第7話 男と女とマッチングアプリがあれば小説はできる。

 恋愛の最前線がどこかは分からないですが、今恋人を作ろうとしている男女は漏れなく一度はマッチングアプリに触れたことがあるんじゃないでしょうか。

 と書いて、間違いかも知れないと思いました。


 去年の今頃にお酒を飲んだ後輩がいます。彼は二十二歳で彼女が一度もできたことがないそうです。

 そんな彼と飲んだ時に、「彼女が欲しいならマッチングアプリすれば?」と話題を振ったところ、「郷倉さん、あのね。初めての彼女がマッチングアプリって俺なんか嫌なんですよ」という返事が返ってきました。


 この妙なこだわり感が男の子!って感じで、僕はこの後輩が好きなのですが。彼女を作るならマッチングアプリ以外が良いと思っている人は結構いるのかも知れません。

 世の中、マッチングアプリやSNSを通じて異性と会うことに関するマイナス面は探せば無限に湧いて出てくるでしょうし、実際に不快な思いをされた方もいるでしょう。


 なので、これから書く内容は、僕の個人的な体験に基づく戯言だと思って受け止めていただければと思いますし、不快になられるようでしたら読まずに次に進めていただけると嬉しいです。


 ちなみに、後輩と去年飲んだ際、彼は「来年の年末に飲みに行く時には彼女できてますよ」と言っていました。

 僕は「じゃあ、できてなかったらマッチングアプリな!」という嫌な先輩ムーブな返しをすると、「良いっすよ! 俺を舐めないでください」と後輩は息巻いていた。

 このエッセイを書いている間に思い出したので、LINEをしてみると「彼女できました!」とのこと。

 有言実行さすがです。今度、飲む時はちょっと良いご飯を奢り、話を根掘り葉掘り聞こうと思います。


 ●


 さて、まず冒頭で後輩の個人的な気持ちから入りましたので、具体的なところから入りましょう。

 Google先生です。彼にマッチングアプリの使用率を尋ねてみました。その回答をAI先輩がまとめてくれたところによると「男性28.1%、女性24.8%」で利用経験が「20代後半〜30代前半の独身男女の51.0%が利用経験あり、また利用傾向がある」とのことでした。

 なるほど。

 マッチングアプリって「20代後半〜30代前半の独身男女」がメインターゲットだと考えると、そりゃあそうかなと思います。

 社会人は仕事で時間がないですし、職場や近場で出会いを探したり、恋愛することに躊躇がある人もいるでしょう。アプリの良いところは通勤中や自宅でできることで、今は更にアプリの数も充実してますから周囲にもバレにくいでしょう。


 ちなみに僕も妻との出会いはマッチングアプリでした。マッチしてやりとりをはじめたのがいつだったのか定かではありませんが、実際にあったのは2022年の春。ようやくコロナが終わった頃です。

 会うまで長い期間、僕と妻はメッセージとたまに電話の交流を続けていたと記憶しています。

 今の20代後半から30代前半は大前提として恋愛における大事な時期とコロナが被った世代だと言うことが可能です。そんな状況で恋愛をしようと思った場合、選択肢はマッチングアプリやSNSしかなかったように思います。


 すべては僕の所感にすぎませんので、一端個人的な体験は脇において、マッチングアプリをはじめた時に考えたことを一つ。

 まず、僕の頭にあったのは「これを小説にするにはどうすればいいのか?」でした。


 例えば、村上春樹がマッチングアプリを題材にした小説を書くとしたら、どうか。

 不思議な女性と出会って世界の淵のような場所へと連れて行かれるのかな(羊をめぐる冒険を想定)とか。

 川上弘美ならどうだろうか。

 掴みどころのない男の子と出会って、自分の新しい内面を知ったりするのかな(ニシノユキヒコの恋と冒険を想定)とか。


 あらゆる作風の作家でもマッチングアプリというガジェットは馴染むんじゃないか、と僕は思ったんです。だって、根本的なところは男女が出会うきっかけでしかありませんから。

「男と女と車が1台あれば映画はできる」とゴダールは言っていますが、マッチングアプリがあれば、とりあえず男と女は確保できます。

 あとは車だけです。


 この車の役割を何に担わせるのか、またマッチングアプリだと初対面の男女になってしまいがち、と考えると色々出てきます。

 それとどうしても現代的なモチーフであることも否めません。100年後にも残る物語を書くんだ!という人には取り扱い注意ですし。

 現代的な単語は物語を陳腐な印象にさせてしまう恐れもあります。

 マッチングアプリで運命の出会いがあった、なんて。

 もう、それはアプリのキャッチコピーの流用だと思われても仕方がないかも知れません。


 ちなみに、ウィズというアプリのキャッチコピーは「運命よりも、確実。」です。あと、「ここが出会いの最先端」なんてものもありました。こちらはイヴイヴというアプリ。

 このエッセイの冒頭で最前線とか書いちゃってごめんなさい。影響されたわけじゃないんです。信じてください。


 というわけで、マッチングアプリのキャッチコピーを見るだけでも、そこに物語を想像させて良い感じですが、それを超えられるような物語を提示したいとは思う次第です。

 それが出来ているか分かりませんが、僕なりにマッチングアプリという題材を扱った作品を本日同時に更新しました。

 タイトルは「心乃花さんのマッチングアプリ」です。

 そのままですね。


作品は以下です。

https://kakuyomu.jp/works/16818093090111458172


 詳しい詳細は本編を読んでいただくか、また別の機会に譲りたいと思うのですが、今回は直球の恋愛小説を目指しました。

 前回の「僕は蛇の抜け殻に触れられなかった。」とは、また毛色の違った作品になっていると思いますが、頑張って書きましたので一読いただければ幸いです。

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