しゅらららば19/放課後デートとモジモジ
放課後にデートとはどうすればいいのか、体が勝手に動いてくれたら楽なのだが生憎とそうではなく。
駅前まで行って適当にブラついてみれば、隣を歩くリラはガッチガチに緊張している。
心なしかツインテールまでガチガチに硬くなっているような緊張っぷりであるが、興奮もしているのか鼻息荒く目も充血し赤くなっていて。
「なぁ大丈夫か? スタバとかマックで一度休憩するか?」
「大丈夫大丈夫! ボクは疲れてないし……そ、その、ちょっと二人で、行ってみたい所があるなーみたいな?」
「お前の方でデートプランがあるのは嬉しいが、ホントに大丈夫か? 手と足が一緒に出てるぞ???」
右足と右手が一緒に出ている上に、発条仕掛けの人形みたいに体を大きく左右に振って歩いているから見ていて危なっかしくて仕方が無い。
こういう時、保護欲を刺激される、可愛いなどと思うべきなのかもしれないが。
カケルとしては心配の方が勝ってしまう、もっというと悪い物を食べたのかと考えてしまい。
「――トイレ行くなら待つぞ? 遠慮せず出してこい」
「ドコの世界に初デートでトイレ勧めるアホが居るんだよっ! 初デートに緊張するリラ可愛いちゅっちゅっ、ってするべきでしょう!」
「ごめん、漏れそうかと思って」
「デリカシー行方不明!? ボクら初デートだよ!? 気遣いだとしても間接的に言ってよ直接的に言わないで!!」
「すまない、お花畑が近くになかったからさぁ」
「確かに無いけども! それ野グソ前提で言ってる口ぶりだよねぇ!? ボクのこと何だと思ってんだッッッ!」
「…………それでも、種族が違っても、リラを愛してくれるヒトはいるさ」
「暗にゴリラって言ってるよね!?」
うーん打てば響くと満足そうにしながら、カケルは彼女の緊張が解けていくのを感じていた。
ぷくーっと可愛らしく頬を膨らませて不機嫌さを意思表明するリラであったが、足取りは軽やかで。
となると彼としては、疑問がひとつ。
「この先って駅の反対側か? なんか遊ぶ所あったっけ。映画館は通り過ぎたし……ゲーセンもないよな。あ、もしかしてファンシーショップとかあんのか? 個人経営の小さめって感じの」
「あ、今日はそんな感じじゃなくて……」
「…………――――ッッッ!? そ、そういえば小さな花畑があって観光名所にしようとか話があった気がする!? ま、まさかお前……」
「誰がそこで野グソしに行くんだよ!? 野グソさせっぞテメェ!!」
「本当にすまない、俺にはそういう趣味ないから……」
「ボクにもねぇよ!!! 今日の目的地はそこじゃなくて――ううっ、良いから黙ってボクに着いてこい! パライソに連れてってやる!!」
「パライソ、天国ってことか。それは地味に楽しみだな!」
天国とは比喩表現だろう、だが自信満々に言った所を見ると期待してもいいかもしれないとカケルは頷いた。
駅の裏に隣接している家電量販店とファミレスを通り過ぎ、そこから先は西にオフィス街、東に住宅街という塩梅だ。
桜路莉羅という少女の実家が太く、そこに関わる施設があるかもしれないと彼は考えたが。
(桜路って、確か菓子メーカーのOUJIだったよな? つまり食品関係……いや、社員の福利厚生用の施設で良い感じのを招待してくれて…………うーん? 良い感じってどんなんだ???)
分からない、さっぱり思いつかない。
カケルはリラの考える初デートに相応しい場所とは、とクイズ気分であったが。
次の瞬間、目にした物に首をかしげたくなった、否、首を傾げるしかない状況である。
(ま、まぁ……ね?? 近道だから通ってるだけだよな? なんかご宿泊とか休憩とか書いてある看板がチラホラ見えてるけど……)
流石にいきなり、まさかそんな所に突撃なんて、と隣の彼女を見てみると。
足取りはしっかり、しかして俯いて真っ赤な耳が見えている。
(ははーん、流石のリラもこの通りを行くのは恥ずかしいって、そういうコトだよなハハハ……そうであってくれええええええ!!!)
止まるな、止まってくれるな、どうかそのまま通りすぎてくれとカケルが必死に祈る中。
リラの歩みは一歩一歩遅くなり、やがて、とある所で完全に停止して。
「…………カケル」
(パライソで止まったあああああああああああああああああ!? え、嘘っ、パライソってラブホあんのかよおおおおおおおおお!!! マジでパライソなのかよおおおおおおおおお!!!)
「ね、……行こう?」
(うっそだろお前なんでそこで俺の腕を掴む外れねぇよ連れ込まれると訴えたら勝てるんじゃね? じゃなくて貞操の危機ぃいいいいいいいいい! でも実は俺童貞じゃないって謎の確信があるから童貞……でも忘れてるから――じゃなくて!!)
「ねぇ゛ッッッ、行こう!!!」
「――おっまえさぁっっっ!! 何考えてんのいきなりラブホとか悪い男のするコトじゃねぇか初デートでするコトじゃねぇって!!!」
初デートはゲーセンとか映画館ではないのか、確かに己達は相手がどんな性格か、好きな物、嫌いな物などなど知り尽くしている親友同士であったから。
気持ちは分からなくもない、――と言いたいが。
「ちょっと説明が欲しいんだが??? こう、な? 俺やお前の部屋とかに行ってさ、そういう流れになったら……ってなら俺も納得するけども」
このままでは不味い、とカケルは必死な顔で説得を試みるのであった。
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