第10話 野獣先輩と恐怖の森
月明かりも届かない深夜の森。鬱蒼と茂る木々の間から、かすかに聞こえるのは風の音と動物たちの不気味な鳴き声だけ。そんな森に、一人の男が足を踏み入れていた。
「あー、クッソめんどくせえ。なんでこんなとこ来なきゃなんねーんだよ」
その男の名は野獣先輩。とある違法な賭けに負けた罰ゲームで、巷から恐れられている恐怖の森を一人で冒険する羽目になった。
背中に背負ったリュックから懐中電灯を取り出し、森の中を照らす。光の先には何も見えないが、野獣先輩は余裕の笑みを浮かべていた。
「は? こんなん余裕だし。俺がビビるとでも思ったか?(震え声)」
不気味な気配
森を進むにつれ、野獣先輩は徐々に異様な気配を感じ始めた。木々の間から何かが覗いているような視線、風に紛れて聞こえる低いうめき声。
「あっ、やばい……これはやばい……」
一瞬怯むが、すぐに首を振って気を取り直す。
「いやいや、これ全部気のせいだろ。ホラゲーとかと一緒だし」
そんなことを言いながらも、手に持った懐中電灯を握る力が強くなる。
突然、背後でガサガサと茂みが揺れる音がした。
「おっ、おいおい、マジで来るなよ……!?」
振り返ると、そこには何もいない。
「あっ、もう帰りたい……いや、違う。俺がこんなとこで引き下がるわけねーだろ!」
強がりを言いながらも、野獣先輩の額には冷や汗が滲んでいた。
森の奥の廃屋
しばらく進むと、野獣先輩の目の前にボロボロの廃屋が現れた。
「あっ、ここ絶対やばい場所だって。俺、こういうの詳しいからわかる」
だが、引き返すのもプライドが許さない。意を決してドアを開けると、中には埃まみれの家具と、不気味なほど静まり返った空間が広がっていた。
部屋の奥に古びた日記が置かれているのを見つける。
「は? なんでこんなとこに日記があるんだよ。ホラー映画のテンプレかよ」
そう言いながらも、興味本位でページを開く。
そこには、かつてこの森に住んでいた人々が「何か」に襲われたことが書かれていた。
「はぁ? これ完全にフラグ立ってんじゃん。俺、帰るわ」
日記を閉じた瞬間、背後からドアが勢いよく閉まる音が響く。
「あっ、やべぇ! やべぇよ!」
野獣先輩は慌ててドアに駆け寄るが、何かに押さえられているのか、ビクともしない。
襲い来る影
暗闇の中、廃屋の隅から低いうめき声が聞こえてくる。
「うわっ、マジで来たし! これ絶対ヤバいやつだって!」
懐中電灯を向けると、そこには異形の影が立っていた。目は赤く光り、口からは鋭い牙が覗いている。
「ちょっ、待てよ! 話せばわかる!」
必死に叫ぶが、汚い影はゆっくりと野獣先輩に近づいてくる。
「おいおい、ふざけんなよ! 俺はまだ死にたくねーんだよ!」
そう叫びながら、野獣先輩は手元のリュックを無作為に掴み、中から適当に物を投げ始めた。
「これでも食らえ! カロリーメイト! あとこれもだ!」
次々と物を投げつけると、意外にも影は怯んだように見えた。
「あっ、これワンチャンあるんじゃね?」
野獣先輩は影に向かって懐中電灯を投げつけ、隙を見てドアに突進。なんとか開いた隙間から外に飛び出す。
脱出と反省
森の出口まで全力で走り抜けた野獣先輩は、息を切らしながら地面に座り込んだ。
「はぁ……俺、こんなとこ二度と来ねえわ」
空を見上げると、いつの間にか朝日が昇っていた。
「でも、俺の活躍、マジで伝説じゃね? これで俺もヒーローだな」
そう呟きながら、野獣先輩は懐からスマホを取り出し、自撮りを始めた。
朝日が昇る中、恐怖の森をなんとか脱出した野獣先輩。全力疾走で体力を使い果たし、ボロボロになりながらも達成感に満ちていた。
「俺ってやっぱすげえわ。こんなクソみたいな森、俺一人で制圧したし」
そう豪語しながら地面に座り込み、リュックから再びカロリーメイトを取り出す。
「は~、やっぱこれがなきゃ始まんねえよな。これでエネルギー補充して、さっさと帰ろ」
一息ついた後、野獣先輩は帰り道を探し始めた。しかし、見覚えのある道がどこにも見当たらない。
「ん? これおかしくね? 俺、さっきどっちから来たっけ?」
辺りを見回すが、木々ばかりで何の目印もない。
新たなる森の入り口
しばらく歩くと、野獣先輩の前にまたしても鬱蒼とした森が現れた。恐怖の森とは雰囲気が違うものの、何か禍々しい空気が漂っている。
「えっ、嘘だろ? これまた森かよ。は? 俺、さっきクリアしたばっかなんだけど」
勝手にクリアしたとかほざく野獣先輩は不満を漏らしつつも、引き返すのも面倒なのでそのまま足を踏み入れる。
森の中は薄暗く、遠くから鳥の鳴き声や木々のざわめきが聞こえる。
「あっ、これ絶対またヤバいやつだわ。でも、俺が行かなきゃ始まらねーし」
そう言って強がりながらも、慎重に進む野獣先輩。
謎の声と影
森の奥深くに進むにつれ、背後から誰かの声が聞こえ始める。
「う……る……さ……い……」
「おっ? 誰だよ! 俺に話しかけるとかいい度胸してんな!」
振り返るが、そこには誰もいない。
再び歩き出すと、今度は横から視線を感じる。懐中電灯で照らすと、一瞬何かが木陰に消えた。
「あっ、やばいやばい。これ絶対ホラーの続編だって!」
野獣先輩は慌てて足を速めるが、周囲の不気味な気配はどんどん濃くなっていく。
謎の看板と選択
やがて、森の中にぽつんと立つ看板を見つける。そこには手書きの文字でこう書かれていた。
「右:安全な出口 左:永遠に続く森」
「はぁ? これ、どう考えても罠だろ。俺、ほらほらほらホラー映画とか詳しいからわかるんだよ」
野獣先輩は看板をしげしげと見つめた後、思い切って右の道を選ぶ。
しかし、しばらく進んでも森は一向に終わらない。
「あっ、これ完全にやられたやつだわ。てか、俺を試すとか、調子乗ってんなこの森、頭に来ますよ!!」
謎の存在との遭遇
進み続ける野獣先輩の前に、ついに巨大な影が現れる。影は人型のようで、しかし異常に長い腕と脚を持ち、顔には目がない。
「おいおい、これマジでどうすんだよ!?」
野獣先輩はリュックを開け、またもや中の物を投げ始める。
「これでも食らえ! カロリーメイト! あとこれ! これもだ!」
しかし、影は全く怯む様子を見せない。
「おい、話せばわかるだろ! 俺、平和主義者なんだよ!」
脱出への鍵
影が野獣先輩に迫る中、足元に何かが光るのが見えた。それは小さな鍵だった。
「は? なんでこんなとこに鍵が……」
迷う暇もなく鍵を拾い上げると、目の前に突然古びた扉が現れる。
「いや、これどう考えても罠だけど、行くしかねえ!」
扉に鍵を差し込み、勢いよく開けると、眩しい光が飛び込んできた。
再び自由へ
気がつくと、野獣先輩は見覚えのある街の近くに立っていた。
「は~、俺やっぱ強えな。こんなクソみたいな森、俺一人で攻略したし」
誰に言うでもなく呟きながら、野獣先輩はポケットからスマホを取り出しまたもや自撮りをしだした。
「これで俺の冒険も伝説になったな。あっ、次の罰ゲームは誰にやらせようかな~」
そんなことを考えながら、彼は悠々と帰路につくのだった。そしてまた新たな森の入り口へと迷い込んでいく……。
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