第28話 チビ助の父親は軽かったし面倒な奴だった

 チビ助の衝撃の発言に、帰ろうとしていた俺達は、先にチビ助の話しを聞く事になった。パパに送ってもらったなんて聞けばな。


「じゃあなにか? お前はこことは違うもっと大きな洞窟に住んでいたが。その変なドラゴン? に襲われて、父親が危険だからとここに避難させた。それからずっと岩陰に隠れてたって?」


『うん! それでねぇ、なかなかパパがよんでくれなくて、さみしかったけど。でもタクパパやププちゃんたちがきてくれたの』


 チビ助の声は俺にしか聞こえないため、そのままを康伸叔父さんに伝える。


「なるほど。じゃあお前はこの洞窟で生まれたわけじゃないんだな? 別のダンジョンから来たっていうのは本当なんだな?」


『うん! ぼくはねぇ、ママがまちがえて、ぼくがはいってたたまごけったら、うまれたっていってた。ちょうどうまれるころだったって』


「けっ……、大事な卵じゃないのかよ」


『ねびけてて、パパがなにかしたとおもっちゃって、それでまちがえてけっちゃったって』


「どんな寝ぼけ方だよ」


「叔父さん、ダンジョンからダンジョンに、魔獣が移動する事なんてできるのか?」


「いや、俺も聞いた事はない。が、ダンジョンの事を理解したと言っても、今だに半分くらいしか調べられていないのが現状だからな。もしかしたらそういうことができる、ダンジョンがあるのかもしれんし。このチビ助の親のように、俺達のまだ知らない力を持っている魔獣達が、たくさんいる可能性もある」


「調査することが増えましたね」


 今答えたのは、康伸叔父さんの秘書の西川さんで。指示を終えたから、俺達の話しを聞きに来たんだ。


「どうしたもんか。チビ助の言う通りなら、他にも魔獣がここへくる可能性があるって事だからな。やはりもう少し現状が分かるまで、ここは封鎖するしかねぇか。他のダンジョンもな」


「そうですね」


「が、あまり長い時間の封鎖は、不審を招くだろうからな。こんな、魔獣が移動するなんて発表できるかよ。きちんと分かるまではな。不安を煽って、また面倒な連中が騒ぎ出しかねん」


 世界中にはダンジョンのことをよく思っていない人達もいるから。その人達が騒ぎを起こすための材料になるような事や、人々が不安になるような事を、あんまり発表できないんだよ。


 少しに間会話が止まる。そういえばと、丁度会話も途切れたし、俺はある事についてチビ助に聞いてみる事にした。


「それよりお前、家族がいるならどうして俺達と家族になったんだ? お前のパパは、その変なドラゴンを倒したら、お前をパパの元へ戻すって言ってたんだろう? ……まさか」


『あっ、パパねぇ、へんなドラゴンやっつけたって、さっきれんらくきた! それでぼくがかぞくになったから、タクパパのところにいていい? ってきいたら、いたいだけいていいって』


「はっ!? お前いつパパと話したんだ!?」


 何だってチビ助はこうも、爆弾発言が多いんだよ。てか、本当にいつ父親と話したんだ!? しかも俺達と家族になったなんて言って。

 俺の息子と勝手に契約しやがってって。父親はお前を移動させるような能力を持っているんだろう? 自分も移動ができて、今ここに来られたら? もしも攻撃でもされたらどうするんだよ!?


 と、俺がチビ助に言うと。どうやらそう簡単に、父親は移動はできないらしい。チビ助のような小さな魔獣なら、送ることも戻すことも簡単にできるが。父親ほど大きな存在になると、それだけ力を使うことになり、そうすると普段の力から半減すると。


 そしてもしそんな時に、また変なドラゴンや、他の魔獣が襲われれば、いくら強い父親でも簡単には対処できないからと。自分は絶対に移動はしないようだ。チビ助に何かあれば別だが。


 それと連絡については、毎回きちんと連絡できるわけじゃないらしい。できたりできなかったり、3回に2回はできるそうだ。それで今まで何回か連絡を取っていたと。


「ちゃんとそう言うことは俺に言ってくれ。本当にパパが怒っていたらどうするんだよ。……って、お前さっき、居たいだけ居て良いって言われたって言ってたか?」


『うん!! パパがねぇ、いたければずっといていいって。でもパパがれんらくしてきたときは、ちゃんとおはなしすることっていってた!』


「本当か? パパが本当にそう言ったのか?」


『うん!! あっ!! ぼく、パパからタクパパに、おつたえあったのわすれてた! えっとねぇ、ぼくがかぞくになりたいっていったなら、ぼくはにんげんのほんしつ? っていうのがわかるドラゴンだから。ぼくがかぞくになりたいっておもったにんげんなら、おれももんだいはない。それからぁ、なんだっけ?』


 考えるチビ助。


『おれはリティーと。えっとリティーはママだよ。リティーと久しぶりに、しんこんきぶんをあじわいたい? から、むすこのことはまかせる!! いやぁ、ほんとうひさしぶりに、いちゃいちゃできそうだ、ガハハハハッ!! だって。ねぇ、しんこんってなぁに? パパはにんげんたちのことばだっていってたの』


「……」


「……」


「お前の父親、かるすっ!?」


 西川さんが叔父さんの腹に肘打ちした。まぁ、俺も叔父さんと同じことを思ったけど、父親が軽いってどうなんだよ。しかもイチャイチャしたいだなんて。


『ねぇ、しんこんってなぁに? いちゃいちゃは?』


 これ、俺が説明しないといけないのか? 新婚はまぁ、説明できるけど。イチャイチャは? 面倒なこと言いやがって。


 さっきまで重要な話しをしていたのに、これはこれで俺たちの間に微妙な空気が流れた。

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