僕が英雄?記憶にないんですけど?
髙龍
第1話
「今日から僕も冒険者だ!」
サノスはそう言って喜ぶ。
彼は田舎の村から一番近くの街までやってきた。
夢は英雄と呼ばれるような大冒険者になることだ。
「はいはい。新人なんだから地に足のついた活動をしてね」
受付のお姉さんが苦笑いしてそう言ってくる。
「わかってますよ。まずはやっぱり薬草の採取からですよね」
「取り方はわかる?」
「はい。村の近くでいつも採取してましたから」
「そう。なら心配はないわね。でも、調子に乗ってあまり森の奥まではいかないようにね」
この街の近くの森は凶暴な魔物は少ないがそれでも危険がないわけではない。
ゴブリンの集団にでも会えば新人冒険者など一方的にやられるだけだ。
「危ないと思ったらすぐに逃げますから」
そう言ってサノスは冒険者ギルドを後にした。
「ふぅ。ここが森か。豊かで良さそうな森だな」
豊かな森は危険も多いがそれだけ採取できるものも多い。
目的の薬草も豊富にあるはずだ。
サノスは早速、森の中に入っていく。
「おっ。あったあった。浅いところに生えてるってことはやっぱりこの森は豊かなんだな」
サノスは根っこを残して薬草を採取する。
薬草は生命力が高く根っこを残しておけば3日ほどでまた生えてくる。
目的によっては根っこごと採取することもあるが今回受けた依頼ではその必要はない。
「あっ。果物もある。食費は少しでも減らしたいからこれも採っていこう」
採取を続けていると時刻はあっという間に夕刻となる。
「そろそろ戻るか」
魔物によっては夜に盛んに行動する種も存在する為、危険度もそれに伴い変化する。
この街に来たばかりのサノスだが、田舎の森も似たような物だったのでその辺は十分理解していた。
サノスは門で冒険者ギルドのカードを提示して街の中に入る。
来たときは身分証が村の住民票だけだったので入門税を取られたが冒険者カードのおかげで入門税も取られず改めて冒険者ギルドのありがたさを実感した。
冒険者ギルドに入ると受付には長蛇の列ができていた。
サノスはその列に並び自分の番を待つ。
「お待たせしました。次の方」
サノスは自分の番がきたので薬草の買取を願いする。
「それでは清算してきますので少々お待ちください」
受付嬢はそう言って提出された薬草を持って奥に下がる。
しばらく待っていると受付嬢が戻ってくる。
「こちらが報酬です」
そう言って渡されたのは銀貨が1枚だった。
「ありがとうございます」
サノスは銀貨をポケットにしまうと併設された酒場に向かった。
「お兄さん。注文は?」
「エールを1つとステーキを」
「銅貨5枚になります」
サノスは代金を支払い注文したエールとステーキが来るのを待っていた。
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