第8話 一日の終わり

 休憩を終え、お待ちかねの夕飯タイム!

 マジジャンを開き、出前の項目から今日の夕飯を選ぶ。

 和食から洋食に中華まで、一通りなんでもあり迷う。

 値段設定も良心的というか、むしろ安いくらい。


 汁物と漬物が付いたかつ丼セットが五百ウィッチ。サラダを付けると追加で百ウィッチ。

 日替わりの焼き魚定食も五百ウィッチ。今日は、鮭みたいだ。

 ハンバーグ定食も五百ウィッチ。

 中華は少し高くて単品が五百ウィッチ。セットにすると二百五十ウィッチ追加のようだ。ライスとスープにサラダなんかが付いてくる。

 どれもだいたいこんな感じ。

 飲み物は、ソフトドリンクだと一律百ウィッチ。

 酒類は、ピンキリかな。基本飲まないけど、色々種類があるのは見てて楽しい。


 少し悩んだけど、日替わりの焼き魚定食を選択。

 これだと小鉢で煮物野菜が付いてくるし、肉は昼前にトリスさんの肉串食べたので今日はこっち。

 購入ボタンを押すと「にゃあにゃあ」という鳴き声が聞こえたと思ったら、机の上に焼き魚定食が現れていた。

 実はどんな猫が来るか楽しみにしていたのだが、猫の声は効果音だったみたい。黒猫やケットシーなんかが運んで来れば、ファンタジー感があってテンションが上がったのだが残念。


 それはさておき、定食からは湯気がでているので温かいうちに食べることにする。

 まずは、汁物から。今日はみそ汁のようだ。温かくて、飲むとほっとする。ご飯も、鮭も煮物も全部美味しい。

 正直これを店で売ることが出来れば大儲け出来そうだが、持ち出し出来ないんだよな。


 あっという間に完食してしまった。

 手を合わせて「ごちそうさまでした」と呟く。

 そういえば、食器類の返却方法がわからない。

 マジジャンを開き出前のところをよく見てみると、注意書きがあった。

 流し台に置いておくと自動で回収してくれるシステムらしい。便利だ。

 木製のおぼんを持ち上げ、流し台へと運ぶ。

 これで夕飯は終了。


 次は、風呂。

 湯量と温度を設定すれば自動で準備出来るようなので、適当に選択してスタートボタンを押しておく。後は待つだけ。

 この時間を利用して洗濯すれば良さそうだけど、今日はまだいいかな。予備の制服もあるし。


 待ってる間にマジジャンを開き、キャッシュトレイの値段を調べておく。

 いくつか種類があるが、木製のシンプルな物でいいかな。千ウィッチ。

 現在の所持金だと少々痛い出費となるが、いつかは必要になるものなので購入。

 これで夕食代五百と、トレイ代千を引いて残りが二千二百五十ウィッチ。

 中学生のお小遣いのような数字を見て、ため息が出る。


 選んでいるうちに割と時間が経過していたようで、お風呂の準備が出来たことを知らせる音声が流れる。「イーッヒッヒッヒ」という老婆っぽい声。

 ちょっと怖いので、急いで停止を押しに行く。間隔をあけて何度か繰り返されたので、もしかすると止めるまで続くのだろうか。恐ろしい。

 なんでこんな声なのか考えてみると、風呂釜と魔女の釜をかけてるのかもしれないと思い至り、なんだかすごく疲れた気持ちになった。


 疲れを癒すためにも早く風呂に入ろうと準備を始める。

 クローゼットから下着を取り出し、ふと気付く。寝巻がない。

 もしかしたらと、一縷の望みを託して脱衣所の籠を覗くがここにあるのはタオル類のみ。籠の置かれた棚には、ご丁寧に注意書きがあり『室内のみ使用可能』と張り紙がされていた。


 諦めて下着とバスタオルのみを用意して入浴することに。

 とりあえず今日の寝巻きは、最初に着ていたパーカーとズボンで凌ぐことにした。

 あとでマジジャンで、寝巻きの値段を調べようと思いつつ浴室に入り、身体を洗う。

 ありがたいことに、石鹸やシャンプーなんかの基本的な物は揃っていて、問題なく使用できた。しかしこの辺りの備品も、なくなればマジジャンで買い足す必要があるのだろうと考えると、またしてもため息が出る。


 温度をぬるめに設定していたので、ゆっくりと湯に浸かり今日あったことを思い出す。

 起きたらこの部屋にいて、弁当代の残りである借金の返済額が七億ウィッチ。

 返済のために、与えられたスキルや環境を利用して、弁当屋を営業。

 トリスさんに出会って、葉っぱをもらって、昼頃には初めての客が来て、それから閉店前の子供か。

 初日ってこともあり、割と濃かった気がする。

 慣れてくれば今日の出来事は、なんてことない一日なのだろうな。


 長湯をしてしっかりと身体が温まってきたので、両腕を上げ一度背中を伸ばした後、湯船から出る。

 バスタオルで身体を拭いた後服を着て、脱衣所でドライヤーを使い髪を乾かし終わり時計を見ると、午後七時半。

 歯を磨き部屋に戻ると、ベッドが目に入る。

 ここで寝るとあまりにも早すぎると思い、少し笑ってしまった。大学に入ってからは、午後十一時前に寝る事なんてほとんどなかったから。


 さすがに少し時間がもったいない気がするので、ベッドに腰かけて調べものというかタブレット端末での機能を再調査。

 まずは忘れないうちに、寝巻きの値段をチェック。

 地味な上下のスウェットで千五百ウィッチから。室内で着るだけならこれでも十分だろう。問題は、所持金が少ないことくらい。

 さすがに今これを買う勇気はない。ということで保留。


 次に店舗のアプリを開く。

 今日一日やってみて少々使いづらい部分があったので、レイアウト変更をする。

 外側は、今の道に面したテイクアウト専門店みたいな形で問題はないが、内側が少し問題。厨房と販売スペースとの間仕切りが少し邪魔というか、形を変更したい。

 現在繋がってる部分がホットショーケースの部分くらいなので、その横部分も少し開けることにする。

 少々中が見えやすくなってしまうが、間仕切りのカウンター部分を少し高めに設定しておけば手元は見えないはず。よく見る温かいお弁当屋さんみたいな感じ。

 ついでで、販売スペース側にも手を洗う場所を設置しておいた。


 変更を加え、ボタンを押す。

「チリリン」という音が聞こえたので、店舗側を確認に行く。

 玄関でサンダルを履き、店舗内に入るとちゃんと設定どおりに間仕切りは変更されていた。手洗い場もしっかり出来てる。

 興味本位でタブレット端末を持ってきて、この場で変更してその様子を見ようとしたが、店舗側に人が居ると操作不可となる仕様で無理だった。 

 もしかするとレイアウト変更時に巻き込まれないようにと、安全対策なのかもしれない。

 そう考えると納得もできる。


 また部屋に戻り、少しマジジャンを見ていると欠伸が出てきた。

 別に営業時間を指定されているわけでもないので、多少寝坊しても問題ないのだろうが、少しでも多く売り上げないと元の世界には戻れない。ということで、少し早いが寝ることにする。時間は、午後九時過ぎ。


 起きた時に元の世界に戻ってれば良いのにと考えながら、枕元で照明の調整をして眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る