第21話 商団を救え(1)



「実は今、村に定期的に来る商団があるんだけど、彼らが今、途中で事故にあったらしい。」


「事故ですか?」


「うん。馬車の車輪が折れたとか。」


今日は妙に車輪に絡まれることが多い日だ。さっきは歯車だったのに、今度は馬車の車輪か。


「ところで、よりによってその位置が最近強盗がよく出没する地域で心配なんだ。


人手を送ってくれと急いで駆けつけてきたのが、ここのこの人だよ。


おい!呼吸しろよ、呼吸!急ぎすぎたな、おい。」


変更であるバレンブルク州でもかなり人里離れたコバフ村は、ほとんどの物資を自給自足していた。でも、だからといってすべてを作れるわけではなかった。


州都バレンブルク市から定期的に往復する商団がコバフのような辺ぴな村を回りながら、村の特産品と生活必需品を交換する役割をしていた。


彼らもそれがお金になるからやっていることだが、いずれにせよこのような商団はコバフ村にとって貴重な生命線だった。


「じゃあ、早く行きましょう!」


「私は村を空けられない…少年が代わりに行ってもいいかい?」


「はい、大丈夫です。」


わざと大げさに肩をすくめる私を見て、オルソンさんは苦笑いした。


「じゃあ、ホウジ少年。 一緒に行ってくれ。 あ!あそこに来るんだな。 おい!ヘンリー!シュミット!ダービ! ホウジ少年も一緒に連れて行って!」


ヘンリーとシュミット、そしてダービはそれぞれの馬に乗っていた。村で自分の馬を持っているのはこの3人しかないから選ばれたようだった。ダービは急いで自分の後ろに予備の簡易サドルを置いた。


「ホウジ少年はまだ乗馬を習っていないから、ダービと一緒に乗って行って。」


商団の人はヘンリーの馬に自分で上がった。私もオルソンに手伝ってもらってダービの馬に乗ることができた。


オルソンは私の手を握って、低い声で速く言った。


「万が一だよ。万が一の時は、少年の体を守ることを第一に…いや、それだけを考えて。 分かった?」


「はい, オルソンさん。」


「じゃあ、さっさと行ってきます。」


「気をつけてな、ヘンリー。あんたがしっかりリードしてくれよ。」


「おい、ホウジ。サドルしっかり掴めよ。」


ダービの言葉が終わり次第、馬は地面を蹴って走り出した。恐ろしい振動とともに鋭い風が頬を掠め始めた。


コバフ村で過ごしながら何回か馬に乗ったことはあった。 しかし、このように全力疾走の馬を経験したことはなかった。


「ウオオオオ!」


耳元には引き裂くのような風の音が鳴り響き、口の中では歯と歯が激しくぶつかり合う音が鳴り続き、私は気が気ではなかった。


そんな最中でもなんとか姿勢を低くしてサドルに付いているハンドルを力いっぱい握り締めた。


「ハ!ハ!ハイヤ!」


ダービは後ろにぶら下がっている私のことを考えて鞭打ちはしなかった。代わりに拍車をかけ、気合を入れて馬を励ました。


その度に馬は力強く走り、『ヒヒヒイン!』私は再び死に物狂いで馬にしがみついた。


どれだけ走っただろうか。


馬が蹴り上げた石に2,3回ほど脛を殴られ、口に入った土埃を数え切れないほど吐いた後、ようやくスピードが落ちるのを感じた。


「もうすぐ着きますよ! すぐそこで...... えっ!」


案内役をしていた商団の人が悲鳴を上げた。私は顔を殴り続ける風の中でやっと目を開けて前を見た。


私たちは低い丘の上を走っていて、丘の下の方には数台の荷馬車が丸く集まっているのが真っ先に目に入った。 そしてその周辺に人々が少なからずうろうろしていた。


あれ何してるんだ?


速度が落ちて風が静まった。その隙に、ゾクゾクする音が鼓膜を叩いてきた。


チャン!チャン!カァン!


「くそ、強盗だ!」


「襲われてる!」


荷馬車が丸く集まっているのは、荷と馬、そして人を強盗の群れから守るためのようだった。


丸く円陣を組んだ荷馬車を置いて、外側から襲いかかる強盗たちは中に向かって刃物を差してきた。それに対して、内側の人々も必死に抵抗していた。


強盗の数は二十人余り、商団の数も同じくらいだったが、商人と強盗の武力の差は明確だった。 商団にも一人や二人程かなりよく戦う人がいたが、あちこちに開いた穴を埋めるのに精一杯だった。


「た、助けて! 助けてくれ! 」


商団の人が切なく叫んだ。ヘンリーとシュミット、そしてダービはお互いを見てうなずいた。


「ホウジは?」


私に視線が集まった。


私はオルソンの言葉を思い出した。そして首を横に振った。 一人で安全なところでぼんやり見守るためにここまで来たわけではない。


私はうなずいた。


「さっさと助けに行きましょう!」


「よし!それでこそコバフの男だ!」


「はぁ!」


それぞれサドルに置いていた護身用の武器を手に取った。三頭の馬だちは丘を駆け下り始めた。


「おい、ホウジ! 馬の上で戦ったことある?」


ダービの叫び声が風に乗ってきた。 私も大声を張り上げた。


「ありません!」


「じゃあ、降ろしてやるから、自分で戦え! 馬の上にいると余計に眼立つんだ! オルソンも言ったけど、自分の体を守るのが先だ! 分かった?」


「はい!」


丘を下りた弾みで、私たちは恐ろしいスピードで荷馬車に向かって走り出した。


強盗たちも私たちを気づいたのか、馬車に対する攻撃が少し緩んでいた。 代わりに、その分の殺気が私たちに向けられるだろう。


ドンドンとする心臓の音がこめかみまで響いてきた。


もはや彼らと戦わなければならない。


「俺が合図したら飛べ!分かった? まだた!」


「はい!」


ダービの馬は、恐ろしく走ってきた勢いそのままに強盗たちを向けて駆け抜けた。


その勢いに避けられなかった慌てた強盗の一人が弾かれた。まるでトラックにぶつかれたらそうなるだろう。


ヘンリーとシュミットも同様だった。走ってきた加速をそのまま武器にした三頭の馬たちは一斉に頭を回した。


ダービが叫んだ。


「今だ! 降りろ!」

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