第2話
外は雨が降っていた。
静かな店内で、コーヒーカップの温もりだけが妙に優しく感じられる。
環奈はゆっくりとコーヒーを飲んだ。
芳醇な香りとコクが胸の中まで広がって来る。
「美味しい…… 」
また涙が滲んで来る。
高瀬環奈は制服姿のままその席に座っていた。
そこは白い空間だった。
カウンターもテーブル席も全て真っ白である。
そのカウンターの中で桐野優弦がコーヒーを淹れていた。
環奈はぼんやりとその姿を見て、またコーヒーカップに視線を落とした。
「俺、好きな子がいるんだ…… 」
彼からの突然の別れだった。
彼が好きになったのは、私の友人だった。
また環奈の瞳に涙が浮かんで来る。
いつの間にかコーヒーがなくなっている。
もう帰らなきゃいけないのに、席を立ちたくない。
もう少し此処にいたいな……
その時、優弦が環奈のカップにコーヒーを淹れた。
「え?あの…… 」
「これ、もう入れ替えないといけないんだ。飲んでくれると助かる」
環奈は驚いて優弦を見た。
「どうぞ、ごゆっくり…… 」
優弦は優しい笑顔を見せた。
そしてそのまま、カウンターへと戻って行っ
た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます