ep.13-3 ルトとの再会
ずっと泣いていたすずねが少しずつ泣き止む。
その間、大将はずっと黙って抱きしめつつ頭を撫でていた。
落ち着いたのを確認した大将は抱きしめるのをやめて、すずねに尋ねる。
「すずねちゃん、落ち着いた?」
「……うん。ありがとう」
すずねは呟くような声で大将の質問に答える。
三本の尻尾は各々に意識があるかのように揺れていた。
その尻尾を見た大将は尋ねる。
「尻尾、3本になっちゃったね」
「うん……でも、まえとおなじでだいじょうぶ」
「そうか。ならいいや」
大将は立ち上がり部屋の電気をつける。
すずねは久々の光なのか、まぶしそうに手を目の前に出す。
その顔を見た大将はすこし心配そうに、尋ねる。
「すずねちゃん……もしかしてご飯全く食べてない?」
「……うん」
「なら、一旦ご飯にしようか」
そう言うと、二人は二階に降りた。
そして色々なものが散らばった店の中を見て、大将とすずねは苦笑する。
「たいしょう……いつもみせはきれいにって、いってたのに」
「そうだね。先に少し片づけようか……もう少しだけお腹、我慢できる?」
「……うん」
ぐぅ~~
すずねが返事をした瞬間、すずねのお腹の音が店の中に響く。
真っ赤な顔をしたすずねに大将は少し笑いながら、先に厨房に行く。
「とりあえず、ご飯だけは炊くから少しだけそこで座って待ってて
炊いている間に俺が片づけるから」
「ううん、ごはんできるまでかたづける」
すずねは大将の言葉に首を横に振って、倒れた椅子などから片づけ始める。
大将はにこりとし、すずねの行動に何も言わずにお米を砥ぎ土鍋に入れてご飯を炊き始めた。
ご飯を炊いている間、大将は散乱している物を片づけ、その後は土鍋の様子を見ていた。
すずねは椅子、机の並びなどそろえ、そしていつも通り拭き掃除を始めた。
そしてある程度綺麗になった時、店の引き戸がガラガラと開く。
大将は片づけをしつつ、開く方を見て驚いた。
「あっ……ルトさん!!!!!」
「!!!!」
その大将の声にすずねは顔を真っ青にしてカウンターの大将の後ろまで行き隠れた。
そしてギュッと大将の白の割烹着を握りつつも、覗くようにしてルトをみる。
ルトはすずねの様子を全く気にせずにいつもの感じで話す。
「魔王様から連絡が来たからこの店に来たけど……お店やってる?」
「……もちろん。ルトさんだけは特別ですからね。どうぞ」
「ありがとう」
ルトは少しニコリとして綺麗になったカウンターに座った。
その様子を大将の後ろからすずねはじっと見つめる。
大将は、準備しつつもすずねに声をかける。
「すずねちゃん。動きにくいから割烹着は握らないでね」
「わかった……」
「あと、ルトさんに何か言いたいことがあるんだったら今言っておきな」
「……うん」
すずねは大将の割烹着を握るのをやめて、
大将の横に並ぶように立った。
そしてルトの方をじっと見て、呟くように話す。
「ると……けがはだいじょうぶ?」
「怪我!?ガハハ!!そんなものないわい」
「えっ……」
「嬢ちゃん、何か変な夢でも見たんだろ?」
「そんなはずは……」
すずねはカウンターに座っているルトの方まで行き、
恐々と体をぺたぺたと触る。
ルトはくすぐったいのか、体をぐにゃぐにゃと動かしながら話す。
「触っても何もないぞ!ただ、こそばいな」
「あぁ……ごめん」
「ガハハ!いいってことよ」
ルトはドワーフ族の特徴でもある小さな手ですずねの頭を撫でる。
すずねは撫でられた手の感触を確かめつつ、自然と涙がこぼれる。
その様子を見ていた大将は目の前の二人に話しかける。
「ルトも来たことだし……せっかくだから、みんなでご飯つくろうか」
その言葉に二人とも顔をしかめる。
「ごはんなんてつくれないよ……」
「もちろん、俺もだ」
そんな二人の言葉に大将は首を横に振りながら答える。
「いいや、これはみんなで作ろう。
だって、前に食べたあれなら作れるでしょ?」
大将はニコッとしながら厨房奥に行く。
そして、海苔と梅干し、鮭、おかかを持って現れた。
「「おにぎり!!!!」」
すずねとルトが仲良くハモった。
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