俺は学校のアイドルである桜さんと時々話す
むいむの。
第1話
「日向さん!昨日のキックトックに上がってたダンスめっちゃ可愛かったよ!!」
「この前、日向さんの歌ってみた聞いたけど歌もうまいんだね!!」
「いつも感想ありがとうね。モチベーションにつながるよ!」
昼休み、俺は廊下を歩いていると前の方から声が聞こえて来た。ふとその方向に目が行く。そこには多くの男女に囲まれた見覚えのある1人の生徒がいた。
「桜ちゃん今日スタバの新作出るって!もしよかったらなんだけど、一緒にいかない?」
「いいね!他の人たちも誘ってみんなで行こっか!!」
「私もついていっていい?」
「もちろんいいよー!楽しみだね」
次は移動教室だしそろそろ行くかと思い、目を離そうとした瞬間に桜と目が合った。俺は慌てて目を背け旧校舎に向かって歩く。すると後ろから誰かが走ってくる音が聞こえて来た。嫌な予感がするな。
「
どうやら、嫌な予感は当たっていたようだ。桜は俺の肩をポンと叩くと笑顔でそう言った。
「馬鹿言え。お前のぶりっ子モードに感心してただけだよ」
惚れちゃったと言ってもよかったけれど、その場の思い付きで適当に答えたこの1回のネタが一生擦り散らかされる可能性があるので俺は正直に答える。
「私だって素の自分を隠すの頑張ってるんだからね!」
「マジでいつかバレそうだから気をつけろよ」
「はいはい、言われなくても気を付けてますぅ」
桜は顔をプクっと膨らませながらそういった。俺の前ではぶりっ子しなくてもいいのに…。かなり疲れているのだろう。
「っていうか学校で話すの1か月ぶりぐらい?久しぶりだね」
思い出したかのように桜はそう言った。言われてから気付いたけど、確かにこうやって話すのは久しぶりだな。
「クラスが違うと特に話すこともないからな。しかも桜と話していると男子からの恨みを買っているのか偶に睨まれるんだよ」
俺は嫌味をたっぷり込めて桜に言う。まあ睨まれることはただの事実なんだけど…。
「清く麗しい私と仲良く話せるんだからそのぐらいの天罰は下っても仕方ないね」
「お前清楚だのアイドルだのもてはやされて調子乗ってるだろ」
「事実だもん。仕方がないね」
桜は腰に手を当てふふんと胸を張る。事実であるということを一概には否定できないところがムカつくな。
「清楚だけではないだろ。この前、低俗な下ネタで爆笑してたじゃん」
「うっ…ま、まあそれは置いとこうじゃないか。それより!今日は朝陽が学校のアイドルということを認めてくれた祭り開催しようかな」
「バカみたいな祭り開くんじゃねえよ!…因みにその祭り何すんの?」
ツッコんで話を流そうと思ったが祭りの内容が気になってしまった。本当に認めてくれた祭りって何なんだよ。
「え!そんなの私の友達に朝日の黒歴史を言いふらすに決まってんじゃん!」
「じゃあお前の本性もバラすからな。桜も弱みを握られてること忘れるんじゃねえぞ」
数秒間の沈黙が訪れる。
「「……あははっ!」」
俺達は少しにらみ合った後に笑った。ここは引き分けということでこの続きはまたいつかにしよう。
「親友と馬鹿言い合うのやっぱり楽しいね!」
桜は今日1番の笑顔で言う。気持ちがわかるわけでもないがやっぱり学校のアイドルをするのは疲れるのだろう。そんなことを考えると同時に予鈴が鳴った。
「次の授業旧校舎だから行ってくるわ」
そろそろ向かわないと授業に遅刻しそうなので別れを告げ、旧校舎の方へ向かった。
「頑張ってね!!」
背中から応援の声が聞こえた。心なしか少し足取りが軽くなった気がする。
俺と桜は時々話す。
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