第39話 ポーション作りははジュース作りじゃないんだよ配信1

『皆さんこんにちは!! 【もふっとチャンネル】の拓哉です! そして俺の大切な家族の、ラビとププちゃんとブーちゃんとクーちゃん、そしてメンバーの晴翔です!! 今日も魔獣のための、癒しスローライフ配信、始めて行こうと思います!!』


“こんちは~”

“皆さんこんにちは!!”

“準備はバッチリです!”

“こんにちは”

“みんな今日も可愛い~!!”

“こっち見て~!!”

 

「今日は予定通り、ポーションについて配信していきますね」


“はい!!”

“準備オケ”

“飲み物お菓子もOKです!!”


 ホームページに今日の配信内容を書いていなかったから、今回の配信内容を変更したことを言わないで、配信を始められて良かったよ。

 本当の緊急配信なら別に良いんだけど、ただの内容変更だと、何で? とか、予定通りの配信が良かった、とか。やっぱり色々コメントがくるからさ。視聴者さん達に迷惑をかけるのはな。


 ただ、準備はOKとか、飲み物お菓子もOKとか。何の話しだろう? みんな配信を見る時は、好きなように見てもらって構わないんだけど。授業じゃないんだからさ、別にメモを取れとも言わないし。何て思っていた俺。コメントを読んで、すぐに原因が分かった。


“今日はどんなバトルだろうw”

“いやぁ、俺も楽しみで楽しみでwww”

“俺は観戦用に飲み物もお菓子も完璧準備したぜ!”

“おい、お前らw”

“www”

“今日はポーション配信だぞw”

“え? ポーションバトル配信では?”

“*注 ここはバトル専門チャンネルではございません”

“www”

“w”


 ……うちは魔獣専門、癒しスローライフ配信、【もふっとチャンネル】ですが? バトルなんかしませんが? いつバトルをしたかな? うん?


「え~、バトル? 何のことでしょうか? 今日はダンジョンに入るには不可欠の、ポーションについても配信ですよ」


“あ、シラを切ったw”

“そちらの可愛い子達が繰り広げているものですが?www”

“この前のみじかパンチバトル、可愛かったよなぁ、面白かったし”

“あっ、そう言えばバトル配信チャンネルじゃないじゃん、ドタバタ配信チャンネルじゃん!!”

“おっと、間違えるところだったぜ”

“みんなきちんと訂正するように”


 いやいや、バトルでもドタバタでもないから、癒しスローライフだから!! しかしそんなにみんな、ラビ達のドタバタが好きなのかね。今度ドタバタ回だけ集めた動画を出してみるか? 再生数1番になったりしてな、ハハハハッ! ……まさかな?


「では、さっそくポーションを作って行きましょう。まずポーションの種類ですが……」


 ポーションには色々な種類がある。体力の回復だったり、魔力の回復だったり。怪我を治すポーションや、防御力を上げるポーションに……。

 またそれぞれ、低レベルのポーションから最高級のポーションまでと、まぁ。それはそれは、沢山の種類があるわけだが。


 ダンジョンに持っていく中で大切なのは、体力と魔力の回復に、怪我を治すポーションだろう。この3つは必ず持って行った方が良い。


 もしも1人、ダンジョン内で怪我をして、動けなくなってしまったら? すぐに誰かが助けに来てくれれば良いが、たまたま側に誰も居ないかもしれないし。

 1日経てば、帰って来ないと協会の人達が捜査に来てくれるけど。それでもその間に、魔獣に襲われればそれで終わりだからな。


 そして怪我をなるべくしないために、しっかり戦えるよう、体力を魔力は常に万全の状態でいないとってことで。こちらのポーションもとても大切だ。少しでも不安があるのなら、戦闘が起こる前に飲んでおいた方が良い。


「まず最初に、俺達の配信を今日初めて見に来てくれた方や、ポーション作りを見るのは初めてだと言う方にお聞きします。ポーションを飲んだことはありますか?」


“私はまだダンジョンに入ったことないからなぁ”

“俺も”

“俺は飲んだことあるぜ”

“実際ダンジョンに入らないと、まぁ使わないからなぁ”

“こっち側で何か疲れることするとか、怪我したとかなら別だけどね”


「飲んだことのない方も多いみたいですね。では、ポーションを飲んだ事のある方にお聞きします。ポーションの味ってどうですか?」


“あれなぁ”

“まぁ、不味いこと不味いこと”

“よくあれだけ不味くできるよな”

“それでも最近は飲めるようになってきた方だよ”

“俺初めて飲んだ時、吹き出しちゃったよ”

“もったいな! あれ物によって超高いじゃん!”


「ですよねぇ、本当に不味いですよね」


“!?”

“かわいw”

“魔獣もやっぱりそう思うのかw”

“そんなになのか!? ようく分かったwww”

“それだと逆に余計苦しんでるように見えるw”

“ブーちゃんの足がwww”


 ん? 何だ? ……おい、また何かしてるのか? 俺はすぐに振り返る。と、そこには。おえぇ、おえぇ、と。口を押さえたり、首のあたりを押さえたりして、もがき苦しんでいるラビ達の姿が。

 ブーちゃんまでもが、ポーションを入れるための瓶を、あの短い足で押して、自分から遠ざけていた。


 クーちゃんはまだ飲んだことがないから、よく分かっていなかったけど。ラビ達の様子を見て、そっと瓶から離れていたよ。


「と、まぁ、視聴者さんの体験や、ラビ達が実演してくれたように、ポーションはかなり不味いです。俺も実際、飲まなくて良いなら飲みたくはないです」


 最後に飲んだ事のないクーちゃんまで揃って、おえぇぇぇ!! っとやった3匹と、もう届かない場所にあるのに、それでも瓶を蹴ろうとしているとブーちゃんに、コメント欄の視聴者さん達の笑いが、少しの間止まらなかった。




     *・゜゚・*:.。..。.:*・'.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・'*:.。. .。.:*・゜゚・*


お読みいただきありがとうございます。

こちらカクコンに向けて書いた作品です。

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