第16話 多分高難易度ステージだこれ!

 村の男達が出払っていた理由。

 それは村の配電盤に発生した不具合を修理するためだそう。

 

 適当な女性数名を引っ掛けた花威かいが戻ってくるなり教えてくれた。

 

(そういえば電気的な面で困った事無いかも)

 

 当たり前のように電力を使って生活していたので、違和感を持っていなかった。

 インフラが整っているような世界観には思えないが……。


(あとで聞いてみるか)


 希洋きひろ琉海るか優瓜ゆうり、それぞれが思い思いの場所で花威の話を聞いている。

 正確には、優瓜は聞いているようで全然違う作業をしているが……。

 

「何が起きるか分からないから村の男が可能な限り集まって向かったんだってさ」

「みんなで行く意味ってあるの?」

 

 魚神に対抗できるのは救世主だけだと言うし、仮に何人が束になっても犠牲者が増えるだけだと思うのだが……。

 

「数が多かったら逃げた人が助けを呼びに来れる確率が上がるからね」

「なるほど……?」

 

 分かったような、分からないような。

 

 花威かい琉海るかが話していると、外が騒がしくなった。

 

「大変だ! 配電盤の方に魚神が棲みついてやがる!」

 

 そんな声が聞こえた。

 

 ――――――

 

 四人が声のした方へ向かうと、そこには戻ってきたのであろう男性陣の姿。

 

「気付かれる前に戻ってきたから何とかなったけどよぉ……」

「いつこの村を襲うか分かったもんじゃない」

「と言うか、このままだと電気が使えねぇよ」

 

 思い思いに喋る男達。

 

 つまりまとめると、村の配電盤付近が魚神の棲家になってしまったので、退治してほしい。

 そういう事だ。

 

「任せてください」

 

 ニコニコと頷く希洋きひろ

 琉海るかも不満は無い。

 

「配電盤の修理もついでに行ってしまおうか。私は専門家というわけではないが、多少の心得なら有る」

 

 という事で、四人揃って村人に言われた配電盤のある場所へと向かった。

 

 ――この世界における電気は、基地ベースで作られ、村や町へと届けられるものらしい。

 

 魚神を利用した独自の発電方法が有るらしく、配電も琉海るかの知るそれとは大きく異なっていた。

 

「なんか……なんだ? これ何?」

「配電盤だな」

「どう見ても機械が生えてる洞窟なんだけど」

 

 サイバーパンクなダンジョン。と言った方がしっくり来るような場所に連れてこられた琉海るか

 

 洞窟の壁に電線などが剥き出しに張りめぐされた場所。

 断線しているからなのか、元々そうなのか、紫の電流が時々パチパチと放たれる。

 

 電流によって魚神ぎょじんの姿が時々見える。

 川魚のような細長い魚がひょろ長い手足が有り、電飾のようなものが背びれに見える。

 

「マジのダンジョンっぽい」

 

 ゲームではお約束のフィールド。

 少しワクワクしてしまう。

 

「うーん……これ、中で戦うの難しいよね」

「電流が厄介だな」

 

 ワクワクしてしまった琉海を横目に、希洋きひろ花威かいが真剣な顔で話している。

 

(気を引き締めないと)

 

「ふむ。この魚神は見覚えが有るな。ドウクツギョ科の魚神だ。目を持っていないから村人に気付かなかったのだろうね」

 

 専門家である優瓜がここぞとばかりに、どこか嬉しそうに語り出した。

 

「なるほどね。対処法は?」

「基本的にこの種の魚神は洞窟の外に出る事が無い。つまり我々は洞窟内で戦う必要がある……のだが、見たまえ」

 

 優瓜が洞窟の入口を指す。

 洞窟の床は水浸し。くるぶしくらいまでの水位が有る。

 

「見た所しっかりと漏電しているようだし、無策で洞窟内に入れば死ぬ事になる。

 この魚神は棲家に入り込んだ者以外襲わないからな。放置したい所だが……」


「そうすると村の人が困るってわけね」

「うむ」

 

 花威の言葉に優瓜は大きく頷く。

 

「だが、我々では装備不足かつ実力不足。人手も足りん」

「戻って増援呼ぶ?」

「そうするべきか……いや、多少無茶をすれば……」

 

 希洋の提案に優瓜は考え込んでしまった。

 

「どうする? 指揮官様」

「えっ」

 

 俺が決めるの? と言いそうになるが、一応、名前だけだとしても琉海はなのだ。

 考えなければ。

 

(ゲーム的に考えるなら、多分ここは持続ダメージが有るタイプのマップだよね)

 

 回復キャラが重宝されるタイプのステージ。

 右も左も分からない序盤のうちからやるようなものではない。

 

 ゲームであればスルーしてレベリングをしつつキャラとアイテムを集めて……とする場面なのだろうが、そういうわけにはいかない。

 

 村人の生活がかかっているのだから。

 

「増援を――」

 

 呼ぼう。

 言いかけた所で、洞窟の入口の辺りに有った岩石が突然砕けて地面へ落下した。

 

 その音に魚神が気付いたようで、ひょろ長い手足を使ってこちらに向かってくる。

 ものすごい速度。

 あっと思う暇無く、琉海るかが洞窟へ引きずり込まれた。

 

「っ――!」

 

 全身に電流が走る。

 比喩ではなく、実際に。

 

 幸い即死するような威力はなかったようだが、全身が痺れる。

 

(痛ってぇ! ってか、動けないっ)

 

 命の危機を体が訴えているような感覚がする。

 が、動くことができない。

 

『仕方ない。戦闘開始だ』

 

 優瓜の声と共に、宝石が光ってウインドウが表示された――

 

 

 

  ――――check point――――――


 魚神ぎょじん


 魚神とはその名の通り魚の神である。

 基本的には海からやって来るが、時折自然発生する個体も居る。


原理などは一切不明である。


 ――――――――――――NEXT――

 

 

 ―――あとがき――――――――――


 ここまで読んでいただきありがとうございます。

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 次回:救世主効果

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