alone

水島あおい

第1章 男友達

第1話

「お前は強いから大丈夫だよな」

恋人からの突然の言葉だった。

「え?」

礼音(あやね)はその一言を聞いて言葉を失ってしまった。

「でも彼奴は……亜美は俺がいないとダメなんだ」

「…… 」

「だからゴメン。そう言う事だから」

恋人はそれだけ言うと、礼音を置き去りにして行ってしまった。

行かないで!

一人にしないで!

寂しいよ!

心の中では悲鳴を上げていた。

だが先程の一言で、その言葉を見失ってしまった。

お前は強いから大丈夫……

そんな事を言われたら弱さを見せられないじゃない……

いつの間にか、礼音の瞳から涙が溢れ落ちていた。


「どうだった?奥沢とちゃんと別れられた

か?」

友人の寺尾が声を掛けて来た。

「問題ない。というか彼奴、涙さえ見せなかったんだぜ。強いと言うか、可愛気がないと言うか」

笠井純平はそう言って寺尾を見た。

放課後の教室には2人以外誰もいない。

「女の子は頼りないぐらいの方が可愛くていいよな」

「だろ?」


「奥沢礼音、見事に失恋致しました!」

2年B組の教室にいたのは桜井郁弥である。

「おーそうか」

「失恋した女の子に、普通おーそうかって言う?」

礼音は苦笑いしている。

「ねえ、郁ちゃん。強い女の子ってやっぱり可愛気がないのかな」

「人それぞれじゃね?」

「…… 」

「お前は男と友人になれるタイプだ」

「それ、ちっともフォローになってないんだけど」

礼音はそう言うと少し剥れた。

「褒めてるんだぜ」

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