第34話 〜野獣とファミチキの物語〜
ここは手羽先山脈、伝説のファミチキが眠ると言われる神秘の地。その頂には黄金に輝くファミチキがあり、それを手に入れた者は底知れない無限の力を得るという。
そんなおいしそうな話を聞いた万年腹ペコな野獣先輩が、今日も飢えた表情で山へと足を踏み入れる。
「んにしても、やっぱり…ファミチキ…最高やな!」
空腹に耐えきれない野獣先輩は、いかにも険しそうな山の入口で早くも肉汁あふれるファミチキの妄想にふけっていた。しかし、この山がただのピクニックコースではないことを、能天気な彼はまだ知らない。
「ここが手羽先山脈か。すごく……高いです」
崖やら急斜面やらが立ちはだかり、早速足元がおぼつかない。それでも「お腹が空いた」という最強の原動力に突き動かされ、彼は険しい道を進んでいく。
足を滑らせそうになるたびに、彼の脳内には「ファミチキうまスギィ!」といった妄想が駆け巡り、気力を取り戻していた。
途中、怪しげな洞窟を見つけた野獣先輩。「はいって、どうぞ。。。」と遠慮がちに入ると、中からモゾモゾと動く何かが現れた。なんとそれは手羽先モンスターたちの群れだった。
「ファッ!! まずいですよ!」
群れを成して襲いかかる手羽先モンスターたち。野獣先輩は瞬時に判断し、ポケットから秘伝のタレを取り出して撒き散らした。
「タレまみれじゃねえか!」
モンスターたちはタレに絡まって動きを鈍らせ、その隙に野獣先輩は洞窟を脱出。モンスターの一体が泣き声を上げるのを背にしながら、彼は「すまねえな。俺も生きるためなんですねえ」と小声でつぶやいた。
険しい山道を登るごとに、彼の疲労は増していった。
しかし、遠くから漂う香ばしい匂いが彼の鼻をくすぐり、足取りを軽くする。
「あの匂いは間違いない、ファミチキの匂いってそれ一番言われてるから!」
と確信した彼は、半ば駆け足で山道を進んでいった。
山頂が近づくにつれ、スパイシーな空気がピリついてきた。その時、突如として現れたのは巨大なファミチキ先輩だった。
「おい。お前、何してんだよ」
ファミチキ先輩は油で輝くボディを誇らしげに揺らしながら、不敵な笑みを浮かべている。野獣先輩はその威圧感に一瞬たじろぐが、すぐに拳を握りしめた。
「俺はファミチキが欲しいんだよ!」
言葉と共に馬鹿の一つ覚えのように突進する野獣先輩。
しかし、ファミチキ先輩はヌルヌルと滑る動きで攻撃をかわし、カウンターの油飛ばしを浴びせてきた。
「待て待て待て! そんな乱暴しないで!」
野獣先輩は必死に応戦するも、油まみれで滑って転びそうになる。絶体絶命の状況で、彼は最後の切り札を取り出した。それは秘伝のマヨネーズだった。
「これが俺の本気だ!」
マヨネーズをビームのように一気に放つと、ファミチキ先輩はその酸味に耐えきれず「うわああああ!」と絶叫しながら力を失った。こうして宿敵を倒した野獣先輩は、ついに山頂にたどり着いた。
そこには噂通り、黄金に輝くファミチキが鎮座していた。「やりますねえ!」と一言つぶやき、彼はそれを手に取る。そして、躊躇なく一口かじった。
「うますぎるだろ!」
口の中に広がる至福の味。疲れも何もかも吹き飛ぶような美味しさに、彼はただただ感動する。その一方で、「こんなにうまいものなんで今まで食べられなかったんですかねえ!?」と涙が頬を伝った。
こうして野獣先輩は伝説のファミチキを手に入れ、満足げに山を降りていった。彼が通った後には、どこからともなくタレとマヨネーズの香りが漂い、後を追う者たちに希望を与えた。
その物語はやがて語り継がれ、手羽先山脈の伝説として永遠に残ることになる。
「俺もファミチキになりてぇなぁ」
そんな呟きが、山々に静かに響き渡った。手羽先山脈は今日も静かに、しかしどこか満たされたような雰囲気を漂わせている。
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