ep.6-2 あつあつの若鳥のから揚げと『もふもふ』のしっぽ

アイルはお腹がへっているのか、箸で持ち上げた唐揚げを

口の中にすぐにほりこんだ。



「あっつ!!!ハフハフハフ!!!」



唐揚げを半分でかみ切って、息を出す。

そして飲み込んだのち水を飲んだ。

口の中を手でパタパタして冷やしながら、叫ぶ。



「大将!熱いならいってよ!!」

「お前なぁ……目の前で揚げて渡しただろ?」

「そうだけども……」



少し納得いかない顔で言いつつ、

唐揚げにふーふーと息を吹きかけて冷ましながら食べ始める。

お腹がへっているのか唐揚げ、ご飯と交互にどんどん食べていく。



そしてあっという間に食べきった。



「ごちそうさまでした!!」



両手を合わせてアイルは声を出す。

その声を聞いたからか、すずねがアイルの横に座る。



「ねぇ、おいしかった?」

「びっくりした!すずねちゃんか」



少し時間ができたのか、アイルの横にはすずねが座って話しかける。



「もちろん、おいしかったよ」

「そうなんだ。まだわたし、たべてない」

「大将!すずねちゃんにこんなおいしい物食べさせてないの!?」



アイルは眉をきゅっとして少し怒った様子で大将に尋ねる。

他のお客向けの唐揚げをあげながら大将が話す。



「あのなぁ、今は開店中なの。店閉まったらまかないでだすよ!」

「やったぁ」



すずねはガッツポーズする。

それを見たアイルは少し優しい目になりながら呟く。



「もっと、感情の無い子かと思ったけど……

  やっぱり大将の元で過ごすのは良かったってことか」

「あっ!?なんか言った??」

「いいや、なにも」



大将は唐揚げをあげるパチパチ音で聞こえなかったのかアイルに尋ねるが誤魔化される。

アイルはすずねに声をかけた。



「すずねちゃん。この店は楽しい」

「うん、たのしい」

「しんどくないの?」

「あさおきるのしんどい.......けど、みんなやさしい」

「良かったね」



すずねはニコニコして答える。

それを見たアイルもニコニコする。



アイルはふとすずねのこしあたりに目線を下げる。

ゆらゆらしている二本のものを見て、少し驚く。



「あれ?すずねちゃん、尻尾二本だったっけ?」

「なんかふえた」

「……そんな簡単に増えるものなのか?」



少し不思議がっているようだ。

そして、何の気なしにアイルはすずねの尻尾をギュッと触った。

すずねは急なことで気が動転しているのか固まっている。



もふもふ


もふもふ


もふもふ



勇者は尻尾が本物かどうかを確かめるためなのか、

もしくはただ気持ちいだけかわからないが、ずっと触っている。

見る見るうちにすずねの顔が真っ赤になっていく。



「ん......!」



すずねはくすぐったいのか、ついに声が漏れる。

その声を聞いていないのか、アイルは触り続けている。



「うん、間違いなく二本とも本物だ。

 しかし、触り心地がたまらんなぁ」



その瞬間すずねは声をあげる。



「やめて!!!!」



ぶん!!!!!

バチン!!!!




触られていた尻尾が勢いよくアイルの顔に向かう。

そしてとても痛そうな音が鳴る。



「痛い!!!!」

「あいるがわるい!きゅうにさわらないで!!!」



すずねは顔を真っ赤にして怒っている。

アイルは尻尾を当てられた場所が真っ赤になっている。



「ごめん......つい気持ちよくてたくさん触っちゃった」

「ぷん!!」



すずねはムスッとしながらアイルから離れ、店員としてのお店の仕事に戻っていった。

それを見た大将は苦笑して話しかける。



「やったな」

「ちぇ……本気で当てなくても」

「大丈夫、あれは全然本気じゃないから」

「そうか、あれで本気じゃないのか……って大将?」

「まぁ色々あるわな」



大将は何もなっていない顔をさする。

それを見たアイルは笑う。



「あえて聞かないでおこう」

「あぁ、そうしてくれ」



アイルが笑ったのを見て大将も笑う。

ひとしきり笑った後、アイルは少し真面目な顔をして大将に話しかけた。

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