第10話
冒険者ギルドに戻ってきたサノスは受付に並ぶ。
夕方ということもあり受付には長蛇の列ができている。
もう少し早く戻ってきた方がよかっただろうか。
そんなことを考えながらも列は少しずつ前に進みサノスの順番がやってきた。
「次の方、ご用件をどうぞ」
「はい。換金お願いします」
サノスは採ってきた薬草といらない木の実や野草を木のプレートの上に乗せる。
「それではしばらくお待ちください」
そう言って受付嬢は一度下がりすぐに戻ってくる。
「銀貨3枚となります」
「ありがとうございます」
サノスは銀貨を受け取り受付を離れた。
「今日はどうしようかな?」
酒場で適当に食事を済ませることもできるが幸い食べられるものは確保してある。
お金を使う必要もない。
「よし。早めに宿に戻って明日に備えよう」
そう言ってサノスは冒険者ギルドを後にした。
採ってきた果物をかじりつつ宿屋に戻る途中でアマンダとカノンと遭遇した。
「あれ?サノス。今日はお酒飲まないんだ」
「いつも飲んでいるみたいに言わないでくださいよ。それに、お酒を飲んだ後の記憶がなくて怖いんですよ」
「なるほどねぇ。でも、心配しなくても大丈夫だと思うけどな」
「そうそう。そこいらの唐変木じゃサノスは負けないから」
「詳しく聞いても?」
「ごめん。私達、これから用事があるから」
「そうそう。その話はまた今度ね」
そう言ってアマンダとカノンは行ってしまった。
「酔っぱらってる自分が怖い・・・」
サノスはそんなことを言いつつ宿屋に戻ってきた。
「今日は早いんだね」
「明日も仕事を頑張らないといけないですから」
「真面目だねぇ。まぁ、うちはお金さえ払ってくれればそれでいいから」
サノスは今日の宿泊費を払って一度部屋に戻り、着替えを持って裏庭に設置されている井戸に向かった。
「はぁ・・・。臭うなとは思ってたけど本当に臭い」
どうやらここの所、体を洗っていなかったようだ。
パーティーメンバーには女性もいるので気を使いたいところだ。
体をじゃぶじゃぶと洗いつつ着ていた服も洗濯する。
「ふぅ。綺麗になったかな?」
洗濯と体を洗い終わり、最後に水をざっぷんと浴びて持ってきていたタオルで体を拭いてから新しい服に着替える。
洗濯した服を持って自室に戻ると備え付けのハンガーに濡れている服をかける。
「寝るにはまだ少し早いかな?」
そう言ってサノスは愛読書を取り出す。
この世界で本は高い。
この本は何度も読んでいるがサノスの宝物だった。
大好きだった祖父の遺品なのだ。
サノスが冒険者になろうと思ったのも祖父の影響からだった。
何せ世界中で数人しかいないSランク冒険者だったのだ。
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