佐藤の巣ごもり
七海咲乱
第1話佐藤の入学
私は
「えっと、佐藤朱里です。中学校は、
ああ。無事終わった。陰キャ&コミュ障にとっては最難関の自己紹介。ここで事故ると私の華の高校生活が終わってしまう。私の高校での目標は3つある。一つ目は黒歴史を作らないこと。二つ目は陰キャ&コミュ障脱却。三つめは彼氏を作ること。どれもかなりハードルが高いが、何とかクリアしたい。まあ、三年もあるし、できるだろう。
「ええっと。あ、次は我か。我は世界を滅ぼすために選ばれし男こと、ダークネスヘブンだ。今世では
はああああ?なんかやべえやつきた。さすが変人が集うとうわさされている学校。ん?ちょっと待て、しばらく私の後ろにいんの?え、私関わる可能性あんじゃん。困った。私の平穏な高校生活が。なんだかんだでダークネスヘブン以外は普通の自己紹介だった。なんだったんだ。あと、なぜ誰も何も言わないんだ。
「自己紹介も終わったことだし、班で交流をしてもらいます。四人グループで固まって、自由に交流をしてください」
やめてくれ。ダークネスヘブンと話したくない。すると隣の陽キャっぽい男子が机を後ろに向けて、我先にとダークネスヘブンに話しかける。
「ダークネスヘブン?志藤君?どっちで呼べばいい?」
「どちらでもよいぞ。しかし、志藤の方がありがたいな」
「じゃあ志藤君、部活はなんか決めた?」
「ふむ。部活は大事であるな。まだ決めてないが」
「志藤君、化学部とかどう?一緒に入らない?」
「見学だけならよいかもしれぬな」
私は二人の会話を黙って聞く。私の斜め後ろの席の、同じ班の女子も動揺しているようだった。そりゃそうだ。陽キャ君、たまにはその女子にも話を回してあげてくれ。私はいいから。しかし、私の思いは通じることなく、そのまま二人で永遠に話続け、私ともう一人の女子は置き去りになった。そんなこともあってか、私とその女子は放課後までに仲良くなっていた。
「朱里ちゃん、家どこ?」
彼女の名前は
「えっと、福井駅の方」
「私も!一緒に帰ろう」
そういって私たちは外に出ると、ダークネスヘブンと陽キャ君が並んで歩いていた。この二人のビジュやべえ。インパクト半端ねえよ。陽キャと陰キャって仲良くなれるんだな。陰キャの方は陰キャと呼んでいいのか不明だが。
「あの、朱里ちゃんのこと朱里って呼んでいい?」
「あ、え、うん。じゃあ朋子って呼ぶね」
急な呼称変換に困惑しつつ、私は答える。きっと彼女はそのことに夢中でタイミングを見計らっていたのだろう。なんと純粋でかわいいのだ。
それから一週間後、待ちに待った部活勧誘が始まる。中学校の時とは異なり、部活は強制ではないらしい。しかし、青春といえば部活。よって私には部活に入らないという選択肢はなかった。私は、明子とご飯を食べる。
「部活決まった?」
「私は吹奏楽部。朱里は?」
「ウチはディベート部と演劇部と漫研部と生物部とバレー部とハンド部とサッカー部のマネージャーで迷ってる」
「迷いすぎやないかい」
「ナイス突っ込み」
一週間もずっと一緒にいるとだんだん本性が現れてくるものだ。最初朋子は、かわいい大人しめ女子かと思っていたが、意外とアニメ好きのオタクだった。私もアニオタだから気が合うし、友達トーク中の一人称はいつの間にかウチになっていた。
「失礼しまーす」
そういって謎の集団が入ってくる。靴の色は黄色だから三年生の先輩だ。
「男子サッカー部です。現在三年生20人、二年生23人で活動しています。マネージャーが少ないので、入ってくれると嬉しいです。えっとぉ今から漫才します」
なんでやねん。と思いつつ、その先輩たちのしらけた漫才を見る。そのまま教室を凍らせたままサッカー部の先輩は出ていった。その後も次々と部活勧誘の先輩が入ってくる。すると珍しく一人で入ってくる先輩がいた。
「囲碁部です。囲碁部は今、部員が三年生一人しかおらず、廃部になってしまうかもしれないので、皆さんどうか見学だけでも来てください。」
そう言い残してその先輩は恥ずかしそうに、そそくさと去っていった。一人か。私も気持ちはわかる。中学の時が部員少なかったから頑張って勧誘したな。まあとりあえず見学だけでも行ってみようかな。
「朋子囲碁部いかない?見学だけ」
「見学だけならいいよ」
そういって放課後、私たちは見学に行ってみることにした。
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