第2話 私の妻は料理上手
ああっ今日も食べすぎてしまったな。
私は満腹になり、膨れ上がったお腹をさする。
私の妻は美人でしかも料理が上手い。
なのでついつい食べすぎてしまう。
そんな生活を送っていたら、案の定会社の健康診断にひっかかってしまった。
どうやら高血圧と血糖値が高いということだ。
私は生活習慣の改善に取り込むために医師の診断をうけることにした。
「いやあ、妻の料理が美味しすぎてついつい食べすぎてしまうのですよ」
私は眼の前の医師にそう告げる。
目の細い、黒髪の女医は真顔で私の顔を見る。
「何をおっしゃっているのですか?」
その女医は私から目を離さない。
「Тさん、あなたの奥様は三年前になくなっているではないですか……」
女医はそう言った。
「はははっ先生、冗談にしてもそれはひどいな。私の妻は家でピンピンしてますよ」
私はくだらない、趣味の悪い冗談をいう女医にそういった。
この女医は何を言うのだ。
「Тさん、そろそろ現実を受け止められたらどうでしょうか。よろしければカウンセリングの先生を紹介しますよ」
まだ医師はしつこく言う。
温和な私も流石に感情的になりそうだ。
私は医師のいうことを受け流し、病院をあとにした。
帰宅途中、急に胸が苦しくなった私は近くの公園にあるベンチで休むことにした。
しばらく座って休んでいると誰かが私に声をかけてきた。
聞き慣れた可愛らしい声だ。
「あらっあなた、帰りが遅いと思ったらこんなところにいたんですね」
それは私の妻の声だ。
妻は柔らかな笑みを私にむける。
妻の笑顔をみると呼吸がおさまり、動悸もなくなった。
肩に手をあて、私は妻の柔らかで、温かな体を抱きしめる。
なんだかひさしぶりにこうしたような気がする。
それにしてもあの女医はやはり嘘つきだ。
妻はこうして元気にしている。
「さあ、あなた行きましょうか。今日の晩御飯はあなたの好物の唐揚げをつくったんですよ」
妻は私にそう告げる。
私は妻の手をとり、立ち上がる。
「でも、健康診断でひっかかったんだよな」
揚げ物は高血圧にはよくないよな。
「うふふっ、あなた。もうそういうのは気にしなくていいのですよ。好きなものをたっぷりと食べていいのですよ」
妻は綺麗な笑みを浮かべる。
愛する妻がそういうのなら、まあ良いかな。
私は妻の手料理を思い浮かべながら、帰路についた。
翌日、四十代後半の男性が公園のベンチでなくなっているのを散歩中の老夫婦により発見された。
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