第15話 ププちゃんのごめんなさいとブーちゃんのおにいちゃん

「ププちゃん、これやったのププちゃんだろ?」


『ぷぷ~』


『誤魔化してもだめだぞ。俺は2階から見ていたんだから。ププちゃんが魔法を使ったのも、鉢植えに当てたのも見てたんだよ』


『ぷぷぷ~』


 知らな~い。そう答えているだろうププちゃん。いやいやいや、完璧に見ていたんだからな。逃げられないぞ? なんならブーちゃんだって見ていたんだから。


 俺は今庭に出て、ププちゃんに事情聴取をしている。そう花は植ってはいなかったけど、けっこう大きめの鉢植えを割ったことについて聞いているんだ。


 俺が魔獣達のご飯やお菓子を作る時に使う薬草があるんだけど、それを俺は自らでダンジョンに入り採取してくる。その時の葉っぱの成長具合によって同じ薬草でも、毎回採取するタイミングが違うんだよ。

 もちろん協会にも他のお店にも売っているけれど。これがちょっとの違いで、料理の出来上がりが変わって。同じ料理なのに魔獣達が食べなくなることも。


 そのため個別で注文を受けた時は、その魔獣に合わせて俺自らダンジョンに入り、薬草を取ってくる。


 それでその薬草をカラカラに乾かそうと、俺は2階のベランダで薬草を干す作業をしていたんだ。日光浴をするブーちゃんと一緒に。ラビは父さんと映画鑑賞をしていた。アクション映画が好きらしく、映画鑑賞が大好きな父さんが映画を見る時は、いつも一緒に見ているんだ。


 と、それは良いとして。その薬草を全て並び終えるかという時に庭を見ると、少し前に庭に出てきて土いじりをしていたププちゃんが、今度は水魔法で遊び出して。

 まぁその水魔法が、見事に鉢植えにヒットした。綺麗に貫通した後に、貫通した所からヒビが入り、鉢植えは見事壊れることに。母さんが大切にしていた鉢植えがだ。


「ププちゃん」


『ぷ~、ぷ~』


 あくまでもシラを切るププちゃん。


「ブーちゃんも見たって言ったろう? なぁ、ブーちゃん?」


『みにょおぉぉぉ~』


「おい……」


 寝ていたからしないって? そんなわけないだろう。植木鉢が割れた時、ブーちゃんはベランダにいたトカゲを見つけて、それを目で追いかけて、自分のおやつにしようと狙っていたんだから。それでその時、ちょうど下を向いていただろう? まったく、魔獣同士で口裏を合わせやがって。


「はぁ、ププちゃん、この鉢植えは母さんが気に入っている鉢植えなんだぞ。きっと帰ってきてこれを見たら、凄く怒るだろうなぁ」

 

『ぷぷ?』


「どう見ても晴れているのに、少し水色ぽい水で地面が濡れていているんだ。だから誰がこの水を使ったかすぐに分かるし。その水の上には、割れている鉢植えだ。これだけで誰がこの鉢植えを壊したか、母さんはすぐに気づくぞ? 父さん同様Aランクプレイヤーの母さんなんだから」


『ぷぷ……』


「それでもし、自分はやっていないと嘘をついてみろ。母さんが怒ると、とっても怖いのは知っているだろう? きっと凄く怒られた後、当分おやつは食べちゃダメって言われるだろうな」


『ぷぷ!? ぷぷぷ!! ぷぷ~!?』


 今のはとっても怒られる!? バレてお菓子なし!? って言ったんだろうな。


「ああ、確実にお菓子はなしだ」


『ぷぷ~!?』


 大変、大変!? と俺の周りを回った後、壊した植木鉢の所へ行くププちゃん。俺はブーちゃんにも言ってやる。


「ブーちゃん、ブーちゃんも魔獣事じゃないぞ。ププちゃんと同じってことだ。家族を守るのは大切なことだが、でも守る理由で変わってくる。もしもダメなことで嘘をついたら、ププちゃんと同じってことで、お前も母さんにとっても怒られるぞ」


『にょお?』


「そうだな、お前もお菓子がなしになるだろうな」


『ぬにょお!?』


 お菓子なしが効いたらしい。新しい技ゴロゴロ転がりで、慌てているププちゃんに所に行くブーちゃん。いや、ププちゃんの所に行こうとして。途中、体型のせいで結局転がれず、俺に押せと言ってきた。


 ちなみに、ゴロゴロ転がりとは、その名の通りゴロゴロ転がりながら進む技だ。つい最近やり始めて、ちゃんと転がれたのは1回のみの、ブーちゃんの新技である。

 

 そうして俺に転がしてもらって進んだブーちゃん。ププちゃんの隣に座ると、ププちゃんに話し始めて。どうも白状しろと言っているらしい。お菓子のためにと。


『ぷぷ……』


『にょにゃあぁぁぁ』


『……ププ?』


『にょおぉぉぉ!!』


 今のは、ププちゃんが『ぼくごめんなさい』で、ブーちゃんが『そうだ』な。それで次は、ププちゃんが、『ごめんなさいの時一緒にいてくれる』で、ブーちゃんが『もちろん居る!!』って感じかな。


 こうして罪を認めたププちゃんは、買い物から帰ってきた母さんに、俺が通訳しながら全てを話し謝った。


 母さんはお気に入りだった事もあって、最初は怒ったものの。それでも正直に話したププちゃんに長くは怒らず、お菓子もなしにならなかった。


 そしてブーちゃんだけど。ブーちゃんは約束通り、ププちゃんが怒られている時は、しっかりとププちゃんの隣に座り、倒れそになって俺に支えられながら、最後までププちゃんと一緒にいてくれた。さすが1番お兄ちゃんのブーちゃんだ。


 まぁ、お菓子のことがあったからってのもあるだろうけど。最後まで一緒にいてくれて、ププちゃんは安心だっただろうな。


「はぁ、また買いに行かなくちゃ。でも、ちゃんと謝ってくれたから、私もこれ以上怒らないわよ。それよりも拓哉」


「ん~?」


「久しぶりにププちゃんをダンジョンへ連れて行ってあげたら? きっと思い切り水魔法を使いたいのよ。畑や庭で使ってくれているけど、ダンジョンの方また別でしょう?」


「確かに、1ヶ月行ってなかったな。じゃあ素材採取もかねて行ってくるよ」


 ププはダンジョンが大好きだ。でもダンジョンで生まれたからって事じゃない。ダンジョンでやる、ある事が好きなんだよ。あれはププちゃんにとっての楽しみだからな。魔獣が充実した生活を送る、とても大切な事だ。


「よし、じゃあ晴翔に連絡して……」


 夜、ププちゃんにダンジョンに行くことを話せば、植木鉢でしょんぼりしていたププちゃんは元気なププちゃんに復活。

 そしてダンジョンに行くという事で、ププちゃんのために頑張ったブーちゃんは、守り疲れのままダンジョンには行きたくないと、俺に癒し魔法を要求してくるのだった。




     *・゜゚・*:.。..。.:*・'.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・'*:.。. .。.:*・゜゚・*


お読みいただきありがとうございます。ありぽんです。

こちらカクコンに向けて書いた作品です。

初めて配信の物語を書いているので、勉強しながらのところもありますが

皆様に楽しんでいただけるよう頑張りますので


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