虚空から呼び出す男の下で

ようび

第1話 よろしくお願いします!

ここは私の住む町にある、ある建物の鉄で出来た階段の前


私こと吉崎陽秋は未だに内定をもらえていない大学生!


よし!

と私は一歩踏み出した。


カン!


「ん?なんだ?」

階段の1段目に足を置いた瞬間に二階の扉が開き、そこから無精ひげの男性が出てきた。


====


「ふむ…吉崎よしざき陽秋ひあき…22で神崎かんのさき大学4年。今年3月卒業?」


「はい!」

建物内に入れられた私は突然始まった面接に動揺しながらそう答えた。


「…ん。そうか」

と無精ひげの男性は私が渡した履歴書を確認するように見ていた。


「正式な採用は4月だけど今日から研修大丈夫か?」


「へぇ?今日からですか?」

今日から?今は確かに2月だから予定は空いているし、寧ろ就職出来るなら喜んでやるつもりだ。


「そうだ。履歴書に迷宮ダンジョン探索者第二種の資格を持っているならいい」


確かに資格は持っている。だけど…


「えっ、ここは探偵事務所ですよね?」


「そうだぞ。迷宮に関する依頼もあるからな。資格があるなら尚のこといい」


と面接していると

チャリチャリ

と扉に付けられた開閉を示す鈴が鳴った。


「おっ!よかった…帰っていなくて…」

と綺麗な、背の高い男性が事務所に入ってきた。


「なんだ?ウチ。今は面談中だ」

と目の前の無精ひげの男性が言う。


「コクウさん。…お金貸して」

はい?


「…いくらだ?」

コクウと呼ばれた目の前の男性は言った。


「5万ぐらい…いや、50万ぐらい」

急に飛んだ!


「急に桁が上がったな。…ほい」

と机からお札を取り出し、数えて封筒に入れてウチという人に投げ渡した。


「ありがとう!絶対に返すから」

と言ってウチは出て行った。


「えっと…」


「…あぁ、あいつは羽智うち。ここで働いている。…そういえば俺の自己紹介もまだだったな。俺は國生こくう凱哉かいやだ。よろしく」


「あ、よろしくお願いします。…というか、さっきの人大丈夫ですか?本当にお金を返します?」


「羽智はちゃんと返すから問題ない」

そう言いながら國生さんはある扉の前に移動し


コンコン

「イージス、新人だ。パソコンあるか?」

と言うと扉がガチャと開き、無線タイプのヘッドフォンをした黒髪の女性がノートパソコンらしきものを持って出てきた。


「…はい。自分のものだと思って好きに使っていい。アプリも何もかも好きにダウンロード、インストールして。後、修理は私に言って。タダで直す」

とイージスさんは言うと私にパソコンを渡し、部屋に戻っていった。


「これってもらって良いんですか?」


「あぁ、必要だからな。それとデバイスを出せ」

と國生さんが言う。


私はデバイスを起動し、ホログラムの画面を表示させた。するとその画面を國生さんは操作し、一つのアプリをダウンロードし、インストールさせた。


「インストール出来たら開け。IDとパスワードを入れる画面が出てくるからこれを入れろ」


アプリがインストールされたので開き、IDとパスワードを入れるとログインが出来た。


「そのアプリはうちの事務所のものだ。うちの奴らの予定が1ヶ月分、いつでも見られるようになっている。試しに2月のボタンをタップしてみろ」

と言われたのでタップしてみると、カレンダーが表示され、さらに1日分の枠に色々な色のマーカーがついていた。


「研修中は俺の手伝いをするだけだ。予定を聞くことがあるからそのデバイスは忘れんなよ」


「はい!分かりました」


「じゃあ早速依頼主のところに行くぞ」

と國生さんはどこかに電話をかけ始めた。


「…今どこにいる。……わかった」

ピッ!


「外に行くぞ」


====


探偵事務所の外に出ると一台の軽自動車が止まっていた。


國生さんがドアを開けて助手席に乗るので、私は後ろのドアを開けて中に入った。

中には燕尾えんび服を着た白髪の男性が運転席に座っていた。


「行き先は分かっているな?」


「確認いたしましたので大丈夫でございます」

と運転席の男性が言うと、車は動き出した。


「後ろのお嬢様、わたくしはアリエテと申します。車など陸上を進む車両が好きでして運転手をやらせてもらっております」


「あ、はい。私は吉崎陽秋です。よろしくお願いします」


「吉崎様ですね。覚えさせていただきました」

なんかかしこまり過ぎなような…


「気にするな。びっくりするだろうが、これがこいつの素だ。電話すればいつでも来てくれる。…だろう?」


「はい。車を利用したい場合はわたくしに現在位置と行き先を連絡していただければ」

とアリエテさんが言う。連絡ってどうすれば?と首をかしげると


「さっきのアプリから連絡は出来る。メンバーのボタンを押せば、アプリを入れているすべての人が出てくる。そこの名前を押せば連絡出来るはずだ」

と國生さんから言われたのでアプリを開いて言われた通りにやってみる。するとメンバー一覧には凄い数の名前があり、アリエテさんの名前もあった。


アプリの設定をしていると


「目的地に着きました。待っていましょうか?」

とアリエテさんが言った。


「いや、いいや。いつまでかかるか分からんからな。必要なら呼ぶ」

と國生さんは言い、降りていった。それに続いて私も車を降りた。

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2024年12月1日 19:00
2024年12月3日 19:00
2024年12月5日 19:00

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