第35話 スキルなしでもまったりマッサージ配信2

「それではマッサージをする前に、基本何も用意しなくても良いのですが。魔獣の好きなリラックスできる、アロマオイルやお香を焚いてあげるのも良いでしょう。人と同じです。俺は一応ラビとププちゃんとブーちゃん、それぞれの好きな匂いを5つ程調べてあって、その時その時で使うものを変えています」


“匂いか”

“確かに人はアロマとかお香使うよな”

“それぞれ5つか”


 よく分からないブーちゃんの寝言により、バトルを始めたみんなのおかげで。少しの間配信がストップしていたけど、何とかマッサージ配信を再開させた俺は。今日はみんなをマッサージするから、みんなが好きなアロマオイルを使った。


「別に無理をして、5つも調べることはありませんよ。俺の場合は撮影があるので、一応多めに調べたという感じです。みなさんは3つくらいが良いかもしれません。今言った通り、その時その時で、使う物が変わってくると思うので」


“そうだようなぁ”

“気分もあるだろうしな”

“じゃあ3つか”


「好きな匂いを調べるには、魔獣のための匂いグッズを売っているお店や協会に、匂いのサンプルが用意してあるので、それを試してみてください。では、アロマオイルの準備ができたので、マッサージをしていきます。まずどれくらいの力を入れれば良いのかですが……」


 俺は力の入れ方、手の動かし方など、必要な事を順番に説明しながら、ラビをマッサージしていく。そしてその時に質問があればすぐに答えて。


 ふぅ、ようやく真面目な配信になった。何でマッサージ配信で、マッサージを始めたばかりなのに、こんなに疲れているんだから。


 魔獣のマッサージについては、俺は1年ほどしっかりと習いに行っていた。もし自己流でマッサージをして、力加減やマッサージの仕方を間違い、魔獣達を傷つけてしまったら? そうならないように、習いに行ったんだ。


 後は少しずつ実践しながらラビ達本人に、どうすれば気持ちが良いか、どうすれば不快か。1つすつ確認をしていった。


 今回俺が教えているのは、基本中の基本、習い始めた人が最初に習う、絶対に失敗しないようなマッサージだ。だから魔獣を傷つけるこ事あるという注意と説明しながら、俺はマッサージを進めていく。


“メモしそこなった”

“うちもさっき、ルリちゃんの相手にしたらメモを取り損なっちゃったよ”

“さっき、どうやって支えてたっけ?”


 メモを取ってくれている視聴者さん達がいるらしい。そうだよな、料理とかもそうだけど、今日はマッサージだ。ラビ達が気持ちいままにしてあげたいから、あんまり止まらずにマッサージをしている。


「では、後で確認ができるよう、ホームページに今日やった、基本のマッサージの説明を載せておきますね。もしよければ今日の配信もアーカイブ配信しますので、その説明と一緒に確認してもらえればと思います」


“アーカイブ助かる”

“ありがとう”

“話すだけで、終わっちゃう配信もあるから、そういうのは助かるよね”

“俺達素人だもんな”

“これでうちの子にもやってあげられるぞ”


 こうしてマッサージが始まってからは、ラビ達は静かにしてくれて、問題なく配信ができた。……なんてことはなかった。いや、マッサージ自体は問題なくできたんだけど。


 今日は最初以外落ち着いていたコメント欄。だけど時々落ち着いているコメントとは違う物が。


“あ~あ、またw”

“気持ちが良いんだよw”

“格好が草”

“さっきのラビたんとププちゃんもそうだったよねw”

“気持ちい表情と格好っていうかw”

“ふんぞり返ってるw”

“あ~、そこそこ、もっとちゃんとマッサージするようにって?w”


 まったく、マッサージを受けるだけで笑いをとるなんて。俺がラビ達をマッサージした時のラビ達の姿に、みんなのが笑っていたんだよ。


 まずラビは、クッションにどかっと手足を広げて寝転び。というか、ふんぞり返って座っている姿に似ているっていうか、そんな格好をしていて。

 その後は大ききなため息を吐きながら、あ~、そこそこ、それが良いんだよなぁって感じの表情をしたんだ。


 次のププちゃん。俺は初めてププちゃんをマッサージした時、スライムにマッサージ? と初めは疑っていたけど。まさか本当にできるなんてと、とてもビックしたよ。

 そんなププちゃんだけど、ププちゃんは体の形をラビに似せて、同じようにクッションにふんぞり返って、同じような表情をした。


 クーちゃんはまだ、どんなマッサージが良いか確かめていないため、今回は不参加。次回マッサージ配信をした時は、クーちゃんもやってあげられたらと思う。


 そうして1番最後のブーちゃん。最後のブーちゃんで大爆笑になった。ラビ達と同じ、何故かふんぞり返った姿をしたブーちゃん。そうして大きなため息を吐けば。


“え? 社長?”

“貫禄がwww”

“社長は社長でも、下の連中に威張ってる方の社長なw”

“そうそう、貫禄が違うよw”

“ブーちゃん社長!! マッサージはいかがでしょうか!!”

“次の仕事のお時間ですって言ったら怒られそうw”

“ブーちゃん社長誕生だなw”


 はぁ、まったく。俺はまったり癒しマッサージをしたいだけなのに。こうして威張ってのけ反っている社長魔獣が誕生した。

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