ep.3-3 肉じゃがでおいしいのは!?

大将は少し驚きながらルヴィア尋ねる。



「ルヴィアさんでも難しいことなんですか?魔界で一番情報持っていると思うんですけど」

「そうなんだけど、妖狐ってのがね。 種族としてはかなり珍しいのよ」

「なら、逆に親もすぐにわかるのでは?」



大将の問いにルヴィアは首を横に振る。



「そうじゃなくて……どこにいるのかも把握できてないの。

 魔界って広すぎる上に、種族もたくさんいるからすべて把握できているわけじゃないのよ」

「……そうなんですね。わかりました」



大将は少ししょんぼりして返事をした。

それを見たルヴィアは慌ててフォローした。



「まぁ、私も調査かけてみるわよ。時間は少しかかると思うけど、何かあったら連絡するわ」

「ありがとうございます。助かります!!」

「その代わり親が見つかるまでの間、ちゃんと面倒見なさいよ!

 何かあったら私まで連絡すること!!」

「わかりました」


大将はしっかりと頭を下げた。

ルヴィアはそれを見てニコッとする。



大将は料理作りに戻る。

火がしっかり通った肉じゃがを皿に盛った。

ジャガイモ、ニンジン、糸こんにゃく、鶏肉、玉ねぎ......

熱々なのか、湯気が出ている。

そしてそれを二人の目の前にだした。



「はい。肉じゃがお待ち。熱いから火傷に気を付けて食べてね」

「やっと来たか!この店の料理は何を食べてもうまいからな」

「そうね。さっさと食べましょ!」



二人は手を合わせる。



「「いただきます!!」」



そして肉じゃがを食べ始めた。

アイルは肉を、ルヴィアはじゃがいもから食べ始める。



「やっぱり、このほんのり甘い汁を吸った肉がうますぎる……

どうしてこの味が俺たちの世界では再現できないのか」

「肉より、このホクホクしたジャガイモよ。

このジャガイモのしっとりした甘さがたまらなくおいしいわ」



二人は夢中で肉じゃがを食べる。

食べている間に机を拭き終えたすずねが大将の方に戻ってくる。



「たいしょう、おわった」

「お疲れ様。少し残っているから肉じゃが食べる?」

「たべる!」



元気よくすずねが答え、大将はすずねの分も用意した。

すずねは空いているカウンター席に座って肉じゃがを食べようとする。



「いただきます」



そう言うと、肉じゃがの汁を一口飲んだ。

すずねのだらんとした尻尾がパタパタと横に揺れる。

目がパッと見開いて、大将に話しかける。



「このおしる、あまくておいしい!!!」



その言葉を聞いたアイルとルヴィアはすずねに同時に話しかける。



「うまいよな!!次に肉を食べるのが一番肉じゃがを美味しく食べれるぜ」

「おいしいわよね!!次にジャガイモ食べたら、やみつきよ」



二人はお互いに顔を見合わす。



「おい魔王、何を言ってるんだ?

 肉じゃがの名前の通り、肉が一番、ジャガイモは二番だろ?」

「わかってないわね。あくまで肉はジャガイモを美味しく食べるための物なの。

 だから、ジャガイモが一番で合ってるわけ」



二人はお互いの顔を睨みながら話す。

すると、すずねが大将に行った。



「たいしょう!このあまいやつなに!?」

「それか、玉ねぎだな。肉じゃがで一番初めに食べる物としては

 いいセンスしてるよ」

「ありがと!」



すずねは大将が言っている意味が分からないのか、

首をかしげながらも、感謝を述べた。



「まぁ、玉ねぎを選ぶのもいいな!」

「そうね。この汁が良くなるのも玉ねぎだしね」



アイルとルヴィアは何事もなかったかのように、自分の皿の肉じゃがを食べ始めた。

そして、二人は色々言い合いながらも、各々の肉じゃがを食べきる。



「「ごちとうさまでした」」



二人はさっと食べきった。

すずねはまだ半分程度残っている。



「はい、お茶をどうぞ」

「あら、ありがと」



大将は食べ終えた二人にあったかいお茶を渡す。

それを二人は受け取る。

そして、おもむろにルヴィアがため息をついた。



「はぁ……」

「おい魔王、どうかしたのか?」

「いや……ね。ここ数日、魔界の天候が荒れているのよ」

「天候?魔界なんていつも厚い雲に覆われて、どんよりしているじゃないか」

「いや、そうじゃないのよ」



ルヴィアは再び大きくため息をつく。



「どんよりしているのは普通なんだけど、つい先日雪が降り始めたのよ」

「雪?そんなの普通じゃないのか?」

「季節外れなうえ、結構量が降っちゃって。アイスゴーレムとかは喜んでいるのだけど、

 竜が寒いってカンカンに怒っちゃって」

「俺も雪が降ったら嬉しいけどな」

「……あんたに言った私がバカだったわ」



ルヴィアは首を振りながらうなだれる。

その様子を見ていた大将はルヴィアに話しかける。



「ルヴィアさん、気候なんてどうしようもないんですから思いつめずに……ね」

「ありがと。やっぱり一人で来て大将に話せばよかったわ」



ルヴィアは手元にあったお茶をゆっくりとすすった。

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