第35話
宿屋に着き2人の部屋に入った途端、アマンダとカノンは謝ってくる。
「わざわざ来てもらってごめんね」
「いえ。それでどうしたんですか?」
「ちょっとした愚痴をね・・・」
「そうそう」
まず2人はミーネから聞いた話を教えてくれた。
「女性冒険者があの商会の依頼を受けると指名依頼を出してくるの」
「女性冒険者は依頼を断れずに何度も依頼を受けて冒険者を引退してたの」
「そうだったんですね。でも、その理由まではわからなかったんじゃ?」
「それは、私達が体を張って調べたからね」
「あんなことをされたら普通の女性は耐えられないわ」
「あんなこと?」
「あのデブ親父。仕事を教えるとか言って私達の体を触ってきたんだよ。信じられる?」
「今でもあの指に触れられたと思うと気持ち悪い・・・」
「それは・・・」
サノスが去った後、2人は商会長に体を触られたと聞いて消失間のような物が襲ってくる。
戻ってこなかったということは商会員はその様子をずっと見ていたのだろう。
「サノス。調査は明日からも続くわ・・・」
「だからね・・・」
「少し私達に勇気を頂戴」
そう言ってアマンダとカノンが抱き着いてくる。
サノスはどうしたらいいかわからず固まってしまう。
「2人共・・・」
2人の体温とか匂いとかが伝わってくる。
2人はとても魅力的な女性だ。
今なら何をしても許されるような気がする。
だが、サノスはぐっと我慢した。
ここで、手を出せば今までの関係が壊れてしまう。
そう思ったからだ。
しばらくして2人はサノスから離れる。
「ありがとう。これで明日からも頑張れるわ」
「うん・・・。本当に嫌だったら言ってね?お酒を飲んででも2人を助けるから」
「ありがとう」
サノスは2人の部屋を出る。
小さく「ヘタレ」と聞こえた気がしたが気にしないことにした。
サノスは自分の部屋に戻ってきた。
「ふぅ・・・。危なかった。あのままいたら・・・」
ふと、2人の感触を思い出す。
「2人共、柔らかかったな・・・。それにいい匂いがしたし・・・」
ベッドに横になり忘れようとするがそうしようとするたびに2人のことを考えてしまう。
結局、この日は朝方まで眠ることが出来なかった。
「ふぁ・・・。もうこんな時間か・・・」
サノスは今日はランニングは止めて朝食を買ってから冒険者ギルドに急いだ。
パーティーメンバーの面々はまだ来ていない。
サノスは職員を捕まえてミーネと話がしたいと申し出た。
ミーネはすぐにやってきて個室に案内される。
「どうしたの?」
「依頼のことでちょっと・・・」
「2人から詳細を聞いたのね?でも、男の貴方に出来ることはないわ」
「でも、2人の力になってあげたいんです」
「なら、2人を支えてあげて。それが力になるはずだから」
「わかりました」
結局、新人である自分には何の力もない。
それを突き付けられただけだった。
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