第13話

優弦の趣味は料理である。

毎日、キチンとしたお弁当を持って来るので、クラスの誰も一人暮らしだとは思っていない。

この3人を除いては……

「いつもながら美味そうだな」

高岡俊哉はそう言うと、お弁当の玉子焼きを摘んだ。

玉子焼き、ミニカツ、野菜の煮物、

ほうれん草のお浸し、きんぴらゴボウが所狭しと詰められている。後はご飯の上に梅が一つ。

「うん、美味い」

俊哉は野球部でセンターをしている。

「ゆずー。俺はミニカツ貰う!俺のハンバーグと交換な!」

宮本佳樹がそう言ってミニカツを食べた。

「佳樹!この馬鹿者!ゆずはバイトがあるんだよ。活力源食べてどうする!」

三沢花音が後ろから佳樹の頭を叩いた。

「だからハンバーグやっただろうが!」

優弦は笑いながらハンバーグを食べている。

「ゆずのお弁当美味しいからオカズ取られてばっかなんだよねー」

昼休みは大抵、屋上にいる。

優弦が連んでいるのはこの3人だ。

それぞれに部活があるので、ホワイトロードには滅多に顔を出さない。

「私のミートボールあげるよ」

「じゃあ、遠慮なく頂き」

優弦は花音の弁当箱から、ミートボールを取った。

花音のポニーテールが風に揺れると、仄かにフローラルの香りが漂った。

佳樹はそれを気にしている。

優弦はそう感じていたが、何も言わなかった。

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