第29話 ひとときの休み

「ふぅ。やっとあいつを退けれた。」


 ガキンさんがそう言って、地面に勢いよく座る。


「つ、疲れた…。」


 キズ―さんもそれにつられる様に、地面に座る。彼女が出していた魔法人形は、いつの間にかいなくなっていた。

 私も彼らにつられて、地面に座った。

 まぁ、疲れはしたけど、人間の形崩してまで休むには、森は危険すぎるし。ちょっと真似だけしてよう。っとなった。


「『喧嘩両成敗!! お主らだけ、お咎め無しと思ったら、大間違いじゃぞ!!』」


 急にエキドナさんが近づいてきて、私達の頭を、自分の尻尾で叩いた。


「いった!! 何しやがるんだ!このクソ蛇母野郎!! 加減しろ!!」


 ガキンさんがそう言って、自身の頭をおさえる。

 キズ―さんも同じようにしつつ、目に涙を浮かべていた。

 結構痛かったんだろうなぁ。まぁ、あまりにも柔らかい体の私には、打撃は効かないから、どれぐらいの痛さだったのか分からないんだけど。


「『何言っとるんじゃ。これでも十二分に手加減しておるんじゃぞ。』」


 エキドナさんが腰に手を当てて、そう言った。

 確かに、ハートさんの吹っ飛び方を見ると、彼女が本気で私達を殴れば、私達は地面に埋まっていただろう。

 そんなことを思いながら、私は2人に『痛いのヒー痛いの飛んでいけリング』をかける。


「『む?お主、回復の魔法を使えるようになったのか。偉いぞぉ。優しい証拠じゃ。撫でてやろう。よぉしよし。』」


 突然、エキドナさんが私の方に近づいて頭を撫でてきた。


 ──────────


 エキドナさんがひたすら私を撫で、満足したのか、真剣な眼差しで、私達を見た。


「『さて、もう夜になってしまうな。妾が、お主らの村まで送ってってやろう。』」


 そうして、私達はエキドナさんと一緒に帰り道を歩いて行った。

 エキドナさんは、リアカーを持ってこようとしていたが、ガキンさんとキズ―さんが、それを拒否し、歩いて帰ることになった。


 ──────────


「そういや、お前。全世界の母を名乗るぐらいだから、この世界の事なら、何でも知ってんのか?」


 突然、ガキンさんが、エキドナさんに向かって言った。

 彼女は答える。


「『何でもは知らんぞ。全知全能ではないからな。じゃが、可愛い我が子の質問じゃ。なにかあれば、聞くぞ?』」


 ガキンさんはさらに質問する。


「俺達、ある人物を探していてさ…。。」


 そうして、彼はスペードさんが話していた、『赤い髪のピエロ』の話をした。


 ──────────


「『なるほどなぁ。悪魔になった赤い髪のピエロか。確かに、そんな奴を昔見たことはあるが。今はどこにいるか、分からないのじゃ。申し訳ないの。』」


 エキドナさんのその言葉に、私達は落胆しつつも、村へと帰って行ったのだった。

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