第二幕 靴を落とした少女 6:エル

そういって、私は、このお屋敷の使用人になったのだった。


………………………………………


そして、私がこのお屋敷で働き始めた日から数日。私は、毎日のように働いた。このお屋敷で使用人として働くことが決まったとき、2人の娘はとてもいやそうな顔をして母親に懇願していた。


娘1「お母様!どうなさったのですか?!どこか体調がすぐれないのですか?!」


継母「いいえ。わたくしは、体調など崩してはいませんよ。」


娘1「では!!どうしてこんな!!こんなシンデレラと似たネズミを使用人にするだなんてこと!!」


娘2「そうですよ。お母様!!こんな汚いネズミ2匹もこの家に住まわせては、この家が腐り果ててしまいますわ!!」


継母「いいですか2人とも。わたくしが決めたことです。2人ともわたくしが決めたことに口出しするのですか。それに。。。。」


と言って、継母は2人の娘にこそこそと何かを耳打ちしたようだった。


すると、2人の娘はにやりと笑い、急におとなしくなり、継母に懇願することは一切なくなったのだった。


そして、私は、掃除全般を任され、エラはというと、掃除を任されなくなった代わりに虐げられることが増えていった。でも、エラは、前より明るくなった気がした。なぜ、そんなに虐げられることが増えても、私を責めないのかエラに聞いてみたことがある。


「ねぇ。エラ。エラは、私がこの家に住むようになってから、お姉さんたちに意地悪されることが増えたじゃない?それなのになんで、私を責めないの??」


「え??私が、このお屋敷で暮らし始めてから今が一番楽しい。りうが居てくれる。今は、それが私が楽しいと思える一番の理由だよ。」


そういって、エラは今まで見た中での一番の笑顔を咲かせた。困ったように笑う癖は相変わらずだったけど。


私は、自分がこの世界に来たせいで、エラを傷つけてしまっているのかもしれないと思っていた。そんな私に、エラは、笑顔を向けたのである。私は、どうかこのままエラがずっと笑顔でいられるように、とそう願わずにはいられなかった。そして私は、エラと一緒になって、丸まって寝たり、エラと一緒に話をしたりした。私の寝床は「あなたの寝室は、シンデレラと一緒のところでいいわね。」と継母に言われ、エラと一緒の部屋になった。そう、あのぼろぼろの屋根裏部屋だ。


私は、このお屋敷の使用人になったからというものの、朝から晩まで働き詰めでぐったりと疲れて、家事が終わったらすぐに寝てしまっていた。そんなある夜、私は、なぜかなかなか眠りにつけなかった。エラは、隣で寝ている。そして、ボーンと0時の鐘が鳴り響いた。すると、この世界で初めて夜を越した日のようにエラが突如として、起き上った。私は、あれは夢じゃなかったんだと恐怖で目をつむり眠ったふりをした。


そして、彼女がまた屋根裏部屋にある小さな窓を開け、白い鳥たちがそこに留まった。白い鳥1「エル様。エル様。」


「久しぶりね。この娘(こ)が花壇の水やりを任されたおかげで、エラと会えることが少なくなってしまったわね。あなたたちは元気にしていたかしら?」


白い鳥2「はい。僕らは元気にしていましたよ。」


白い鳥1「エル様はいつも通りで何よりでございます。そして、エル様。あと少しの辛抱でございますよ。」


「そうね。もう少しだわ。もう少しであの舞踏会が始まって。。。。」


そう彼女は言って、不気味にクスクスと笑い始めた。

私は、動揺してしまいカサッと布団のこする音を立ててしまった。


すると、


白い鳥2「エル様。あの娘。起きているやもしれません。」


といった。


そして、彼女は私にこう言った。


「あなた。起きているの?」


私はそっと目を開けた。


「お、お、起きています」


私は、彼女がよほど怖かったのか、どもりつつ敬語になってしまった。そして、私は、ベットから足を起き上り、ベットから足を下ろした。


「そう。あなた、名前は?」


「りうです」


「りう。。。。ね」


「私とこの姿で会うのは初めてね。私はエルよ。よろしく。」


「こ、この姿ということは、あなたはエラではないの?」


「そうよ。私はエラの持つ2つ目の顔よ。そうね。。。。。何と言ったらいいかしら。あなたの世界で言うと2重人格っていうのかしらね。」


………………………………………


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る