今日から悪党目指します!!!

清涼飲料水

第1話 憧れ

俺が現場に到着した時には、味方は全員地に伏していた。


「英雄が遅れてやってくるってのは案外本当かもな?随分と遅い登場じゃないか?」


そんな中、唯一人立っている敵はそう口を開いた。皮肉か…


「確かに、英雄はいつも味方が倒れてから現れる」


でも、


「でもな、遅れてきた英雄は必ず勝つんだよ!!!」


俺は自分を鼓舞するようにそんな言葉を吐き、目の前の敵に集中する。

だが、その集中は目の前の敵の言葉によって呆気なく崩された。


「めでたい頭だな。一人で勝てるわけないだろ」


は?一人?

あれ?なんで皆動かないんだ?

俺が来たのに…………誰も反応しない。


「昔、俺がまだガキの頃、学校に遅刻したら先生に怒られた。罰として反省文も書かされた。今でも覚えてるよ、怒られた日から反省文が嫌で遅刻しないようになったんだ。なあ、英雄?この社会じゃ遅刻した奴には罰があるんだぜ」


………罰?


「子供の時の遅刻は反省文で済むけどよ、お前はもう立派な大人だ。そして遅刻の相手は先生じゃなくて悪党だ。そりゃあ皆殺されるよなぁ?英雄さんよぉ」


皆殺される?


「いや………そんな。だって、高め合うって、また遊びに行こうって、告白だってされたんだ、まだまだ教えることがあるって、皆まだやりたいことがあるって言ってたのに………嘘なんだろ?皆実は生きてるんだろ?」


そうだ、皆生きてる


「皆生きていて隙を伺ってるんだろう?そうだよな、だってそうじゃなきゃ可笑しいもんな?皆死んでるなんて可笑しいもんな、皆昨日まで笑ってて、明日も全員で飯食おうって………?」


何だ?なにかの包み?

え?


「その女は、最後までお前のこと信じてたぜ」


次々と投げられる包み………


「その男はお前の事を嫌いながらも信頼してたよ」


皆、首あるのに…………


「その爺はお前の事を案じていたぜ」


………そんな馬鹿なことがある訳


「その女はお兄ちゃん…って泣きながら死んだよ」


プツ………

自分の中で何かが切れる音がした。


「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


俺の仲間を……………絶対に許さない。

俺は目の前の邪悪を殺すために剣を構え、地面を踏み抜く勢いで斬り掛かった。


「まぁ、全部嘘だけど」


は!?


「実際は何も言い残す事なく死んだよ、心臓を一突きされて呆気なく死んだ。4人とも死ぬ瞬間は絶望で声も出てなかった。人間らしい最後だったぜ。その首さ、上手く出来てるだろう、お前が来るの遅かったからさ、作ったんだ。本物は全員表情が絶望で統一されてたからさ、その首は表情を変えてみたんだ」


そんな………ッ!!!


「おいおい、戦闘中に隙を見せるなよ。呆気なく死んじまうぞ、ほら腕無くなった」


え?

あ、俺の腕。


「あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」







何やかんやあって主人公覚醒➝ラスボスを倒す➝新ヒロインと結婚

ハッピーエンドでアニメ最終回が終わった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「結局ラスボス負けちゃったね。お姉ちゃん」

「私の推しだったんだけどな〜」


お姉ちゃんっていつも主人公より悪役のほうを好きになるんだよね。

まだ小学生なのに変な性癖?だって変な人代表のお母さんが言ってた。


「ボクは主人公が勝ってうれしいよ。特に最後のシーンは感動したよ」


仲間の死を乗り越えて勝つってカッコよくない?


「分かってないな〜つるは。悪役はね、失うものが無いんだよ!!!」



「さっきのアニメでも主人公は仲間を皆殺されちゃったじゃん。でもラスボスは結局負けちゃったけど最後まで楽しそうだった。逆に主人公は最後以外辛そうだったでしょ?あと悪役って皆イケメンじゃん!!!」


確かに……


「お姉ちゃん頭いいね!!!」

「でしょでしょ。ってもう4時じゃん。そろそろ宿題しなきゃ」

「お姉ちゃんまだ宿題終わってないの?ボクはもう終わったよ」

「小6と小3じゃ量が違うの。つる、ご飯ができたら呼んでね」

「はーい」


お姉ちゃん部屋に戻っちゃった………まだまだ一緒に見たいアニメあったのに。


「つるー、今日のご飯餃子だから手伝ってー」


あ、お母さんだ。


「餃子!?すぐ行くよー」


母さんが作る餃子………早く1階にいかなきゃ。

テレビ番組は消してっと、後で悪役がかっこいいアニメでも見ようかな。




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