死神の円舞曲 -白骨の貴婦人は幼馴染伯爵に溺愛される?-

天堂 サーモン

プロローグ

 セシリア・ド・グランヴィル侯爵令嬢は、その際立つ美貌で社交界を魅了していた。淑女たちは彼女に憧れを抱き、紳士たちは彼女に惹かれ、その心を差し出した。しかし、彼女は上辺だけの美しさに陶酔する人々に失望し、心を閉ざしていった。


 セシリアは自分の美貌にばかり目を向ける人々の軽薄さに辟易していた。苛立ちは冷淡で傲慢な態度として表れ、いつしか周囲は彼女を称賛しながらも、彼女の冷たい眼差しに反感を覚えるようになった。


 そんな彼女の人生は唐突に終わりを告げる。26歳の若さで、病か毒か、謎めいた死を迎えたのだ。葬儀では彼女の生前の振る舞いを非難する者も多くいたが、ただ一人、彼女の死を深く悼む者がいた。


 エドモンド・モンテリオン伯爵――柔らかな金髪とエメラルドの瞳を持つその年若い男は、セシリアの棺を前に静かに佇み、涙を流していた。


「セシリア。君を失うくらいなら、僕は悪魔にだって魂を売り渡そう」


 葬儀から幾ばくかの時が過ぎ、誰もがセシリアの死を忘れ去った頃。とある噂話が社交界の片隅で囁かれた。美貌のセシリアの墓が暴かれ、その遺骸は忽然と姿を消した、と――。

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