第7話 メゾンを創造しました

「ふむ………このままだと所謂いわゆる『ジリ貧』と言う状況に陥ってしまうなぁ…」


 ギルドで依頼を受けては来たけど、初心者の僕は昨日と同じ依頼とプラスで『薬草採集』を受けて外に来ていた。


 そこで僕は考えた。家を造ろうと!


 あんな宿屋に高い金を払って宿泊するくらいなら、僕は一人暮らしをします!それなら宿泊費用はタダになるからね!


 『クリエイト』で物を創る時、僕の魔力とイマジネーションが物を言うから、基本は魔力が満タンの朝一番に創るのがベストなのだよ。


 ベルトに付けてる『収納ポーチ』もそうやって僕が作った物さ!


 でもあの時は大変だったなぁ……。


 僕は記憶にあった『僕専用の時間経過の無い、無限に仕舞える収納ポーチ』を作ろうと、自分の部屋で『クリエイト』を使った。


 その結果、今のポーチを創る事が出来たけど、魔力が枯渇した上、生命力まで勝手に魔力変換されちゃって、僕は危うく死にかけたんだ……。その後も長く寝込んでしまい、流石の僕もゆるふわボディを維持することが出来ずにやつれてしまった。


 そういえば、何故かあの時、屋敷のメイド達がこぞって僕の看病に手を上げたらしい。


 まあ、しょうが無い事だよ。弱った僕を見て、彼女達がナイチンゲール症候群に集団罹患してしまうのもさ。罪な男って僕みたいな人のことを言うんだろうね。


 そう言えばあの頃からかな………兄様達が僕に辛く当たり始めたのは。自分がモテナイからって、狭量な兄様達だなぁ…と、残念に感じたのも既に懐かしい思い出だ。


 でも今回は、そこまでの魔力は必要無いはずだ。目指す家は『隠者の隠れ家』的な小ぢんまりした家だからね。


 それにポーチ創造以降は、2度とあんな目に合わない様にコツコツと訓練を繰り返して、あるかも知れない『クリエイト』の熟練度上げに励んだからさ。僕だって努力はしてるんだよ!主に自分の為だけど。


 さあ、それでは造り上げてみせましょう。


 思い描くんだ!僕の理想の住まいを!


 すると脳内にあるメロディーが流れてくる。


 あの街に〜あの家に……

 ルルル〜ル ルルル〜〜🎵


 「『クリエイト!!!!!』」


 僕の心の宿り木よ!来い!!


 ズンッ!!と、音を立てて僕の前に影を作った建物。それを、そっと目を開いて確認した。


 あ、あれれ??隠者の隠れ家をイメージしてたのに、シャーが住んでるメゾンみたいになっちゃった……。


 とりあえず、内覧しようか。


「オープン・ザ・ドアー!!」


 瀟洒な造りの外観。玄関ドアはレバーハンドルで開閉し易いね!あ!ちゃんとツーロックになってるよ!


 玄関も広いし、ブーツが入る下駄箱もある!


 靴を脱いでいざ!室内へ!!


 廊下に収納が1つ、その向かい側にはトイレがあった。その先の扉の向こうがお部屋かな?


 型硝子の嵌った木製ドアを開けると、広々としたアイランドキッチンと、ゆったり寛げそうなリビング・ダイニング。


「このキッチンで僕が料理の腕を振るうのか。また歴史が刻まれてしまう予感がする…………ウィームッシュ!」


 リビングと隣り合った三面スライドドア。

 それを開けば寝室とウォークインクローゼットが備わっていた。


 キッチン近くにあるもう一つの引き戸は、洗面脱衣所。その奥にバスルーム。


「………なんだろう。この部屋を見ていると、寂寥感に苛まれる……。住みたくても、僕のお給料では支払えない家賃設定。きっと審査落ち。……ああ!!これは思い出しちゃいけないパンドラの箱だったのか?!」


 ぼんやりとした過去の記憶が、チクチクと僕の繊細なハートを刺激する。きっとこれは忘れた方が良い事。


 大丈夫、大丈夫だ、ルーディウス!!


 このお部屋は僕が『クリエイト』で創造したマイルーム!毎月の家賃の支払いも、立ち退きも無いんだよ!!所有権者は僕だ!!


「………ふう。落ち着いて来た。時々あるんだよね。呼び覚まされた記憶が悪さをすることが。はっきりと分からない所がまた歯痒い…。だけど、僕は今を生きる自由で前向きな若者なんだ。過去に縛られたりはしないさ!」


 そう思って、ひと息付こうと思ったら、家具が全く無い事に気付いた。


 ……………もう魔力が少ないや。

 あとは明日創造しよう。素敵なお部屋に仕上げて、快適な住環境を目指すよ!




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