第55話
目を覚ましたサノスではあるが微熱がまだ残っていた。
「その状態で狩りに行くのは難しそうね」
「ごめん」
「気にしないで。お金なら十分あるし焦ることはないわ」
「そうね。それに、これはいい機会だと思うの」
「いい機会?」
「私達は特例で森での狩りを許されているけれど新人であることには変わりない」
「そうね。それぞれ自分を鍛えなおしてもいいと思うわ」
「サノスには私が魔法を教える」
「なら、私はジントに伝えてくるわ」
そう言ってアマンダは部屋を出て行った。
「それで魔法を教えてくれるってことだけどどうするの?」
「サノスは身体強化は使えるんだよね?」
「うん。アマンダから教わったからね」
「なら、魔力を感じ取ることはできているはず」
「なんとなくだけどね・・・」
「次のステップとしてイメージをしっかり浮かべる」
「イメージだけでいいの?」
「人によって異なるけど詠唱はイメージを補完する為に唱えるものだからなくても大丈夫」
「なるほど・・・」
サノスは試しに水を少量思い浮かべる。
だが、実際に生み出された水は1滴だけだった。
「難しいね・・・」
「ううん。それだけでも十分凄いよ。普通の人は何も出ないのが普通。それに人には向いている属性と向いてない属性がある」
「向いている属性か・・・・。何がいいんだろう?」
「酔っ払いのサノスは風魔法をよく使ってた。だから、サノスは風魔法は普通に使えると思う」
「試してみるね・・・」
サノスは弱い風を想像してみる。
するとそよ風のような風が起こった。
そのそよ風はカノンのロープを捲り上げる。
「凄いけど・・・。サノスのえっち・・・」
「ごめん。でも、そういう意図で起こしたわけじゃないから・・・」
「サノスじゃなかったらぼこぼこにしてる」
そう言って恥ずかしがっているカノンはとても可愛かった。
「気を取り直して練習する」
「うん・・・」
サノスは改めて風魔法を発動させる。
今度は迷惑をかけないように気をつける。
イメージとしては手の上で小規模な竜巻を起こすイメージだ。
「予想はしてたけどサノスはやっぱり凄いね」
「そうかな?」
「私は初歩的な魔法を使えるようになるのに1ヶ月ぐらいかかった」
「下地があったからだと思う」
「下地?」
「酔っ払いのサノスが使っていたという情報と実際に祖父が見せてくれたことがあったから・・・」
「そっか・・・。サノスのお爺さんはSクラスの冒険者だったね」
「実際に戦い方とかは教えてくれなかったけど僕が喜ぶから魔法は色々見せてくれたんだ」
「サノスのことが羨ましい。私は独学だから」
「独学?」
「うん。魔法を教えてくれるところもあるけどとてもそんなお金はないから本を見て試行錯誤した」
「それはそれで凄いと思うよ」
戦う術を教えてくれる場所はこの街にもいくつかあるだろう。
だが、月謝を払えるほど新人冒険者の懐事情は良くない。
酔っ払いのサノスは怒るかもしれないが機会があれば仲間達を鍛えてもらいそれを教えてもらうのも悪くないかもしれない。
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