七年後

伊東デイズ

第1話

「涼宮さんが正面玄関の、」

 言いかけた女子生徒を押しのけ、俺は職員室を飛び出した。ヅラ校長に呼ばれていたような気もするが、ハルヒ以上に重要な要件などあるものか。

 全力で走り出す俺の後ろから生徒指導の教師が追いかけてくる。どのみち釈明するはめになるだろうが、今はどうでもいい。


 廊下を疾走する俺の前から生徒たちは飛び退り、道をあけた。驚いた表情は俺の勢いだけではない予感があった。すでに話は全校に拡散しているんだろう。


 ハルヒ……。頼むからこれ以上バカなことをやらんでくれ。と言ってもダメなことはわかってる。いつだって本人はいたって本気なんだ。今のハルヒはそれが周囲の人々の心を少なからず傷つけていることを知らない。

 その上、周囲の非難はすべて俺に向いている。やったのはハルヒだろとは言えないのがつらいところだ。いったい今回はどんな騒ぎなんだ?


 俺は階段を二段飛ばしに駆け下り、正面玄関へ突っ走る。すぐに人だかりが見えてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る