第40話

サノス達が楽しんでいたころ冒険者ギルドのギルドマスターは領主の館を訪ねていた。

「こんな時間にどうした?」

「要件はわかっているのでしょう?」

「例の商会の件か・・・」

「貴方。知っていて放置してたでしょ?」

「街の多くの有料者が絡んでいたし闇ギルドの件もあったからな。下手に手を出せば関係者以外にも被害が出る可能性があった」

「そのおかげで新人冒険者が何人餌食になったか・・・」

「そこは悪いと思っているさ」

「はぁ・・・。とはいえ、闇ギルドの動きが気になるわね」

「そこは問題ない。潜ませていた諜報員から連絡がきた。アクアバットは完全に手を引くそうだ」

「あの質の悪い連中が?」

「どうにも闇ギルドにとってタブーの言葉を言われたそうだ」

「タブーの言葉?」

「詳細はわからなかったが、闇ギルドのボスは顔を真っ青にしていたそうだ」

「やったのはうちの新人よね?そんな言葉を知っているなんて何者なのかしら?」

「ただ者ではないのは確かだな。密かに監視するように指示は出しておいた」

「そう・・・。こちらからも探ってみるわ。有能なのは間違いないし」

「そんなに優秀なのか?」

「オークを大量に収めていたし、こないだはオーガまで倒していたわよ」

「ほう。そこまで強いなら是非ともうちにほしいな」

「冗談はやめてよ」

そう言ってギルドマスターは殺気を飛ばす。

だが、領主としては慣れたものでそれを受け流す。

「冒険者がどういう道を進むから自由だろう?アプローチした結果、うちに仕えることになってもそれはその者の自由だ」

「それはそうなのだけどね」

「それで、他所に応援を出していたはずだがそちらの方は?」

「3組ほどAランクの冒険者がくるわ」

「そうか・・・。少ないな」

「これでも来てくれるだけありがたいのだけどね」

「こちらからも兵士を出そう。雑魚の掃除ぐらいには役に立つはずだ」

「大規模に兵士を投入すれば何が起こるかわからないわよ?」

ギルドマスターが不安視するのも理由があった。

過去に魔物の生息域で大規模な討伐を試みた領主がいた。

生息域を犯された魔物達はそれに抗うように大反乱を起こした。

それ以来、大規模な討伐はタブーとされてきたのだ。

「不安もわかるがこのまま放置もできまい?」

「そうなのだけどね」

森への立ち入りを禁止している現在、魔物は間違いなく増えている。

どちらにせよ魔物が溢れる可能性があるのだ。

「これは領主としての決定だ」

「わかったわ・・・。なら、私に出来ることをするだけね」

領主として決めたことをこの男が覆すことはない。

それを知っているギルドマスターは何が起きても大丈夫なように手を打つしかなかった。

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