虫を噛むようにそう言った。

伯母のエリスとは違い『純白』の衣装を身に纏ったエルフの女性は、イラついているのか、シロウの目の前で何度も足を組み替えていた。

だが、残念なことにシロウは頭を下げているため、リリスのお宝映像をその目に焼き付けることは無かった。


直後、シロウは顔を上げて反論する。


「いや、だって、仕方ないだろ?」

「フリーの戦士って、この町じゃ、あいつ俺の幼なじみしか居ないんだから」

「なぁ、頼むよ。ホント」


シロウは、藁にもすがる思いで拝み手をする。


「嫌じゃ」


「嫌ですわ」


やはり、答えは同じであった。


「そうか………なら仕方がない」


シロウは、ゆらりと起き上がり二人の顔を交互に見たあと口を開いた。


「それでは明日から、『馬小屋』で寝泊まりすることになります」


「なっ!……何じゃと!?」


「なっ!……何ですって!?」


シロウの言葉に、二人は動揺を隠せず思わず立ち上がる。


「どういう事じゃシロウ。説明せい!」


「そうですわ。どういう事ですの!?」


「だって、万が一のためにずっと貯めていた蘇生費用が底をついてしまったからな」

「もう、宿代を蘇生費用に回すほかないんだよ」


その言葉に、エリスとリリスはシロウに背を向けてしゃがみこんだ。


「どうする、リリスよ。わしは馬小屋は嫌じゃ」


「わたくしもですわ、伯母上。あのような悪臭のするところで寝ようものなら、体に臭いが移ってしまいますもの」


「じゃのぅ。エルフの『王族』として、それだけはプライドが許さんわい」


「ですわね」


「ならば……仕方ないか………」


「やむを得ませんわね………」


ひそひそ話を終えた二人は立ち上がる。


「ま…まぁ、仕方ないゆえ、あの小娘をパーティに入れても良いぞ」


「そ…そうですわね。仕方ありませんわ」


二人は顔を引きつらせながら言う。

そして、その言葉が飛び出した瞬間、シロウはほくそ笑んだ。


『計画どおり』


しかし、二人はシロウから目を逸らしていた為、気付くことは無かったのであった。




‥‥‥そして、次の日。




「なんじゃ、これは!?」


「そうよ、シロウ。これはどういう事ですの!?」


エリスとリリスの声が、食堂中に響き渡ったのであった。

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