スライムさんの生存戦略 〜共闘編〜
HAKU
第1話 ―――共闘したい
私は、立ち上がり、心の中に語りかけてきた声に、答える。
「私は、人間達と共闘します。」
よくよく考えたら、こうなってしまったのは、あの緑の少女が嘘を言ったことから、始まった。
今、思い返せば、あの子は普通の人間と違っていた。あの子の周りのマナは、無理矢理何かに押されていたように見えた。
本来、体内にマナを持たない人間の周りだけに、マナがくっついて、人間の形を作るのはよくある現象だ。目の悪いスライムが、正確に人間の形を把握する術としても利用するぐらいだ。
ただ、あの子の周りのマナは、あの子がどれだけ動こうと、逆に動かなかろうと、一定の距離を保っていた。まるで何かに押さえつけられたかのように。
私が、戦うべきは、あの人間では何かだ。
私が、村から出る。するとすぐに、鳥の声がした。
私が空を見ると、普段夜しか活動しないはずの、ナイトバード3羽が、私の両肩と頭に止まる。
右肩に乗ったナイトバードは、私の方を見て、歌を歌うように鳴く。左肩の子は私に頭を擦り付ける。頭の上の子は、座り込み寝てしまう。
ナイトバードは、夜の魔物の為、怖がられる事も多いが、彼らの特技は、動物を癒す魔法を使えること。
本来は怪我した時に発揮するのだが、どうやら傷ついた私の心を、癒そうとしているのだろうか。頭の上の子以外は。
私が、森を歩いていると、3人の人間の男と出会う。
「おいおい、奇抜な格好した女がいるぜ。」
剣を持った男が、私の前に立つ。
「女ァ。お前、ここら辺にスライムの村が、あるらしいんだが、知らねぇか?」
「そこに行って何をするんですか?」
「お前、知らねぇの?今、『ヒューマノン』にスライムの素材、コアを渡せば、大金が手に入るんだぜ。だから、狩りに行くんだよ。」
男の言葉に、私は手を広げる。
「いけません!そんな事、させません!!」
私の言葉に、男の顔が怒りに染まる。
「ああ!? んだてめぇ、俺の邪魔すんのか!!」
男が剣を振り上げた。
瞬間、私の上で寝ていたナイトバードが、男を睨む。そして、私の上から飛ぶと、突風を起こし、男を吹き飛ばす。
「な、なんだあの鳥…」
狩人と魔法使いが、悲鳴をあげて飛んで行った男を見て後ずさる。
風を起こしたナイトバードは、狩人と魔法使いを追いかけ、吹き飛ばす。
その後、満足したのかその子は、私の頭に戻ってきて再び眠ってしまった。
私は、急いで『ヒューマノン』に向かった。
このままでは、スライム狩りは終わらない。まずは、素材の売買を辞めさせなければ。
私は、新たな道に足を進める。
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