第12話 市議会での攻防

温泉街の抗議活動が盛り上がりを見せる中、藤崎たちは泥湯の封鎖と再開発計画を正当化するため、市議会で計画の承認を得る最終段階に進めようとしていた。一方、紗奈たちは市議会に乗り込み、計画の不正を暴露する最後の勝負に挑む。


描写:

市議会の会場には、藤崎を支持する市議や再開発を推進する業者の代表、そして温泉街の住民たちが集まっている。議場の空気は緊張感で張り詰め、紗奈は壇上に立つ藤崎を見つめながら強く拳を握りしめていた。


藤崎:

「再開発計画は別府市全体の観光価値を向上させ、地域経済を活性化させるためのものです。泥湯の資源は、この街全体のものとして最大限に活用されるべきです。これに異を唱える理由はありません。」


藤崎の堂々とした演説に一部の市議たちが頷く中、紗奈が挙手をして壇上に立った。


紗奈:

「申し訳ありませんが、私はその意見に反対です。泥湯は温泉街の象徴であり、八重の湯が代々守り続けてきた大切な財産です。それを無断で利用し、独占しようとすることは許されるべきではありません。」


議場がざわつく中、紗奈は契約書を取り出し、市議たちに見せた。


紗奈:

「これは、泥湯の源泉が“八重の湯”の管理下にあることを証明する契約書です。藤崎さんたちは、この契約を無視して計画を進めていました。この計画は法的に正当性を欠いています!」


藤崎は一瞬表情を曇らせたが、すぐに冷静を装い、反論を始める。


藤崎:

「確かにその契約書は存在しているかもしれません。しかし、泥湯は温泉街全体の資源です。特定の旅館が独占するのは不公平ではないでしょうか?」


そのとき、黒瀬が立ち上がり、プロジェクターで藤崎の内部文書を投影した。


黒瀬:

「それが公平と言えるなら、この資料はどう説明するんですか? 藤崎さん、あなたの計画では、泥湯の成分を利用した商品を特定の企業に独占させることになっていますよね。」


描写:

議場のスクリーンには、泥湯の成分を使った美容商品の独占契約に関する文書が映し出される。市議たちは騒然となり、藤崎の立場が一気に揺らぐ。


市議A:

「これは一体どういうことだ? 再開発計画が別府全体のためと言いながら、一部の企業の利益を優先しているじゃないか!」


藤崎:

「そ、それは……計画を進めるための一部の調整です。誤解を招く表現があっただけです!」


紗奈は追い打ちをかけるように声を上げた。


紗奈:

「藤崎さんたちが守ろうとしているのは別府の未来ではなく、私利私欲です! 温泉街の未来を守るためには、地元の人たちの声をもっと大事にするべきです!」


その言葉に触発された温泉街の住民たちが次々に立ち上がり、声を上げ始める。


住民A:

「泥湯はこの街の誇りだ! 勝手に奪わせはしない!」


旅館主B:

「温泉街の文化を壊してまで再開発なんて必要ない!」


湯けむり倶楽部リーダー:

「私たちは温泉街の本当の価値を知っている! 泥湯を守り抜くぞ!」


描写:

議場全体が住民たちの声で埋め尽くされ、藤崎の計画を推進しようとする市議たちも動揺し始める。その中で、高瀬刑事が立ち上がり、最後の一撃を放つ。


高瀬刑事:

「藤崎さん、あなたには不正な取引の疑いがある。計画の透明性を確保するため、私たちはこれ以上の進行を認めるわけにはいかない。」


藤崎はついに言葉を失い、険しい顔のまま議場を後にした。計画の承認は見送られ、再開発計画は白紙撤回される方向で再検討されることが決まる。


描写:

議場の外では、温泉街の住民たちが喜びの声を上げている。紗奈は黒瀬と顔を見合わせ、小さく笑う。


紗奈:

「これで泥湯を守れましたね。」


黒瀬:

「いや、守ったのは泥湯だけじゃない。この街そのものさ。」


エピローグへの導入


泥湯の封鎖は止められ、再開発計画は白紙に戻された。紗奈と温泉街の人々は自分たちの力で未来を守ったことを実感する。そして、物語は温泉街の新たな始まりを描くエピローグへ――。

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