第11話 魔法学園の教師
ゼロはカラスの創った魔法学園に着いた途端に面倒事に巻き込まれてしまった。
おまけに王の叔父の公爵にまで目を付けられ逃げるに逃げられなくなってしまった。
「公爵の持つ魔導士の方が王家の宮廷魔導士よりも多いと言ったが、カラスならどうだ。そんな魔導士位弾き飛ばせるだろう」
「普段ならそれも可能でございましょうが、今のカラス様では」
「カラスがどうかしたのか」
「はい、どうやら呪い魔法を掛けられたようで普段の力がお出しになれないのです」
「呪いだって。あいつがか」
「はい、ですのでもしゼロ様がおいでになったら宜しく頼むと伝言を受け承っております」
「何だそれは。いい加減な奴だな、そんな事位自分でなんとかしろよ」
「カラス様も出来る限りの手を尽くされたのですが効果がなかったとの事でございました」
「どんな呪いを受けたんだ、あいつは。でカラスは今何処にいる」
「はい、魔界門の部屋に籠っておられます。ゼロ様ならご存じだと言われまして」
「あそこか」
「我々もその原因を色々探してはおるのですが今の所全く手がかりがございません。それでもう一つお願いがあるのですが」
「なんだ、その願いと言うのは」
「ご覧になられた様に今のこの学園は少々腐っております。貴族が幅を利かせて一般平民はここの門を潜る事すら出来ません。そして異種族に対しても偏見を持ち魔法のレベルはご覧になった通りでございます。それを何とか改善してはいただけないでしょうか」
「それはあんたの仕事だろう」
「はい、ですが多勢に無勢と申しますか、上級教官達に押されております」
「何だそれは頼りないな。それでも副理事長かよ」
「申し訳ございません。私は事務方が長かったので魔法の方はちょっと」
「おいおい、大丈夫か」
「申し訳ありません」
「しかし俺が手を出したらこの学園が壊れるかも知れんぞ」
「はい、心得ております。こちらに理事長からゼロ様への全権委任の任命書をいただいております」
「おいおい、まじかよ」
「どうします。お師匠様」
「ねぇどうするのゼロさん」
「しゃーないな、一つこの学園を潰してやるか」
翌日からゼロ達は特別臨時教師としてこの学園で指導をする事になった。特にゼロは特級教師と言う肩書で。
この日全教官が集められ、新任の教師の紹介があった。普通は教官と言う名がつくのだがゼロ達3人だけは教師と言う肩書になっていた。
「えー、皆さん今日から我が学園で教鞭を取っていただく事になった教師の方々を紹介いたします。まず左からゼロ教師、シメ教師、ハンナ教師の皆さんです。宜しくお願いいたします。それからゼロ教師さんは特級教師と言う事で皆様方の上についていただきますのでご了承ください」
「ちょっと待ってくださいよ、副院長。そんな勝手な真似は困りますな。我々教官会議にもかけないで。承服出来かねますな」
「いや、ですがこれは学園長直々の採用でして」
「では学園長から直に聞かせていただこうではありませんか」
「一々うるせーなお前らは。俺は学園長から全権委任の認可状をもらってここに来てるんだ。ごちゃごちゃ言うと首にするぞ」
「何だと、その態度は何だ、貴族でもないくせに」
「魔法は爵位でやるもんじゃねーんだよ。文句があるなら実力で言え」
「いいだろうい。では表に出ろ」
「その必要もねーな」
そう言ってゼロは全員に威圧を掛けた。ゼロにしてみればそよ風程度のものだったが、全教官は息も絶え絶えになって今にも死にそうになっていた。
「どうした、この程度の威圧も返せないのか。それでもお前ら魔法教官か。もう一度一から修行をやり直すんだな。文句のある奴はいつもで挑戦してこい。相手になってやる。ただし命の保証はないぞ。俺達の挨拶はこれだけだ。解散」
それだけ言い残してゼロ達3人は出て行った。後に残った教官達は恐怖に震えていた。逆らえば殺されると。
ゼロとハンナが魔法担当でシメは騎士担当だ。しかし魔法の使えないゼロが魔法担当とはおかしな話だがゼロはこれで行く事にした。
普通の教師とは違い学園長直々の登用と言う事で流石の古株達も迂闊に手を出す事が出来なかった。ましてあの力を見せつけられたら尚更だった。
しかも先日の二級教官との魔法対決の噂が広まり、これまたこの獣人教師にも迂闊に手が出せなくなっていた。
それならば後に残った女剣士だとばかりに、騎士候補生達に言い含めて模擬戦で痛めつけてしまえと指示を出した。
しかも一組20人、三組60人を順次ぶつけて潰そうと言う計画だった。
それに対してシメが取った手段は一人づつは面倒だから一組20人一度に掛かってきなさいと言うものだった。
冗談にも程がある。そんなに死にたいなら殺してやろうと20人で一斉に掛かったが数分で全員地に叩き伏せられていた。
そして震脚で全員を試合場の外に弾き飛ばし、次の20人を呼び入れて同じように叩き伏せた。
じゃー最後の20人と言われた時は皆足が震えて誰一人試合場に上がって行く者はいなかった。後に鬼の女教師と呼ばれていた。
これはゼロの計画だった。こんな腐った学園は普通の方法じゃ100年掛かる。こう言う時は誰一人文句の言えない実力行使が一番だと。流石は「殲滅のヒューマン」だ。
普段偉そうにしていた教官も貴族もゼロ達3人には一言も言い返せなかった。例え全員で掛かっても数分で皆殺しになる事は確実だったからだ。
そこで彼らは外部の闇組織に3人の暗殺を依頼した。
彼等も商売だ。果敢に襲撃したが全員返り討ちになってしまった。
それではこれを過剰防衛として殺人罪で逮捕しろと衛兵に圧力を掛けたが、ゼロの持つ王家の王君代理紋章の前にはひれ伏すしかなかった。
彼等はもう二度とゼロ達には関わらないと誓っていた。権威も力も全てゼロ達の方が上だった。教官達もバックの貴族達も何も出来なかった。
そしてゼロ達は甘やかされて自尊心だけが高い貴族のガキ達の鼻を徹底的に挫いて行った。
元々実力などないに等しいのだ。今更お前らの魔法は最低の魔法だと言われても言い返す事も出来なかった。
文句を言ったら死ぬまで叩きのめされ特訓を言い渡された。これで退学して行く者達も多くいた。
ゼロはそれで良いと思っていた。本気で学ぶ気のない奴に教えても時間の無駄だと思っていた。
弟の成績を貶された王都の赤の騎士団の副団長の兄がゼロに文句を言いにやって来た。
力がないから力がないと言っただけだ。貴族の爵位で魔力が上がる訳がないだろう。外部者が教育に文句を付けるのはやめてもらおうとゼロが言ったら、それは貴族に対する侮辱だ、決闘を申し込むと言い出した。
こいつもの権威主義か話にならん。なら決闘を受けてやるかと試合場に上がった。
この男、ワグナール伯爵家の長男はアッペルと言う。どうやら魔法付与の剣を使い。この剣はワグナール伯爵家の宝剣と言われているらしい。
対峙して分かったが、アッペル自身にはそれ程の魔力はなかった。その大部分は魔剣の力だ。それを自分の力だと勘違いしている様だ。
試合開始と共に踏み込んで切り付けて来たが剣筋はまだ荒い。それにまだ剣に振り回されているようだ。要するにまだ自分の剣になっていないと言う事だ。
この程度の剣技などわざわざ剣を出すまでもないと、ゼロは日本の鉄扇で対応していた。
アッペルは益々憤っていた今迄誰にも負けた事にない自分の剣があんな短い鉄棒で防がれるなどあってはならないと。
そしてアッペルには魔剣に魔力を流して電撃を発生させた。これこそがワグナール伯爵家の宝剣、電撃剣だった。
それを見たゼロは面倒だとばかりに手に気を集めて袈裟懸けに切り付けて来た剣を握り止めてしまった。
普通ならこんな事をしたら感電死か黒焦げになっていたはずだ。なのにこの男は平然と立っていた。
「何故だ。何故この電撃剣受け止める事が出来るのだ。そんな事はあり得ないだろう」
「お前の剣技は下らん剣技だな。こんなクズ剣で俺を切る事は出来ないぞ」
そう言ってゼロはこの剣をへし折ってしまった。そしてその後はタコ殴りだった。
「ジョルフ、お前のクソ兄貴を連れて帰れ。そして二度と俺に前に顔を出すなと言っておけ」
その日はそれで済んだが翌日今度はワグナール伯爵その人が兵士30人を引き連れて、貴族に対する無礼は許されん。不敬罪だ。死罪にしてくれると学園に乗り込んで来た。
今度こそこれでこの男も終わりだと教官達は内心喜んでいた。
「面白い事を言う。伯爵家に対する不敬罪と王家に対する不敬罪とではどちらが重いと思う」
「馬鹿か貴様は、そんなもの王家に決まっておるだろう」
「ならお前は王家に対する不敬罪を行った事になるが、それを承知してるか」
「何を馬鹿な事を言っている。何処に王家がいる」
「俺が王家の代理だ。この紋章まさか知らんとは言わないよな」
ゼロは王家の王君代理紋章を見せた。
「これに歯向かう事は不敬罪では済まないぞ。反逆罪だ。それでもお前はこの茶番劇を続けるつもりか」
「そ、それは王家の紋章、どうしてそれをお前が、いや、貴方様が」
「俺は一度王家を悪魔から救っているのでな。その時に王様から貰ったものだ。お前は王家に刃を向ける気か」
「いえ、滅相もございません」
「なら消えろ。二度目はないぞ」
そしてゼロが立ち並ぶ教官達を見まわしたら全員が力なく膝をついた。もう勝てないと悟ったのだろう。
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