コイバナ

水島あおい

第1章 歌姫への道

第1話

「西野さんの事、入学した時からずっと見てたんだ。俺と付き合ってくれないかな」

入学してから屋上に呼び出されたのは

これで何度目だろう。

優衣はそう思いながら、その男子生徒を見ていた。

「ごめんなさい。私、他に好きな人がいるの」

優衣はそう言って教室へ戻った。

嘘である。

優衣は全くときめかない。

正直言って、恋と言うものがよく分からないのだ。

それよりも優衣には夢中になっている事があった。


「優衣ー!さっき香取君がね。ジッと私の事見てたのー!もうキュンキュンものだよ!」

友達の由希奈がそう言って優衣に抱きついて来た。

「良かったねー。由希奈」

由希奈だけではない。

友達の話題は7割が恋の話。

優衣は笑って付き合っているけど、実際にはそれがどんな気持ちなのか全く分からない。

「ねえ、優衣。香取君、私の事好きなのかなあ!」

「好きだよー。ずっと見てたんでしょ」

「きゃあ!どうしよう!」

由希奈は両手で頰を押さえていた。

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