第10話:二人の姫。

朝起きると、やっぱり姫はパンツ一丁で朝ごはんを食っていた。

何度言っても治らんものは治らん・・・親父がいなくてよかったよ。


でもって姫の暴力・・・俺が姫の仮の彼氏になってやってから姫は暴力を

ふるわなくなった。

前は、人の頭を叩いたり足を蹴ったりそういうのは日常茶飯事だった。

ちゃんと約束は守れる女なんだ。


で、ある日のこと、姫のクラスに新しい女子が転入して来た。


彼女の名前は「白雪 姫しらゆきひめ

姫に負けず劣らず超可愛い。


シラユキヒメ?


うちの姫と同じ名前・・・ややこしい。

だから白雪のことは姫じゃなく普通に白雪って呼ぶことにした、勝手にだけど。


最初は白雪のことは何も知らなかったが、のちのち彼女と話す機会があって

分かったことによると、同じ姫でも、うちの姫とは全然違っていて両親もちゃんと

いてけっこう裕福に育ってきたらしい。


まあ、姫みたいにクチが悪いわけでないし暴力的でもないみたいだ。

たぶん、満月の夜もエロくないんだろう。


で、なんと言っても驚いたのは白雪はコスプレイヤーだってこと・・・。

それは俺にとっては、めちゃ美味しい。


コスプレイベントなどで俺の好きなゲーム、ブルーヘブン・ファンタジーの

キャラ「セルジュ・フォン・ヴァルデック」に扮している。


セルジュをコスプレした白雪の画像が彼女のツイッターに上がっている。

俺は全部、ダウンロードした。

コスプレ好きの俺には、たまんない。


それにメリークリスマスブロマイドなんて言ってセブンイレブンのネット

プリントで1枚40円でブロマイドが印刷できるって言うじゃないかよ。


俺は、たちまち白雪のファンになってしまった。

できればお知り合いになりたい。

白雪は姫と同じクラス。


だから白雪を紹介してくれなんて姫に言ったら火に油を注ぐようなもの・・・

絶対、殺される。

仮の彼氏でも浮気したら殺すからって言ってたんだから、まじ白雪の彼氏に

なんかなったりしたら、どうなるか分かったもんじゃない・・・。

正式には俺は姫の彼氏でもないのに、他の女性と仲良くしたら許されないって

どう考えてもおかしくないか?。


つうか美幸とのつまらん見栄の張り合いは決着がついたんだろ?

だったらもう俺が彼氏でいる必要もないじゃないかよ。


そう思って俺は姫に言ったんだ。


「俺たち、もう彼氏とか彼女とかって関係じゃなくてもよかないか?」


「何、言ってるの・・・一度、彼氏になったらもういいだろってことには

ならないの・・・」


「いやいや・・・実際のところ俺は姫の彼氏でもなんでもないんだからな」

「あれは、おまえが話の上だけでいいから彼氏になってくれって言ったから、

おっけ〜したんだろ」


「もうそんな、見栄っぱり必要ないだろ・・・」


「・・・・・」


「なに・・・なに黙ってるんだよ」


「だってチューしたし・・・」


「チューしたって言ったって・・・おまえ・・・」

「え?待てよ・・・おまえ満月の夜のこと覚えてるのか?」


「覚えてるよ」


「俺がおまえが満月の夜・・・迫って来ただろって言ったら、そんなこと

するかキモいって言ったじゃんか」


「全部、覚えてます・・・」

「チューしたことも、おっぱい揉まれたことも・・・」


「そうか・・・・?って・・・」

「揉んでない、揉んでない・・・まだおっぱいは揉んでないだろ、それは違う」

「もうちょっとでウンって言うとこだったわ・・・危ねえな・・・」


「チューしちゃったら、お互いもう恋人同士だからね」


「おまえな・・・なにガキみたいなこと言ってるんだよ」

「チューくらいでそんなことにはならないよ」


「じゃ〜この際はっきりっちゃうけど私、ツッキーのこと好きになったんだもん?」

「これって、れっきとした恋愛感情で告ってるんだからね」


「まじでか?・・・いや〜そう来たか・・・」

「いや、待て待て、いや、いや・・・それは・・・」

「つうかさ・・・俺のどこかいいんだよ・・・イケメンでもないし」

「モテるわけでもないし・・・特にこれって特化した魅力だってないし・・・」


「ツッキーは充分魅力的だよ・・・自分で気づいてないだけだよ」

「そりゃね、見た目って大事だと思うけど問題は中身でしょ?」


「それって、つまり・・・俺の見た目が悪いって言われてるみたいなん

だけど・・・」


「あ、ごめん・・そう言うつもりじゃなくて・・・なんて言うの?」


「だから、誰かを好きになったら、それがすべてなの・・・理屈じゃなくて」


「・・・・」


仮の彼氏だったはずなのに・・・ゴスロリ女に本格的に好きになられちゃったよ。

魔が差してキスしたのが間違いだったのかな・・・?


つづく。

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