第29話 無敵砲台攻略戦
とある研究施設。白衣を着た男たちが逃げ惑い、爆音が鳴り響く中、巨大なロボット兵器「無敵砲台」が施設の中央で火を噴いていた。その場に現れたのは野獣先輩(24歳、学生という名の無職)。彼は胸ポケットに入った依頼書を握りしめ、現場を見上げていた。
「これもうどう見ても無理だろ……(諦め)」
依頼書には「暴走した無敵砲台を止めてほしい」とだけ書かれている。もともとこの無敵砲台は、どこかの猫型ロボットが未来の世界から持ち込んだ兵器で、本来はおもちゃとして作られたはずだった。
しかし、イキスギた原因で暴走した結果、武力行使で施設を占拠し近隣住民をも脅かしているのだという。
「ふざけんなよ! 未来のおもちゃがこんな大暴れするなんて聞いてないんだよなぁ!」
施設の外から中を覗き込むと、無敵砲台は四方八方にミサイルを撃ち出し、まるで自分がこの世の支配者であるかのように威嚇している。
「無敵砲台って名前、伊達じゃないってはっきりわかんだね……」
それでも報酬を手に入れるためには、この賞金首のような暴走兵器を止めなければならない。先輩は覚悟を決めて、施設の中へと忍び込んだ。
内部はまるで戦場のようだった。焦げた壁、散乱する書類、そして床に転がる壊れた機械の部品。無敵砲台が動き回るたびに、その重厚な足音が施設全体に響く。
「うわぁ……こりゃすげぇわ。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね」
慎重に隠れながら無敵砲台に近づく先輩。その巨体はまさに「無敵」と呼ぶにふさわしく、全身が硬い装甲で覆われている。正面には無数の砲口があり、背中にはロケットランチャーまで搭載されている。
「これどうやって攻略すればいいんだよ……」
先輩は途方に暮れながらも、施設内に残されていた設計図を見つけた。それによると、無敵砲台の弱点は唯一つ、背中にある制御コアだった。
「ファッ!! 背中って、そこ行くまでに俺死んじゃうじゃねぇか! いい加減にしろ!」
しかし、やるしかない。先輩は手近にあった壊れたロボットの部品を集めてトンカチカンカンを経て即席の盾を作り、それを構えて無敵砲台に挑むことにした。
「お ま た せ! アイスティー(盾の名前)しかなかったんだけどいいかな?」
無敵砲台が先輩を感知すると、警告音が鳴り響いた。
「侵入者ヲ排除スル……!」
その瞬間、砲口からレーザーが発射され、先輩の周囲の床が焼け焦げた。
「ひえぇっ! ミサイルじゃねえじゃねえか!! やべぇよやべぇよ……!」
想定外の攻撃に盾を構えながら全力で走り回る先輩。どうにか死角をついて無敵砲台の背後に回り込もうとするが、次々と放たれるミサイルや鉄球がその道を塞ぐ。
「なんでこんなとんでも兵器が未来にあるんですかねぇ!」
さらに悪いことに、ミサイルの爆風に巻き込まれ、先輩は吹き飛ばされてしまった。インスタントの盾は壊れ、彼の身体は壁に叩きつけられる。
「んあー! 痛ってぇ……これ、もうダメかも分かんねぇな……」
煙が立ち込める中、無敵砲台は硝煙をあげながらゆっくりと近づいてくる。ダメージを負った野獣先輩は必死に身体を動かそうとするが、足がもつれて立ち上がることができない。
「ここまでか……いや、まだだ!」
目の前に転がる壊れたロボットの部品。その中に、一つだけまだ使えそうなエネルギーパックを見つけた。
「これだ! これで逆転だぁ!」
先輩はエネルギーパックを握りしめ、最後の力を振り絞って立ち上がった。そして、無敵砲台の動きをよく観察し、わずかな隙を狙って突進した。
無敵砲台が再びミサイルを発射する直前、先輩はスライディングでその足元に潜り込んだ。
「くらえ! 俺の捨て身の一撃だ!」
エネルギーパックを制御コアに叩きつけると、激しいスパークが走り、無敵砲台の動きが一瞬止まった。
「今だ……止まれぇぇぇ!」
制御コアのカバーをこじ開け、緊急停止スイッチを押し込む。無敵砲台は轟音とともに完全に停止し、静寂が訪れた。
「やったぜ! これで俺の勝ちだぁ!」
施設は静寂に包まれ、先輩は汗だくのままその場に座り込んだ。
その後、無敵砲台は未来へ送り返されることになり、先輩には多額の報酬が支払われた。
「これでまた新しい冒険に出られるって、はっきりわかんだね。あ、おっさん! 牛丼あせだく……じゃねえや、牛丼つゆだくね!」
しかし、その報酬は過去に野獣先輩がやらかした弁償代に充てられほとんど残らなかった。
「世の中世知辛いからね、しょうがないね」
こうして野獣先輩の無敵砲台攻略戦は幕を閉じた。彼の冒険の日々は、まだまだ続くのだった――。
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