立食パーティー
その後も、テストは特に問題なくこなすことができた。
最後に筆記の試験があったのだが、アルテッタから習っていたおかげでだいたいを答えられた。
……合ってるかどうかは知らん。
冒険者生活で正直覚えていないものも多かった。平均くらいは取れたかもしれないが、上位とまではいかないだろう。
テストも終わり、最後に食堂に案内される。
様々な形のテーブルがいくつもならんでおり、その上に食事が用意されていた。最奥には演壇があり、そこに生徒がひとり立っている。
赤髪の男だった。生徒が揃ったことを確認したのか、男は笑みを浮かべ、口を開く。
「皆様、本日はテストの方お疲れ様でした。私は生徒会長のヨハン・アウクラールです」
アウクラール……皇帝の
「この後は立食でのパーティーになります。最初はグループでの食事になります。先輩が席まで案内してくれるので、一緒に食事を楽しんでください。その後は自由時間を設けますので気になる方や仲のいい方がいれば声をかけて、交流を深めてみましょう」
……正直面倒だな。
「自由時間で帰りたい場合は寮に案内しますので近くの先輩に話かけてください」
寮自体はすでに使っている。個室なため、荷物も整理し終えている。学園を出てさほど離れていない場所だ。
自由時間になったらさっさと帰るか。
「先輩たちはこのようにナンバープレートの代わりに赤いタグをつけています。困ったら声かけてくださいね」
近くを見渡してみると、何人か赤いタグをつけている人間がいた。なるほど、人数も多そうだな。
「それでは皆様、改めまして入学おめでとうございます。今日は楽しんでいってください」
笑顔で頭を下げると軽く拍手が起こる。それから先輩たちが生徒に声をかけ始めた。
とりあえず待っていれば良さそうだな。
「お、44番はキミだね」
生徒を数名引き連れた先輩に話しかけられる。
「はい」
「キミで最後かなー! じゃあ、行こう」
拳を振り上げて元気よく誘導し始める先輩。それについていく。同じグループにされた生徒をひとりひとり確認すると桃色の髪の女生徒がいた。
テーブルに案内される。トレーが人数分置かれている。トレーの上にはフォークとスプーン、大皿、コップがあった。トレーの前に立つように言われ、言う通りにする。
「それじゃあ最初自己紹介からしよう。名前と好きなことでいいかなー! 私は──」
先輩から自己紹介が始まり、呼ばれたナンバーから自己紹介をする。
どうせすぐ忘れるだろう。話半分で聞いておく。
「次44番」
オレの番になる。オレは明るい笑みを意識しながら声を出した。
「リオ・メイザースです。好きなことは魔法を使うことです」
あと戦いで相手を屈服させること。
「次! 50番」
隣に目を向ける。番号を言われてハッとしたような表情になる女生徒。背筋を正して戸惑いながらも口を開いた。
「ドール・リューエル、です。好きなことは……すいません、わかりません」
申し訳なさそうに頭を下げるドール。
「大丈夫だよ、自己紹介してくれてありがとう! それじゃあみんなご飯を食べよう。好きなのトングで取って食べようねー!」
先輩は明るくドールに言うと、食事をするように促す。
オレは適当に食事を取り、自分の皿に盛る。
他の生徒たちも笑顔で食事を始めるが、隣のドールは浮かない顔で食事を見つめるだけだった。
「──食べないのか?」
声をかけてみる。
ドールはハッとした顔でこちらを見た。目が合うが、すぐに気まずそうにそらされる。
「その……食欲なくて」
「とはいえ長いテストを終えた後だ。何かしら食べておいた方がいい」
「……そう、だよね」
返答はしつつ、ぼうっと眺めるだけのドール。
「嫌いなものは?」
「ない……と思う」
「トレーを借りてもいいか。適当に盛る」
「え……っと」
「嫌でなければ、だが」
「その……お願い、します」
トレーを受け取る。選択肢があるから迷うというのもあるだろう。食欲がないなら無闇に盛るわけにもいくまい。
食べやすそうなサラダとパンだな。ひとまずこれだけでいい。ハーブティーは味に癖がある。紅茶の方が無難だろう。
「とりあえず飲み物から始めてみたらどうだ? 食事を始めれば空腹を思い出すかもしれん」
「あ、ありがとう」
ドールはトレーを受け取り、自分の前に置く。そして紅茶を飲み始めた。
「冷たくておいしい」
ぼそりと呟き、サラダに手をつける。
どうやら食べれそうだった。
「ドールさんはグレイアームズ、使えるんだな」
「知ってるの……?」
ドールの視線がこちらに向く。
「まぁな。どこで教わったんだ」
「家庭教師の人から……」
家庭教師? 基礎を教えるだけでなく、マイナーな魔法を習得させる意図がわからないな。
「会ってみたいな、その家庭教師。魔法に詳しそうだ」
オレの言葉に、ドールは表情を暗くした。
「……その、私ね。ここに来る前、馬車の事故に遭ったの」
一音一音、絞り出すように語り始める。
「その時に、私以外の人死んじゃって……家庭教師の人も……」
「……それは失礼した。嫌なことを思い出させてすまない」
トレーを置き、体を向けて頭を下げる。
「あ、いや、こっちの事情だし……気にしないで」
慌てて両手を振るドール。
「その……リオくんは……魔法、好きなんだね」
ドールが戸惑いながらも、顔を覗き込むようにして聞いてくる。
「攻撃魔法がメインだがな」
「テストでも、凄かったもんね」
「ドールさんも魔法、得意ではないのか」
「私は……どうなんだろ。何となくで使ってるから……」
「あれは得意と言っていいと思うぞ」
「そうかな……? ありがとう」
ぎこち無く微笑まれる。
先程から明るい顔というのを一切見ない。事故の影響だろうか。
人の死に遭遇したのであれば、精神的な傷を負っていても無理もないだろう。
「困ったことがあれば言ってくれ。できる範囲で協力しよう」
「ありが、とう」
ドールは少し食欲が出てきたのか、食が進み出す。サラダを食べ終えてパンを持ち始めた。
「……私、お腹空いてたみたい」
「何事も始めてみないとわからないからな。食べられるようで何よりだ」
とりあえずこの場は大丈夫そうだな。
その後は先輩に話しかけられ、適当に他の生徒とも会話をして時間が過ぎていった。
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