第25話 第一章 第七節:戦国の闇
時代は戦国――天下が乱れ、武士たちが己の野望を胸に戦い続けていた時代。
戦乱の混乱の中、人間同士の争いに隠れるように妖怪たちが力を蓄え、暗躍を始めていた。怨霊や妖怪の存在が利用され、戦場で恐怖と混乱を拡散する「兵器」として扱われることも少なくなかった。
冥府機関は、そんな混沌の中でも密かに活動を続けていた。彼らの目的は、人間社会と妖怪の世界との均衡を保つこと。しかし、時代の変化により組織の理念は揺らぎつつあった。特に、黒羽根の女の影響が再び強まる中、組織は存亡の危機に直面していた。
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この時代、冥府機関を率いていたのは「
修吾は戦乱の世で冥府機関の存在意義を問われながら、影喰いを再び使うべきかどうか葛藤していた。
「影喰いの力を解放すれば、黒羽根の女に対抗できるかもしれない。しかし、その代償が我々自身を滅ぼす可能性もある」
彼は幹部たちを前にそう語り、影喰いの使用に慎重な態度を示していた。
幹部の中には、影喰いの使用を求める声も多かった。
「戦国の世で、妖怪は武士たちに利用され、戦乱をさらに深刻にしている。我々が影喰いを封じている間に、被害は広がり続けているのです」
「この状況を打破するためには、影喰いを再び手にするしかありません」
修吾はその声に耳を傾けつつも、決断を保留し続けていた。彼には、影喰いを解放することで招く災厄を恐れる理由があった。それは、彼自身が過去に影喰いを用いて仲間を失った経験によるものだった。
そんな中、黒羽根の女が再び動き出したとの報告が冥府機関に入る。彼女は戦国大名たちの欲望を利用し、妖怪の力を貸し与える代わりに混乱を拡大させていた。彼女の目的はただ一つ――冥府機関の崩壊と、世界を混沌に戻すこと。
「黒羽根の女は、この戦乱の世を完全に飲み込むつもりだ。我々が動かねば、すべてが終わる」
修吾はついに影喰いを手にする覚悟を決める。
運命の戦い:影喰いの再解放
修吾が率いる冥府機関の部隊は、黒羽根の女の策略により妖怪の力を得た戦国大名「
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冥府機関の部隊が城へ潜入すると、そこは既に人間の住む場所ではなくなっていた。
廊下には妖怪が跋扈し、壁や床は闇のような妖気に覆われている。中には、かつての人間の形を失い、妖怪と化した者たちの姿もあった。
「ここまで妖怪に支配されているとは……」
修吾は影喰いを鞘から抜き、周囲を警戒しながら進んでいく。刀から放たれる黒い光が、妖怪たちの妖気を一瞬だけ切り裂き、通り道を作る。
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城の奥深く、冥府機関はついに松永景泰と対峙する。松永は既に人間としての意識を失い、黒羽根の女の手先として完全に操られていた。
「これが……黒羽根の女の力か」
修吾が松永を睨みつける。松永の背後には、黒羽根の女の幻影が浮かび上がり、不気味な笑みを浮かべていた。
「お前たちがどれほど抗おうと、すべては無駄だ。影喰いなど、ただの過去の遺物に過ぎぬ」
幻影の声が響き渡ると同時に、松永が妖怪化した部下たちを従えて襲いかかってきた。
修吾は影喰いを振るい、次々と妖怪を切り伏せていく。刀から放たれる黒い閃光が妖怪を消滅させるたび、城内の妖気が少しずつ弱まっていった。しかし、影喰いを使うたびに修吾の体力が奪われていく。
「これ以上は……持たないかもしれん」
修吾が息を整えながら呟いたその時、松永の体が膨れ上がり、巨大な妖怪と化していく。黒羽根の女の幻影がその姿を覆うように広がり、闇が城内全体を包み込んだ。
「これが……黒羽根の女の本気か!」
修吾は力を振り絞り、影喰いを松永の核へ向けて振り下ろした。刀が核を貫いた瞬間、黒羽根の女の幻影が揺らぎ、松永の体が崩れ落ちていく。
戦いが終わった後、修吾は影喰いを鞘に収め、静かに目を閉じた。刀を使い続けた代償で、彼の体には深刻な負担がかかっていた。
「これが……影喰いの代償か」
彼はその場に膝をつきながら呟いた。幹部たちは修吾を支えながら、撤退の準備を始めた。
この戦いを経て、冥府機関は再び影喰いを封印することを決定する。修吾はリーダーの座を降り、次の世代に組織を託した。
「影喰いは使い手を選ぶ。次にこれを振るう者は、そのすべてを背負う覚悟を持たねばならない」
黒羽根の女の脅威は完全に消えていない。しかし、冥府機関は戦国の混乱を乗り越え、再び均衡を取り戻すべく歩み続けるのだった。
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