第17話

冒険者ギルドを出たサノスは周囲に人が潜んでいるのを認識していた。

内心でやはり面倒なことになったかと溜息をつく。

昔から新人に寄生しようとする質の悪い冒険者はいるものだった。

この時代でもそれは変わらないようだ。

宿に直行して押しかけられても面倒だ。

サノスはあえて裏路地に入る。

すると潜んでいた男達が現れた。

「おいおい。不用心じゃないか?新人がこんなところを歩いてたら」

「そうでもないさ。お前らがいるのはわかってたからな」

「随分と生意気なルーキーだな。躾が必要そうだ」

「そう思うならかかってこいよ。だが、骨の1本や2本は覚悟しておくんだな」

冒険者ギルドに併設されている酒場では手加減したがここなら暴れても問題ない。

仮に怪我をさせて訴え出ても正当防衛が認められるだろう。

「野郎。もう手加減しないからな」

サノスはあきれつつ手をくいくいする。

頭に血ののぼった男達が殴りかかってくる。

それをサノスは紙一重で避け逆にカウンターを叩きこんでいく。

「大口を叩いてた割にこんなもんか」

サノスは寝転がっている男達の懐を探る。

「これは勉強料ってことで貰っていくぜ」

そう言って容赦なく男達の財布からお金を奪い取る。

男達は思っていたよりお金を持っていて思わぬ副収入ににんまりする。

「いつも酒を用意させるのも悪いしな。ちょっと寄り道していくか」

そう言ってサノスは酒屋に向かった。

「いらっしゃい」

「ふむ。中々いい品揃えだな」

「へい。うちは品揃えには自信がありますよ」

「これを貰おうか」

「それでいいんですかい?もっといい奴もありますけど」

「いや。つい懐かしくてな」

サノスが選んだ酒は昔からある酒造の酒だった。

サノスにとっては思い出の酒である。

「銀貨1枚になります」

「ほらよ」

代金を支払いそのまま酒を持って酒屋を後にする。

「少し問題はあったが・・・。まぁ、これに懲りて少しは大人しくなるだろ」

ああいう輩は何かと横の繋がりが強い性質がある。

叩き潰した連中から話が伝わり絡んでくる有象無象は減るだろう。

大物が出てくる可能性もあるがそれは除外していい。

大物ってのは面子に拘る。

この程度のことでいちいち動いていては毎日その対処に追われてしまう。

めったなことでは動かないはずだ。

サノスは上機嫌で常宿に戻ってきて眠りについた。




その頃、サノスに叩き潰された連中はまとめ役の元に向かっていた。

「あの餓鬼。舐めやがって。俺達、レッドオーガの面子は丸つぶれだ。絶対許さねぇぞ」

今回、叩き潰されたのは街のチンピラ冒険者達の集まりレッドオーガの末端の構成員だ。

新人に負けたとしったヘッドは逆に激怒して訴え出てきた連中を制裁した。

「サノスねぇ・・・。このままってわけにもいかねぇがしばらくは様子見だ」

レッドオーガのヘッドはそう言って冷静な判断をくだした。

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