第6話 文章が書けない時の試行錯誤の遍歴。

 人間の集中力の持続は平均50分で、最大は90分らしいです。

 Google先生に尋ねてAI先輩が導いてくれた答えなので、話半分に聞きたいところですが、僕自身も集中力が一時間途切れず続いたらいい日認定しているので、実感としてそれくらいかと思います。


 小説は一度の集中で書き上げられるものではありません。

 すごく短い話だった場合は可能かも知れませんが、基本的にはどこかで集中力が途切れて、それでも手を動かし続けると次の集中のターンに入れる。

 これを何日も繰り返して小説が出来上がります。

 小説を書くことに必要なのは、まず集中力だと僕は思っています。

 そして、次が日常的に集中できる場所と時間の確保です。


 今回はひとまず、一度の集中に入るための方法論について考えてみます。

 あくまで僕の実感ですが、集中する状態に入るためには手を動かすしかありません。パソコンの前に座って、テキストページを開き、キーボードに手を添える。

 そこからしか始まりません。


 とはいえ、ここで問題が起こります。何を書けば良いのか? という問題です。書くべきだと考えていたことがあったとして、それがすんなり文字としてテキスト化できれば良いのですが、往々にしてパソコンの前に座ると思考は煙のように消えます。

 少なくとも僕はそうです。

 この時の対処法をみなさま持っておりますでしょうか?


 僕が考えたのは大きく分ければ二つです。

 本を読むか、何でもいいから文字を書くです。本を読むはその通りで、積読している中で適当に選んでパラパラめくって拾い読みをします。その内、こうすれば良いんだが浮かんでくることがあります。

 僕は常に図書館で本を借りていて、煮詰まったら拾い読みするようにしています。今はベルンハルト・シュリンクの「夏の嘘」と小川洋子[編著]「小川洋子の陶酔短編箱」が手元にあります。多分、全部を読み通すことなく図書館に返すことになると思います。


 次の方法は新しいテキストを開いて、何も書くことがないなら「何も書くことがない」と書いて、浮かぶ断片的な言葉を並べていく作業です。これは読書猿の「アイデア大全」のバグリストというレシピを参考にしました。

 作業としては紙とペンを用意して、タイマーを十分にセットし「不愉快なこと、出会った嫌なこと(バグ)を、ジャンルや新旧こだわらず、とにかく書き出す。」という方法です。


 最近の僕で言えば、教習所の不愉快(バグ)が無限に書き出されます。十分なんてあっという間です。

 バグの中に今、僕が考えていることの種が潜んでいるので、それを捕まえればエッセイを一本書くことができます。

 クオリティが高いエッセイになるかと言われると首をひねりますが、文章を書く集中に繋げることは可能です。


 今日も文章を書けた。

 そう自分を肯定できるので、この方法は僕のような怠惰な人間からすれば有効な方法です。ただ、バグリストで文章を書きはじめても、小説に移行すると途端に手が止まります。

 小説とエッセイは文章の根本の質が違っているようです。

 そんなの当たり前だろうと言われればその通りなのですが、集中する手続きも異なるとは思っていませんでした。これはあくまで僕の場合で、他の方は書く集中に入ってしまえば、小説にも取り掛かれるのかも知れません。

 だとしたら、羨ましい。


 僕はこのややこしい性質のおかげで、小説用の集中の手続きを考える必要がありました。

 ここで試した方法がメモです。読書猿の「アイデア大全」で言うと「エジソン・ノート」に近いです。内容は


[1]自分のアイデア、目に止まった他人のアイデアや気になった情報など、なんでもノートに記録しておく。

[2]記録したノートを事あるごとに読み返し、気づいたことをさらに書き加える。

[3]そうして得たアイデアが成功した場合も、失敗した場合も、ノートに記録しておく。


 というもので、この記録に採用したのがLINEのグループ機能です。この機能はグループと言いながら一人でも作成することが可能なんです。

 今のサイトやネット記事、SNSには基本的に共有機能が常備されていますので、気になったネタはすべてLINEの一人グループページに貼り付けていきました。そして、読み返す時にリプライという形で、自分の気づきや感想を書き加えていきます。

 小説のネタが浮かんだ場合はそれも記載しておく。


 この方法の弊害は朝一などに寝ぼけながらリンクを共有して感想を書き込むと、一人グループのページではなく、別の人に張り付いて書き込んだりしてしまうことです。僕は妻にツイッターのリンクを貼り付けていたと気づいて青ざめました。眠気など吹っ飛び、既読がつく前に削除しました。

 以降、僕の一人グループはLINEページの一番上に固定されました。

 これでも共有する際は固定されておらず、複数の人たちが表示される中で選択をしなければならないので、たまに共有した際に不安になったりします。

 難しい世界です。


 と、ここまでが僕が集中するための試行錯誤の一部でした。

 誰かの参考になるとも思えないのですが、エッセイや小説を書くための前段階で色々考えていることがあるんですよ、ということが伝われば幸いです。

 また、僕以外にも書く前の段階での試行錯誤をされている方はいると思うので、良ければ教えてください。苦労を共有しましょう。


 ●


 実は今回は文章を書いている時の気分転換の方法ってみなさまどうしてます? という話を書きたかったんですが、気づけば全然違う方へ。

 次回はその話をしつつ、可能なら長編小説が書けなくなった話などもできたらなと思っています(これは次の次かな?)。

 来週もよろしくお願い致します。

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