あなたが生きているかぎり

ひろ

第1話『弟』

 私の弟は、笑顔がよく似合う少年だった。


 上品に切りそろえられた前髪に、大きくて丸い瞳。


 唇は淡い薔薇色で、お互いにまだ性別を意識しない頃、父と母の真似をして、私はその愛らしい唇にキスをした。幼い口づけを終えた後、弟は戸惑いながらも私の瞳に微笑みかけた。


 私が子どもから少女になると、以前は頻繁に行われていたチャンネル争いや、身体を押しつけあうような喧嘩はしなくなった。弟の身長も健やかに伸び始め、私たちが歩いていると、道を行く人には、仲の良い同級生に思えただろう。それが嫌で、あまり弟とは遊ばなくなっていった。


 中学生になると、私にとって弟は、たった一つの年齢の差にもかかわらず、まるで別世界の住人のように思えた。

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