第8話 「母なる浄化の力、影を断つ刃」

  本庄麗奈は、特務機関で穏やかな癒しの力を持つ存在である。


彼女の落ち着いた立ち振る舞いと柔らかな表情は、戦場という荒んだ場にさえ温かな空気をもたらす。仲間たちが疲れ切ったときや心を削られるような戦いに挑むとき、麗奈の存在がそっと支えとなり、彼らの心に再び強さを取り戻させている。彼女の持つ武器は、浄化の力が宿る「笏しゃく」と「数珠」。これらは彼女の精神を高めるものであり、妖気を払うと同時に、仲間を温かく包み込むように守ってくれる。




麗奈の過去は、深く根付いた思いやりと霊的な力が形作ってきた。


若い頃から霊的な浄化に対する知識を学び、修行を積む中で、彼女は常に他者に対する配慮と共に生きてきた。幼い頃から穏やかで落ち着いた性格で、周囲の人々を自然に気遣うことができた麗奈は、いつしかその温かい性格を周囲に「母親のような存在」と呼ばれるまでに成長させていた。




彼女の「笏」と「数珠」は、師匠から受け継がれたものであり、ただの道具ではなく、彼女の心の一部と言っても過言ではない。麗奈は毎朝、この道具に向き合い、霊的な力を注ぎ込む儀式を欠かさない。それは彼女にとって、心の静寂を保ち、己を清める重要な習慣だった。特務機関の中で忙しい日々を過ごしているが、この習慣だけは一度も欠かしたことがない。麗奈にとって、笏と数珠は「過去の師匠とのつながり」と「己の信念」を象徴する存在でもあった。




戦場において、麗奈は常に冷静さを保ち、仲間の動きを見守る。


彼女の穏やかな表情の奥には、冷静な観察眼が隠されており、仲間が危険に晒される前にそれを察知する能力に長けている。仲間が傷つき妖気に囚われそうになったときには、迷わず笏を掲げ、数珠を手に持ち、祈りを捧げながら浄化の力を発揮する。その力は、仲間たちの心と身体を守るだけでなく、戦場の空気さえも清め、妖気の侵食を防いでいる。




**麗奈の戦闘中の振る舞いはあくまで「支え役」**に徹しているが、状況が逼迫したときには厳しい表情で指示を飛ばす一面も見せる。そんな時でも麗奈の言葉には温かさがあり、彼女が発する言葉一つで仲間たちは気を引き締め、共に前進する力を得ている。




ある戦いの後、傷ついた仲間が休息している中、麗奈は静かに近づき、言葉をかけることなく彼らのそばに寄り添った。その姿はまるで、子供を見守る母親のようであり、彼女の温かな存在が仲間たちに安心感を与えていた。麗奈にとって、戦いの中で仲間を守ることが何よりも大切な使命であり、その信念は彼女の中で揺らぐことなく息づいているのだ。


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灰島凛は、特務機関のリーダーとして仲間を指揮し、近接戦闘で妖怪を討つ冷徹な剣士である。


その表情にほとんど無駄がなく、任務中も私生活でも冷静沈着で、淡々と行動する様は仲間たちからも一目置かれている。凛が手にする日本刀「影喰い」は、特殊な妖気を吸収し、相手の生命力を断つことに特化した刀だ。その名の通り、影を喰らうようにして妖怪の力を封じ、斬り捨てる。彼の身のこなしは軽やかで、無駄のない一撃で相手を仕留めるその戦闘スタイルには、凛が背負う過去と、特務機関に身を置く理由が滲んでいる。




凛は幼い頃、妖怪に家族を奪われた経験を持つ。


ある夜、家族が突然姿を消し、家の周囲には不気味な足跡だけが残されていた。その出来事の後、村の人々は「妖怪の仕業」と囁いたが、凛にはただ家族を失ったという事実だけが残された。幼いながらも、家族を守れなかったこと、家族の運命に立ち会えなかったことに対する後悔と無力感が、彼の心に深い影を落とした。その影は今も、彼が「影喰い」を振るう時、心の奥底に沈んでいる。




成長するにつれ、凛は妖怪に対して複雑な感情を抱くようになった。


妖怪は人に害を及ぼす存在でありながら、その存在そのものに哀しみを感じることもあった。妖怪たちがなぜ人を襲うのか、なぜ人の世界に現れるのかを知りたいという好奇心が湧く一方で、家族を奪われた彼には決して許せない存在でもあった。彼は妖怪の研究を続け、自らの手で妖怪を討つことを使命とし、やがて特務機関に加わることになった。




影喰いとの出会いは、凛にとって運命的なものだった。


その刀は古い神社に保管されていたが、妖気を吸収する力を持ち、人の魂をも傷つける恐ろしい力が込められていた。凛が影喰いを初めて手に取った時、その刀は彼の過去の憎しみや悲しみを感じ取り、まるで彼と共鳴するかのように妖気を発した。その瞬間、凛は影喰いを自分の武器にすることを決めた。影喰いを振るう度に、彼はかつての家族のことを思い出し、その無念さを断ち切るかのように一撃を放つ。




リーダーとしての凛は、常に冷静で計算高い。


任務中に感情を見せることはほとんどなく、仲間に対しても距離を置いて接している。彼は仲間たちを信頼しているが、それは個人の感情ではなく、任務遂行のための合理的な判断であると捉えている。そのため、仲間たちと親密な関係を築くことには消極的で、常に自分を独立した存在として捉えている部分がある。しかし、仲間の誰かが危険に晒されると、迷いなく影喰いを振るい、その鋭い剣先で敵を斬り捨てる姿は、彼が心の底で仲間を大切に思っている証でもある。




特務機関の中でも特に凛を理解しているのは、長年の付き合いのある斎藤義明だ。


義明は凛の冷静さや判断力を信頼しており、凛もまた彼の経験と実力を尊敬している。凛は義明にのみ、自分の過去を少しだけ打ち明けたことがあるが、それも自分の家族を失った夜の出来事を簡潔に語るに留まった。義明は何も言わず、ただ凛の話を聞き、それ以降、彼に対してより深い敬意を抱くようになった。




妖怪に対する複雑な感情を抱える凛は、任務を通して自分の過去と向き合い続けている。


彼は妖怪を倒す度に、その存在に哀れみを感じることもあるが、同時に人間を襲う妖怪には容赦をしない冷酷さも持ち合わせている。その冷静な判断と鋭い剣捌きにより、特務機関の仲間たちは凛を頼りにしているが、彼が背負う過去や心の葛藤を知る者は少ない。




「影喰い」を握りしめる度に、凛はかつての記憶が蘇ることを感じながらも、その刃に全ての力を込め、目の前の敵を討ち続ける。彼にとって「影喰い」との共鳴は、自らの過去を乗り越えるための戦いでもあり、また、今生きている仲間たちを守るための誓いでもあった。

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