第24話 霊術について②
「なら俺は体や剣の強化はできないんですか? 師匠はされていたと思うんですが?」
「良い目の付け所だな。結論から言うと、できる。獣人種は現主と強主を併用している者が殆どだ。顕現させた部位に霊気を纏わせて戦うのが、現主の主な戦い方になる。どの種類も学ぶことはできる。向き不向きはあるがな。だが、獣人種は基本的に強主としての霊気操作が下手だ。獣化による身体強化が高いせいかそれに頼り切りになる者が多い。だが、この島で生き残るなら霊気操作のレベルを上げることは必須だ。特主だけは訓練してもどうしようもないが、残りの五種類は全て訓練可能だ」
「なるほど」
「まずは現主を鍛えることになる。どこまで獣化できる? 尻尾だけなのか。手や皮膚はできるか?」
「尻尾だけです。他の部位にもできるなんて考えたこともありませんでした」
自分の種族も俺は知らない。
尻尾以外もできるのだろうか?
「種族は親から聞いているか?」
「それは……俺の親は森人族と人間族のはずなんです。だから……この尻尾もおかしい……はずなんですけど」
俺は口ごもる。
最近は考えることも減ったが、俺は獣人種じゃないはずなのだ。
だけど、尻尾が獣人種であることを証明している。
「あれだけはっきりと尻尾を出していたんだ。獣人種の血は必ず少しは引いているはずだろう」
「師匠の言うとおりです。俺を育てていたのは……本当の親だったのかも、もう分からないんです。俺が何者なのかも……俺は知らないんです」
「そうか。酷なことを聞いたな。許せ」
「いえ、必要なことですので」
「種族にもよるがこの島で生き残ろうと思ったら、尻尾の獣化だけでは厳しい。最低でも皮膚を鱗で覆わなければな」
「そうですよね」
それは分かっていた。
この尻尾だけで風龍と渡り合うなんてとてもじゃないけど無理だ。
「現主の練度はもちろん大事だが、まず大前提として霊気の量が不可欠だ。霊気量の増やし方は分かるか?」
「霊胞を食べる、ことですか?」
「まあ、正解だ。生物は皆、霊胞に霊気を貯めている。それを食べることによって私達はより霊気を増やすことができる」
「同じ霊獣の霊胞を食べていると少しずつ増加が悪くなった気がしたんですが、なぜでしょうか?」
「霊気に関して全て分かっている訳ではないが、同じ霊胞では基本的に増加率は下がると言われている。自分が成長しているから、格下の霊胞だと効果が薄いんだ。格上の霊胞を食べると大きく成長する」
やっぱり強い者の霊胞じゃないと伸びが悪いのか。
強くなるには、常に上の霊獣を狙わないといけない。
「死体から霊胞だけ奪っても成長できるんでしょうか?」
ずるい方法だが、これができるのなら霊気を手っ取り早く増やせるはずだ。
「俗にいう死体漁りだな。答えはイエスでもあり、ノーでもある。まず霊胞は自分より格上すぎる霊獣を食べても体が拒否反応を起こす。体がその霊気に耐えられないからな。他人が獲って来た霊胞を食べて成長しようとする貴族も居るが……それは長期的にみると悪手だ。なぜなら自らの霊気の成長限界は様々な要素を複合で決まると言われている。自らは戦わずに霊胞だけ貰っていたものは例外なくすぐに成長が止まった。肉体と精神が、霊気の器として適していないからだろう」
ミラさんはそれを本能的に理解していたんのだろうか?
「そううまくはいかないんですね」
「最短距離で強くなりたいのは分かる。だが、近道などない。少しずつ強くなるしかないんだよ、リオル。簡単な座学はこれで終わり。これからは騎士団流の修行をしてやろう」
「はい、お願いします!」
「こっちへ来い」
俺は師匠について行く。
何をするんだろうか?
やはり霊獣との戦うんだろうか?
師匠に森を進むことしばらく。
「よし、ちょうどいいのがあったな」
師匠がそう言って止まった先には、大木があった。
木のてっぺんが見えないくらいの大木で、その太さは五ユードをはるかに超えている。
「この木を一週間以内に斬り倒せ。これが第一修行だ。ただし、道具や尻尾を使うことは禁止する。もし無理だった場合は、私はお前の師を降りる。無能に時間を割く余裕はないからな」
師匠はその大木に触れながらそう言った。
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