第21話 ボロボロになった癒し空間といろいろな面倒ごと
「おい、そこの2人」
「!?」
「拓哉……?」
「そこに座れや」
「あ、あのな拓哉、俺は……」
「座れや」
「座りなさい」
「「はいっ!!」」
俺と川野さんの前に座る晴翔と沼田さん。
「川野さん、すみません。先に魔獣達の様子を見てきます」
「ええ、すぐに行ってあげてください。私はこの馬鹿な2人を見張っていますから」
すぐに俺は、魔獣達が集められている場所へと移動した。
「加藤さん! みんなの様子は!?」
「ああ、俺達が見た限りは大丈夫だとは思ったんだが、俺達じゃあ完璧までにはな。ラビが診てくれて、大人達は大丈夫だったが、やはり子魔獣達が怖がっているみたいだ」
横を見ると、ラビとププちゃん、それから子魔獣達が一緒にいて、子魔獣達はラビ達にピッタリとくっ付いていた。ラビ達が怖がっている子魔獣達を、しっかりと面倒見てくれていたようだ。
そうしてブーちゃんといえば、しっかりと立ち上がり、あの今正座をしている2人を静かに威嚇して、やはり子魔獣達を守ってくれていた。いつも寝てばっかりのブーちゃんだけど、いざという時はみんなを守ろうとしてくれる、とっても優しいブーちゃんだ。
「みんな、もう大丈夫だからな。あの馬鹿2人は止めたから、怖いことはもう起こらないぞ。今からリラックスできる魔法をかけるよ。全員そのままじっとしていてくれ」
俺はそっと子魔獣達に近づき、子魔獣達に魔法をかけた。『リフレッシュ』という魔法だ。その名の通り、くつろぎ、安らぎ、リラックスなどの、心を休めることができる魔法だ。
この魔法は最初から与えられたものではなく、俺の『魔獣専用パーフェクトヒーリング』が判明した時に、新しく得たスキルで。これも何気に、世界で俺だけが使えるスキルだ。
後でスキルを得られるのは珍しいからな。『魔獣専用パーフェクトヒーリング』と一緒に、魔獣を安心させられるスキルを貰えてラッキーだったよ。今も役に立ったし。
俺が魔法を使うと、子魔獣達の怖がっていた表情が消えて震えも止まった。よし、もう大丈夫そうだな。
「じゃあ、大人魔獣の方へ行っていてくれるか。それからラビ、ププちゃん、ブーちゃん。大人魔獣達の中には、さっきの出来事を楽しんでいる奴もいるだろうから、子魔獣達のためにも喜んで騒ぐなって言っておいてくれ」
『きゅい!!』
『ぷぷ~!!』
『にょおぉぉぉ!!』
ラビ達が任せろと返事をして、子魔獣達を連れ、他の魔獣達が集められている所へ移動して行く。
さて、俺はあっちだ。正座をしている晴翔と沼田さんを見る。2人には川野さんの説教が始まっていた。すぐに俺も合流する。
「あなた達は、自分が何をしたか分かっているのですか? いや、どうなるか分からないから、こんなことをしたのでしょうが。ここは拓哉さんが魔獣達を癒す場所なのですよ。それをまずそこの馬鹿は、破壊するは怖がらせるは。そして晴翔さんは、まぁ、これはタイミングだったかもそれませんが、魔獣達を引かせて、そにせいで魔獣達が避難するのが遅れそうになるは」
「いや、これはな。久しぶりの休みだったし、拓哉達がいるって聞いたもんだから、奇襲をかけてたるんでないか確かめようと……」
「分かっているんですか!?」
川野さんの雷魔法が、沼田さんの前に落ちる。
「す、すまん」
「……すみませんでした」
ここで何が起こったのか? それは俺が魔獣達全員の治療が終わらせてすぐだった。治療終わりで、ちょっと晴翔から目を離した隙に、晴翔が魔獣達の方へ行ってしまって。晴翔が寄ったのは少しだったが、それでも晴翔に引いていた魔獣達。俺はすぐに晴翔を戻そうとした。
が、この瞬間、この部屋のドアが爆発音と共に破壊され、風魔法が俺を襲い。それからラビとププちゃんとブーちゃんには土魔法が。
ラビとププちゃんは華麗にその魔法を交わし、ブーちゃんはゆっくりの転がりだったはずなのに攻撃を交わして。
俺も攻撃を交わすと、すぐにドアの所に立っている人物を確認。それが沼田さんだった。実は俺達は沼田さんに指導を受けていて。そのおかげで他のプレイヤー達よりも、早くレベルをあげることができたんだけど。
ほら、色々な課を回って、職員の力が鈍っていないか確認しているって言ってただろう? それをこうして会った時には、俺達にもやってくるんだよ。
だから裕子さんに、魔獣達のために、こちらに来ないように言って欲しいって頼んでおいたんだけど。どうやら別ルートから来たらしく、考えなしに襲ってきたようだ。
そうして攻撃を続けた沼田さん。ラビ達は沼田さんの事をよく知っているから。俺が相手をしているうちに、魔獣達を非難させてくれた。が、晴翔に引いていた魔獣達が逃げ遅れそうになって、攻撃で舞い上がった土が魔獣達に思い切りかかってしまい。
そこで活躍ブーちゃんだ。大きな声で鳴いて、みんなを正気に戻すと、全員で部屋の隅に避難。それからラビとププちゃんは子魔獣達を守って安心させてくれて、ブーちゃんは攻撃がみんなの方にこないよう、しっかりと見張ってくれたんだ。
それを確認した俺は、晴翔と一緒に沼田さんに攻撃、川野さんも一緒に攻撃してくれて、沼田さんを止めた。
が、沼田さんの攻撃で、俺の癒しの場はボロボロに。魔獣達は面白がっている魔獣達以外、せっかくのゆっくり時間が台無しに。晴翔も、避難はできたけど、それでも危険に晒したから。部屋の中が落ち着いたところで、俺は晴翔と沼田さんを正座させたんだ。
「ここは拓哉さんの、魔獣達を癒す空間です!! あなた方がそれを壊すことは許されません!! 魔獣達もせっかくの安らぎ時間を台無しにされたのです!! どうしてあなた方は、余計なことしかできないんですか!! と、先ずは魔獣達に謝ってきなさい!!」
川野さんは怒ると怖いからな。サッと立ち上がった2人は、すぐに魔獣達の所へ行き、魔獣達が許すまで、そして川野さんが良いと言うまで、謝り続けた。
そしてそれが終われば、また川野さんの説教が続き。俺も怒っていたが、川野さんが全てにおいて怒ってくれていたので、そのまま川野さんにお任せすることにした。
そうして説教が終わると、協会の人達を呼んで協議。その結果、この場所は全て沼田さんに修繕させることに決まった。費用も全て沼田さん請求だ。晴翔は壊してはいないけど、魔獣達の非難が遅れたことについて、少しだけ修繕を手伝うことに。
まったく、魔獣達の癒しを何だと思っているんだか。これからが沼田さんの予定を把握しておいた方が良いかもしれない。ついでに晴翔には、もう少し自重してもらわないと。
魔獣達を家族の返すため、俺はまだ叱られている沼田さんの横を魔獣達と通ろうとする。と、叱られている沼田さんが、川野さんを止めて俺達に話しかけてきた。
「沼田さん、聞いている……」
「まぁ、待て川野。俺はこれを伝えに来たんだからよ。拓哉、晴翔、一応伝えておこうと思ってな。修也達がオジットギルドに入った。何か企んでいる可能性がある。一応気をつけておけよ」
「あいつらが?」
「オジットギルドに入ったのかよ。はぁ、面倒な」
「分かりました。情報ありがとうございます」
「おお、それと今度お前の家に、ゆっくり遊びに行かせてもらうからよ。その時にまた話そう」
「……それでは」
「おい! 俺は遊びに行くからな!」
面倒ごとばかりだ。
*・゜゚・*:.。..。.:*・'.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・'*:.。. .。.:*・゜゚・*
お読みいただきありがとうございます。ありぽんです。
こちらカクコンに向けて書いた作品です。
初めての現代ファンタジー、初めての配信の物語でドキドキですが、
皆様に楽しんでいただけるよう頑張りますので
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