第6話

翔太は、艦の訓練と任務をこなしながらも、心の中で揺れ動く思いを抱え続けていた。新大和の進水式から数ヶ月が経ち、国際的な緊張が高まる中、彼は自らの信念を試される日々を送っていた。


ある日、艦の指揮官である山田艦長が訓練の後、全乗組員を艦橋に集めることを命じた。艦長の表情は、いつも以上に真剣だった。翔太は、仲間たちと共に艦橋に向かい、何が起こるのか不安を抱きながら待った。


「皆さん、我々は今、国際的な緊張の中にいます。」山田艦長は、静かな声で話し始めた。「最近、周辺国からの挑発行為が増加しており、我々の任務はより重要性を増しています。新大和がその象徴として、我々の防衛の意志を示す必要があります。」


艦長の言葉に、翔太は背筋が伸びる思いをした。自分が乗っている艦が、ただの護衛艦ではなく、国の意思を体現する存在であることを改めて実感した。


「しかし、我々が掲げる旗には、過去の歴史も含まれています。その意味を理解し、どう行動するかが問われています。時には、戦う覚悟も必要です。」艦長の視線が乗組員一人ひとりに向けられ、重みを感じた。


訓練の後、翔太は高橋と再び話す機会があった。「艦長の言葉、どう思う?」と高橋が尋ねる。


「過去を背負いながら、どう未来を築くか。俺たちの選択が大事だと思う。だけど、戦うことが本当に正しいのか、まだ迷っている。」翔太は素直に答えた。


高橋は頷きながら、真剣な表情を浮かべた。「俺も同じだ。戦争は多くの人を傷つけ、歴史を変えてしまう。でも、守るべきものがあるなら、戦う覚悟を持たなきゃいけないのかもしれない。」


その言葉に、翔太は心の中で葛藤を感じた。自らの信念と、国の方針が交錯する中で、彼は何を選ぶべきかを考え続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る